- 第1章 なぜプロジェクトは失敗するか
- 第2章 プロジェクトの道具箱
- 第3章 プロジェクト工学
- 第4章 プロジェクト譜~プ譜を使ってみる~
- 第5章 プロジェクト・エディティングの技術
- 第6章 プロジェクトの感想戦
第1章 なぜプロジェクトは失敗するか
1-1 そもそもプロジェクトとは何か
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プロジェクトの3要素
- 「未知」を「既知」に変換していく行為。
- ノウハウや知識の不足。
- 有限なお金と時間。
1-2 プロジェクトの種類
1-3 想定外は当たり前
- 計画とは、あくまで現状認識を揃える地図のようなもの、「方便」なのであり、 ただひとつ確かなことは、プロジェクトにおいて、当初立てた計画に固執することは、 最も愚かなことだ、ということ。
1-4 コミュニケーションロス: 要望、要求、要件、仕様、設計
- 要望・要求・要件・仕様・設計 ←これら別々の階層に属する話がごちゃまぜになってしまう。これらを整理するのが重要。
要望 | プロジェクトを開始する根本となる動機 |
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要求 | 要望をもとにして、正式に依頼する側とされる側の間で明示される情報 |
要件 | 要求をかなえるために、製造・実現する内容を明確にすること |
仕様 | 製造するものに要求する形状・構造・寸法・精度・性能・試験方法等の規定 |
設計 | 仕上がりの形や構造を図面などによって具体的に表現すること |
1-5 まとめ
第2章 プロジェクトの道具箱
2-1 道具は適したものを使おう
2-2 PMBOK——プロジェクト推進の王道
- PMBOKなどプロジェクト管理方法は、プロジェクトに関係する人同士の認識合わせのためのものであり、 トラブルを未然に防ぐため、または発生したときに説明責任を果たすためのもの。
- PMBOKは重厚長大型の方法論。学ぶコストも、運用するコストも高い。
- プロジェクトの困難さとは、状況に合わせた道具の選び方の難しさ。
2-3 定例会議——プロジェクトにおけるPDCAサイクル
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プロジェクト定例会議の目的を考えると、アジェンダは基本的に次のような形式しかありえない。
- 現在守ろうとしている計画はどれかとういことの確認
- それに対する現状認識(=ギャップや課題)が何であるかの共有
- 課題への対処方法のすり合わせ
- 定例会のその場ではなく、会議を開催する前に、課題を洗い出し、解決策を講じ、解決のシナリオを立てることが肝心。
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【やってはいけないこと】課題がなにかも整理されておらず、解決策も解決のシナリオも見えていない現実をプロジェクトメンバーに見せてしまうこと。
→ 作るべきものや実施するべき作業の内実ではなく、プロジェクトの進め方が議論の対象となり、当事者がやり玉に挙げられ、どうしたらプロジェクトがスムーズに進むかに論点がズレてしまう。
2-4 フィット&ギャップ分析
2-5 ウォーターフォールか、アジャイルか、はたまたリーンアップか
2-6 まとめ
- 「やりたいこと」と「手段」に、しばしば食い違いが発生しえいまう。「道具は適したものを使おう」
- 「合理的でない判断で、リソースを無駄にするな」。感情は時が経てば回復するが、失われた資金や時間、物資は帰ってこない。
- 「着眼大局、着手小局」
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優秀なプロジェクトマネージャは、プロジェクトを進めるための勘所をおさえていて、的確な「読み」を駆使して、物事を前進させていく。
これを可能にする思考の働きは3つ状況の評価 次のアクションの選択 リソース配分 - 超多変数関数であるプロジェクト。あらゆることを読んでいけるものではない。大局観を駆使することが重要。
第3章 プロジェクト工学
3-1 プロジェクト工学概説
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Q. そもそもうまくいかないようにできているプロジェクトが、一体どのようにしたら前に進むようになるのか?
