- アドラーの影響
- 優越の追求
- 劣等コンプレックス/優越コンプレックス
- 自尊心
- 自己防衛
- 不完全である勇気
- ライフスタイル
- 所属
- 感情の正体
- 共同体感覚
- アドラー心理学の全体像
アドラーの影響
原因論 | 過去に原因があって、そのために現在の結果が引き起こされている。 |
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目的論 |
自分がいましている行動の原因はたくさんありすぎて、ひとつに特定することができない 私たちの行動は「自分が何を目的としているのか」によって決めている。 それ以外のさまざまな条件は、制約として働いているだけ。 |
心理学の 3つの勢力 |
精神分析学 |
無意識のエネルギーに支配される。 患者の心のなかに抑圧され、ためこまれた思いや感情を放出し、浄化(カタルシス)する。 |
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行動主義心理学 |
報酬や罰にコントロールされる。 患者の「言葉」ではなく「行動」に着目。 「ある行動をした結果、環境がどう変化したかによって、その後の行動頻度が変わる」(オペラント条件づけ) |
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人間性心理学 |
人間の主体性と創造性を強調。 人間中心の心理学。 |
アドラー の影響 |
発達心理学 |
優越の追求(Striving for Superiority) 劣等感(Inferiority Feelings) 補償(Compensation) |
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パーソナリティ心理学 |
ライフスタイル(Lifestyle) |
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社会心理学 | 対人関係の重視 | |
臨床心理学 |
統覚スキーマ(Schema of Apperception) その人の自己と世界についての信念が、その人の行動を決める。 |
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教育心理学 | 競争ではなく協力 |
優越の追求(Striving for Superiority)
- より優れた自分を目指して努力し、困難を乗り越え、日々成長する。
- 現在の自分「自己概念(Self-Concept)」から理想の自分「自己理想(Self-Ideal)」を目指す。
- 永遠に実現することはない。
- 理想の自分から比べれば、いまの自分はたしかに劣っている。そのときに感じる感覚が「劣等感(Inferiority Feelings)」。
劣等感(Inferiority Feelings)
- 理想の自分から比べれば、いまの自分はたしかに劣っている。そのときに感じる感覚。
- 自己理想に対する劣等感は、初めから解消される見込みはない。だから、安心して劣等感を味わうことができる。
劣等コンプレックス(Inferiority Complex)
優越コンプレックス(Superiority Complex)
優越コンプレックス(Superiority Complex)
- 「自己理想に対する劣等感」ではなく「他者に対する劣等感」を持つと、コンプレックスが生まれる。
劣等コンプレックス | 「私は他人よりも劣っている」と言い続けることによって、自分の課題を回避する。 |
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優越コンプレックス |
見かけだけでも「自分の優越」をつくり出す。 「他人より優れている」ということを、言葉や態度で示さなければならない。 「他人より劣っている」ということが明らかになることを恐れている。 努力するのではなく、「他人より優れている」と言い続けることによって、自分の課題を回避する。 |
- 「自分の課題を回避する」← 「自分が失敗する」ことを明らかにしたくないから。
- 劣等・優越コンプレックスを使って自分の課題を回避すること → 自己欺瞞、人生の嘘
自尊心(Self-esteem)
- 自尊心とは、自分自身についての評価、自分自身に対する態度。
- 劣等・優越コンプレックスを使って課題から逃げないためには、自尊心が重要。
自尊心の 獲得方法 |
他者との比較 |
随伴的な自尊心 外的な基準に沿う自尊心 |
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他者からの評価 | ||
自分らしくある | 本来の自尊心 |
自己防衛(Safeguarding)
- 自尊心を守るために、不安になったり、躊躇したり、引きこもったりして、行動や挑戦を避ける。 ← 自己防衛
- 「これさえなければ、私は成功したのに」「これさえあれば、勝負に勝ったのに」
不完全である勇気(Courage to be Imperfect)
- 「自分は自分らしくやっている」という「本来の自尊心」を高めるためには、「自己概念」から「自己理想」への道のりを意識することが条件。
- 自分を他人と比べない。
- 自分の注意を自己理想に向けて集中し、行動する。