- A. 「獲得目標」「勝利条件」を状況に応じて設定し更新する。
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「プロジェクト = 未知との戦い」における最大の難点
- 「その仕事をやったことがない」ということ。
- 事前に的確な勝利条件を定めることができない、ということ。
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とりうる選択肢をリサーチして、最終的に、「えいやっ」と決める。
プロジェクトにおける困難とは、まさしくこの「えいやっ」という意思決定の仕方にある。
3-2 プロジェクト工学 3つの法則
第1法則 | 「やったことのない仕事の勝利条件は、事前に決められない」 |
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第2法則 | 「プロジェクトにおいては、こうあれかしと考えて立案した施策が、想定を超えた結果をもたらす」 |
第3法則 | 「プロジェクトの過程における諸施策の結果もたらされる状況は、即座に次の局面における制約となり、ときにプロジェクトの勝利条件そのものの変更すらも要求する」 |
- 獲得目標・・・新規事業を成立させる、マイホームを建てるといった最終的な目標
- 勝利条件・・・その成功判断の基準
- プロジェクトにおいて「勝利条件」こそが肝心であり、それが事前には決められないことが、最大の困難を生んでいる。
- 課題が道を含むときは冷静に。それが既知の範疇なのであれば詰将棋のように、しっかりと読み切って華麗に解決する。
- 大事なのは、その課題が、自分にとって読み切れる局面なのかどうかを判断する力。
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プロジェクトの個別の局面とは、必ず4つの要素で構成されている。
(1) その時点で設定している獲得目標と勝利条件 (2) 制約条件 (3) 現状ターゲットにしている課題 (4) 課題に対する解決施策 -
問題は、(4)の解決施策を実施し、それが招いた結果が、次なる局面の制約条件(2)としてビルトインされてしまうということ。
- 例)遅延を回復させるため、要員を追加する → 情報伝達が難しくなり、さらに遅延
3-3 まとめ
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3つの法則から導き出される帰結:
- プロジェクトの成功とは、あらゆるプロジェクト活動が集結したあとに、事後的にのみ確認される。
- 「やってみないとわからない」
- プロジェクトにおける「想定外」とは「あってしかるべきもの」と「あってはならないもの」、この2つの軸で捉える。
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プロジェクトがうまくいかない理由を「自分の能力や努力の不足」と考えてしまうのは最大の間違い。
プロジェクトは、そもそも「思った通りにいかないようにできている」のだから。 -
「勝利条件の設定と更新」の方法こそが最大の奥義。
参加メンバーが諦めるまでは、スポンサーが資金提供を打ち切るまでは、プロジェクトは失敗ではない。 - プロジェクトが、初期条件によって縛られるのは、これほど無益なことはない。
第4章 プロジェクト譜~プ譜を使ってみる~
4-1 プ譜を使ってプロジェクトを可視化する
プロジェクト譜 の目的 |
プロジェクトにおける状況の変化や関係性を可視化することで、プロジェクトの「問題」を理解・解決しやすくすること。 |
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プロジェクトマネージャとしての力量を上げるための仮想演習を行うこと。 |
-
これまでのツール(WBS, ガントチャートなど)に欠けているのは、「自分自身の状況・環境の変化」を記述し、把握し、メンバーと共有するための手法。
また、局所的な視点になりがち(最終ゴールではなく、目先のことから。やるべきことからではなく、できるこことから。)。
4-2 プ譜の概要
プ譜の定義 | 時系列的な遷移も含め、逐次変化するプロジェクトの状況・全体像を可視化するための記述方法 |
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プ譜の 特徴かつメリット |
可視化 |
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問題解決 | |
編集性 |
プ譜の 記述要素 |
勝利条件 | プロジェクトを成功させるための条件。プロジェクトのゴール。 |
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廟算八要素 |
勝利条件を満たすため、自身に与えられたリソース。
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中間目的 | ゴールを達成するために細分化された目的。主要成功要因(CSF:Critical Success Factor)。 | |