- 「自分はまだまだ未熟だ。どもそこそこ良くやっている」という感覚を受け入れる。(不完全である勇気)
- 劣等感とじっくり向き合い、それをきっかけにして努力しようと考えることが「不完全である勇気」。
- 失敗する可能性があってもまず行動する。たくさんの失敗から成長していく。
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完璧主義(Perfectionism):
- 不完全な自分を受け入れられない人たち。
- 他人のミスにも不寛容。
ライフスタイル(Lifestyle)
- どんな人でも自己理想を究極のゴールとして、そのイメージに少しでも近づくことができるように毎日の行動を決めている。 このような個人に特有な行動パターンを「ライフスタイル」という。
- ライフスタイルは4〜10歳くらいで固まる。
- 無意識のうちに自分のライフスタイルを選んでいる。意識することができない。
ライフスタイルは 3つのかたちによって 表現され、行動に影響する。 |
追求する自己理想 | |||
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対人関係のつくり方
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自己、他者、世界についてのスキーマ(考え方) |
- 最優先目標による
ライフスタイルの4分類
タイプ | 避けたいこと | 回避する方法 | 強いところ | 弱いところ | まわりからこのように 見られている |
まわりからこんな 不満を持たれている |
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安楽でいたいタイプ | 身体的・感情的な痛みやストレスを受けること | 特別な扱いを求める | 気楽なところ | 才能を伸ばそうとしないこと | イライラする | 生産性が低い |
コントロールしたいタイプ | 屈辱を受けること | 自分をコントロールする | リーダーシップがとれる | 頑ななところ | 反抗したい | 友だちや緊密な人間関係がない |
喜ばせたいタイプ | 拒否されること | 他人を喜ばせる | 人なつっこい | 相手がどうされたら喜ぶかをチェックしない | 最初は楽しいが、その後、同意を求められたり、返礼を求められたりする | 自分と他人に対する尊敬がない |
優越でありたいタイプ | 無意味なこと | 他人よりも優れようとする | 知識がある | ワーカホリック | 自分が無能だと感じさせられる | 圧倒される |
- 生きるということは、人生の挑戦をライフスタイルでかいけつしていく、ということ。
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仕事をしているときだけライフスタイルを変える。
- 仕事をしているときは、ペルソナ(persona, 仮面)をかぶって演技する。
- 自分のライフスタイルが何であれ、自分の職務で要求されるようなパーソナリティを演じるできる人をプロフェッショナルと呼ぶ。
所属(Belongingness)
- 自分が共同体にうまく所属するためには、 どのように振る舞っていけばいいのだろうかということを考えながら、 自分のライフスタイルを形づくっていく。
- 所属できる共同体がせいぜい2〜3個あれば安心して生きていける。
- ある共同体で誰かを排除しようとしたり、いじめたりする人は、自分の所属を守ろうとしている。
所属に関する欲求 | 称賛獲得欲求 | 他者から称賛されたい欲求 |
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拒否回避欲求 | 他者から拒否されたくない欲求 |
誤ったゴール (Mistaken Goals) |
注目を得ようとする |
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権力争いをする(Power) | |
復讐する(Revenge) | |
無能であることを示す(Display of Inadequeacy) |
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協力(Cooperation)
- 自分の強みを共同体のなかに位置づける。
- ある側面だけの技能の差を誰かと比較しないこと。
- 相手のなかに、自分にない強いところを見つける。
- 自分のなかにも、相手にない強いところを見つける。
- 相手の強いところと、自分の強いところを組み合わせるとどうなるかをイメージする。
タテの動き (Vertial Movement) |
「私はどんなふうに行動しようか。それは他の人にどのように見えるだろうか」ということを考えて行動する。 自分と相手を同じ土俵で比べる。 → 競争へ |
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ヨコの動き (Horizontal Movement) |
「この状況のなかで、私は何をしたらいいのだろうか」と考えて行動する。 自分にないものを相手が持っているかどうか。 → 協力へ |
感情の正体
自分自身を受け入れること (自己受容) |