施策 | 中間目的を達成するための個々の施策。 | |
事象 | 施策の結果。 |
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【プロジェクト工学の第二法則】
「プロジェクトにおいては、こうあれかしと考えて立案した施策が、想定を超えた結果をもたらす」
↓
施策や事象を記録し、吟味評価し、次の一手を考える。
第一局面 | 「勝利条件」「廟算八要素」「中間目的」「施策」の4つを記述。 |
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第二局面 | 「事象」を記述。 |
第三局面 | 「事象」に応じて、「中間目的」や「施策」を更新。 |
-
頭の中の情報を「外在化」
- 音楽家 → 楽譜
- 棋士 → 棋譜
- プログラマー → オブジェクト図
- プロジェクトマネージャ → プロジェクト譜
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プロジェクト情報の外在化のメリット
- 認知リソースを低減させることができる。。
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プロジェクトの状況や環境の変化がわかり、勝利条件や施策のツジツマが合っているかがわかる。
- WBSやガントチャートでは状況や環境の変化に対応できない。重要度より緊急度を優先してしまいがち。
- メンバーとプロジェクトのイメージや筋書きを共有することができる。
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所与の条件に基づき、各種の施策を立案・実行してプロジェクトのゴールに向かっていく過程
= 「問題解決のプロセス」
問題解決 | 目標 | 勝利条件 |
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状態 | 廟算八要素 | |
手段 | 施策、中間目的 |
- 想定外の出来事をネガティブに受動的に受け止めるのではなく、 想定外が当たり前であり、そこで遭遇した事象や情報の受け止め方と対応の仕方次第で、 プロジェクトが前に進むチャンスが生まれるという態度・考え方に変えることで、 プロジェクトは能動的で、創造的な行為に劇的に変わる。
- ↑ プ譜の「編集性」がこれを支援する。
4-3 プ譜を書いてみる
4-4 まとめ
「施策」の選び方のコツ
- シンプルか?
(関与者がムダに多い、調整事が多いものは除外する) - 緊急度が高いと思われるものは、重要度との兼ね合いから、取り組むべきかどうかを決める
- 現在のリソースで実行可能か?
- 費用対効果が高いか?
- 他の施策や中間目的とツジツマが合っているか?
- 必要条件か?十分条件か?
(十分条件まで満たす必要はあまりない) - 進展性は高いか?
(中間目的の状態をより良いものにすることができそうか?) - タイミングは適切か?
(論理的には正しくても、リソースや状況によって実行するには早すぎる、早すぎて十分な効果が出ないことがある) - トレードオフは?
(その施策を選択することによって実行できない施策があるなら、より取るべき施策を選択する) - What is not?
(〜でなければ、どうなるか?)と問うてみる
- 1つの施策に固執しないこと。ある施策で一生懸命に取り組むほど、その施策を行うこと自体が目的化してしまい、その施策から離れられなくなる。
-
認知バイアスなどにより、好転させる可能性のある情報を無意識に捨て去っている可能性がある。
- 受け取った情報は、自分の好みや偏見を含めず、ありのままに書く。
第5章 プロジェクト・エディティングの技術
5-1 プ譜をさらにうまく使うために
プ譜を使ったプロジェクトの進め方
-
「廟算八要素」に基づき、
「勝利条件」に向かって、
細分化された「中間目的」を達成するための
個々の「施策」を行う。 -
施策を行った結果を「事象」として記録することで、
その結果への対応方法を検討するというプロセスを踏む。 - このプロセスは、問題解決や人間の認知活動と共通する点が多い。
- プロジェクトとは問題解決の過程そのもの。
5-2 当たり前の発想を飛び越え、連想を助けるもの
当たり前の発想を飛び越える思考のツール
- アナロジー(類推し連想する能力)
- アフォーダンス(対象から与えられている行動の可能性に気づく能力)
- アブダクション(仮説を立てて推論する能力)
アナロジー(類推し連想する能力)
- ある問題を解くのに、よく似た別の問題を結びつけて、関連づけて考える思考法。
- アナロジーの力を養うには、多様な仮装演習の経験と、その経験から個別具体的な情報を捨て、 抽象的なレベルに引き上げて考える方法を実践することが有効。
アフォーダンス(対象から与えられている行動の可能性に気づく能力)
- 環境が生き物に与える「行為の機会」。
- 行為者とモノとの「関係性」。
- 環境の側にある、生き物の活動を誘発したり方向付けたりする性質。
- 例.