優越を追求しながらも不完全である自分を受け入れる勇気が必要 |
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自分が生きてきた道を再発見すること (ライフスタイル) |
人はそれぞれ独自のライフスタイルを持っていること |
自分の居場所を見つけること (所属) |
お互いの強みを結びつけることによって、それぞれの居場所をつくることができること |
感情
↓
対人関係
-
「自分は感情に支配されている」
↓
「個人がある目的のために感情を作り出し、それを使う」
- 私たちはみんなフィクションとして「個人的な枠組み」を持っていて、それによってまわりの人や世界を判断している。(仮想論)
-
仮想的目標(Fictional Goal)
- 「相手にはこうしてほしい」「こうするべきだ」
- あなた独自の指摘感覚から生み出されている。
- 仮想的目標を達成するための対処行動 = 感情
- 感情には明確な目標と方向性がある。
- マイナスの感情は、自分が行動するきっかけとして自分自身がつくり出しているもの。
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自分の私的感覚を意識し、その都度、自分の仮想的目標を再検討していかなければ、
私的感覚から出てくる多くの仮想的目標はそのたびに裏切られることになる。
そして、そのたびにマイナスの感情を使わなくてはならない。
-
イライラ感情への対処法
- 「これは自分の望みや願いという仮想的目標が裏切られたことの合図だ!」と思う。
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以下のことを考えるきっかけとする。それを考えているうちに、イライラは去り、解決策を見つける方向に動き出している。
- 「何がこのままではいけないのだろうか」
- 「何が私の期待(仮想的目標)を裏切っているのだろうか」
- 「良い方向に向かうためには、現状を変えるのがいいのだろうか、それとも自分の期待を変えるほうがいいのだろうか」
共同体感覚
- 人間が社会という文脈に埋め込まれていることを意識して、共同体に貢献し協力できるとき、自我を超越する。
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仲間と対等な協力関係をつくることができない人は、社会的な病気(社会病質者 Sociopath)。
課題がクリアできていない。自己受容の課題 「私は自分自身に不満足だ。そうであれば、相手を引きずり下ろすことにしよう。そうすれば、自分自身が不十分であることを忘れることができる。」 所属の課題 「私はここに居場所がない。そうであれば、相手をここから追い出してやろう。そうすれば、自分の居場所がないことを忘れることができる。」 信頼の課題 私はまわりの人を信頼することができない。そうであれば、相手は私の敵だ。相手の邪魔をしなければ、私が負けて追い出されてしまう。
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勇気をくじかれた人
- 劣等感を飛び越えて優越の追求をする。
- 「人生の無益な面」での「優越の追求」とは、「他の人たちに勝とうとする」こと。
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勇気づけ
- 人生の有益な面で生きていく決心ができるようにすること。
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自分のできている部分に注目する。
- 私たちはもともと、自分ができていないところに注目するようにつくられている。
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他の人と比べない。
- 他の人に勝とうが負けようが、私の人生には関係ないこと。
- 共同体にとってもどうでもいいこと。
- 勝ち負けの土俵から降りる勇気。
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まわりの人たちはすべて善意でやっていると信じる。
- 私たちはもともと、まわりの人たちを疑うようにできている。
- 自分が不完全であることを認め、まわりの人と協力することができれば、劣等感は共同体に役立つための努力へのエネルギーに変わる。
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「自己受容 → 所属 → 信頼 → 貢献」のサイクル
自己受容 不完全である勇気を持つこと。 所属 不完全である勇気を持ちつつ、自分の強みを見つけること。 信頼 自分のマイナス感情が起こる仕組みを知り、相手の私的感覚を尊重しつつ、お互いの共通感覚を見出していくこと。 貢献 自分自身を勇気づけて、人生の有益な面での行動をつく重ねていくこと。
アドラー心理学の全体像
重要な概念3つ | 努力と成長のバネとして「劣等感」を使うこと |
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自分が生きる方向性として「ライフサイクル」を持つこと | |
幸せに生きるために「共同体感覚」を育てること |