- 椅子には、「座ることができる」という行為を誘発する機会・関係性がある。
- 「平らな切り株」も座るという機会・意味・関係性を提供する。
- 知識や何事かを意味づけたり決定したりする行為は、 頭の中でだけ行うのではなく、 「環境」自体の中にも存在している。
- イレギュラーな望ましくない事象も、 市場や環境からアフォード(提供)された「行為の意味・機会」と捉えてみる。
-
「頭の中のプランが実行されることで行為が生じる」のではなく、
「行為が環境の中で探される」という考え方や、
「環境から提供される事象のアフォオーダンスを利用して、自らの行動を調整・適応させていく」という考え方。
アブダクション(仮説を立てて推論する能力)
推論 | 分析的推論 | 演繹 (deduction) |
○前提として与えられた情報に、妥当な推論規則を適用して行うタイプの推論。 ○観察した(与えられてた)事実を説明するための論理を形成する。 ○論証的。 ●プロジェクト開始前に、仮説をできるだけ立証する。 ★前提→結論 |
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拡張的推論 | 帰納 (induction) |
○経験から固有の情報を捨象し、一般化・抽象化を行うタイプの推論。 ○観察、体験した事実に基づいて論理を形成する。 ○検証的。 ●プロジェクトを進める過程で得た事象・データをもとに、分析・検討する。 ★事実→結論 |
|
アブダクション (仮説形成) (abduction) |
○現象の観察から、その事実を説明づけるような仮説を導き出すタイプの推論。 ○観察・体験した意外な事実の妥当性を証明するための論理を形成する。 ○創発的、発見的。 ●プロジェクトを進める過程で得た事象の妥当性を証明するために仮説を創る。 ★事実→仮説 |
- アブダクションは、事実によって直接的に、その正しさを確かめることのできないような仮説を立案できる推論の方法。
-
アブダクションをうまく活用できるようになるには:
- 遭遇した想定外の事象を、とるに足らないものとしてではなく、驚くべき事実と見なす。
- そこから想像力を発揮して仮説を立てる。
5-3 プロジェクトをよりよく理解し、膠着状態を打破するもの
-
プロジェクトを「自分のもの」とするということ:
- 予め与えられたプロジェクトの中間目標や施策、それらを統合した戦略などを、 製薬の範囲内で(時には勝利条件すらも)変化させることができるようになること。
5-4 態度、心構え
-
プロジェクトは平坦ではなく、単線的に、最短距離で、障害にも想定外にも遭わずに進むということはほとんどない。
この事実を受け入れ、それをプロジェクトメンバーやステークホルダーと共有していけばよい。 -
うまくいかないのは本人の能力の低さ、ましてや性格・人格などではなく、
単に採用した施策・方法がうまくいかなかっただけと考えればよい。
ある方法がうまくいかなかったら、別の方法を試せばよい。
Tパズルの実験
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被験者は・・・
- ピースを安定した形に置きたがる。
- くっつけた後にできる形が綺麗になるようにする。
- 初期からよい置き方をしているのに、「この方法ではダメだ」と思い込んで、正解から遠ざかる。
- 別の施策を行った方がよいのではないかという想いに駆られることがあるが、 最初の打ち手を信じて、決めたコスト・時間内ではその手を我慢して打ち続けることも時に有効。
-
未知で、想定外が当たり前の、変数の多い、複雑なプロジェクトを進めていくには・・・
- 事態・問題を与えられたものとせず、
- あれこれ動かしながら理解を進め、
- 遭遇した想定外であっったり、取るに足らないと感じたりする事象を、機会や素材として捉え、
- 自分の問題解決に利用できるよう様々に解釈しながら、
- プロジェクトのゴールや所与の条件とツジツマが合うようにしていく。
第6章 プロジェクトの感想戦
6-1 プロジェクトの感想戦
6-2 感想戦の着眼点
6-3 映画『シン・ゴジラ』を感想戦する
6-4 まとめ