John Kay (著), 薮井 真澄 (翻訳), ダイヤモンド社
- はじめに
- 第1章 センス・アンド・ザ・シティ
- 第2章 知っておきたい投資の基本
- 第3章 あなたにはどんな選択肢があるか
- 第4章 市場の効率性は完璧ではない
- 第5章 市場の心理
- 第6章 ファンダメンタル・バリューを探して
- 第7章 リスクと見返りについて――ちょっとハイレベルかもしれない論証1
- 第8章 2つの未知の世界――ちょっとハイレベルかもしれない論証2
- 第9章 「手堅い投資家」の投資戦略
- 第10章 「賢明なる投資家」の投資戦略
- 第11章 「賢明なる投資家」の銘柄選び
- 第12章 顧客のヨットはここにある
はじめに
- まず手堅い投資家として始め、経験と自信を身に着けるにつれて、 賢明なる投資に向ける運用の割合を増やしていく戦略。
- 市場は80%効率的だが、投資の利益は概して、非効率な残り20%から得られる。
- 肝心なのは、効率的市場と主観的期待効用というか考え方になじみつつ、 それらを真に受けすぎないこと。
第1章 センス・アンド・ザ・シティ
お金持ちになる方法教えます?
第2章 知っておきたい投資の基本
投資を始める前に
良い業者・悪い業者
その保険は必要か
金融投資のリターンを決めるもの
投機の誘惑
マーケットは変化する
ベンチマークとの付き合い方
リスクプレミアム
第3章 あなたにはどんな選択肢があるか
株式投資
PERと配当利回り
債券投資
- 国ごとに債券の利回りが異なるのは、政府の信用力評価というより、為替の見通しを反映した面が大きい。
不動産投資
レバレッジ
- 貸すために住宅を買うことは、その投資が財産のほんの一部にすぎないようなお金持ちの場合だけ、リスクの低い戦略となる。
- 機関投資家は居住用不動産に投資しない。商業用不動産への投資を好む。
ファンド
アクティブ運用とパッシブ運用
第4章 市場の効率性は完璧ではない
効率的市場と資産価値
価値査定方法 | 「時価会計」原則 | 資産の価値とは、だれかがそれを得るのに支払いたいと思う額である。 |
---|---|---|
「ファンダメンタル・バリュー」原則 | 資産価値とは、それが将来にわたって生み出すキャッシュである。 |
時価会計原則とファンダメンタル・バリュー原則
投票の結果が市場である
効率的市場仮説 | ウィーク型 | 過去の価格変動は、将来の価格変動についてなんの情報も伝えていない。 |
---|---|---|
セミストロング型 | 証券に関する公開情報はすべて、価格に織り込み済みである。 | |
ストロング型 | 証券について知り得る情報はすべて、価格に織り込み済みである。 |
- 効率的市場仮説は啓蒙的だが真実ではない。
証券価格はランダムウォークか
-
将来の変化によって相場が上昇する確率と下落する確率が等しくなるところまで、価格は上下する。
だから、きちんと予想された価格はランダムに変動する。
啓発的だが真実ならず
- 市場価格はときおり、ファンダメンタル・バリューとかけ離れた軌跡をたどることがあるが、最終的には是正される。
- ランダム・ウォークモデルや効率的市場仮説は、啓発的だが真実ではない。
価格変動 |
短期的には正の自己相関を示す。(モメンタム) (1日、1周間、1カ月) |
---|---|
長期的には負の自己相関を示す。(ミーン・リバージョン) (3年、5年) |
情報の非対称性
戦略的取引、モラルハザード、市場操作
完全に効率的ではない市場での投資戦略
- 効率的市場仮説は、啓発的だが真実ではない。 短期的にはモメンタムが、長期的にはミーン・リバージョンが幅をきかせる。
価格変動 | 投資テクニック |
---|---|
(短期)モメンタム | 市場心理を読む |
(長期)ミーン・リバージョン | ファンダメンタル・バリューの源を分析する |
ソロスとバフェット
市場とは | (誤)何が起こるかを予想して投票するための機械 |
---|---|
(正)起こる出来事に市場がどう反応するかを予想して投票するための機械 |
-
この違いは重要。いっしょと見なすのは「合理的期待」と呼ばれる極論。
- 何が起こるかを予想すること
- 出来事への反応を予測すること
-
バフェットやソロスの利益の源泉
- 市場の判断 と その根底に横たわる現実 との違い
- 価格 と 価値 との違い
- 市場心理 と 経済や企業のファンダメンタルズ との違い
第5章 市場の心
トレーダーの世界
テクニカル分析
個人投資家がプロに勝つには
-
ヘッジファンドや投資銀行にいる少数派の勝ち組トレーダーは、
直感的に市場の心理が読める。
- 膨大な情報、選りすぐりの頭脳、最強のコンピュータが使い放題。取引コストも個人よりもはるかに低い。
-
賢明なる投資家は、市場心理を読むことではプロにかなわない。
しかしファンダメンタル・バリューとなると、賢明なる投資家の方が確かに有利。
市場が正気を失うとき
現代のバブル
-
資産評価をめぐる不朽の2大原則
- 資産の価値とは、だれかがそれを得るのに支払いたいと思う額である。
- 資産の価値とは、それが将来にわたって生み出すキャッシュである。
横並び思考の魔力
蔓延する短期思考
“アクティブ"ファンドの憂鬱
-
投資マネジャーにとって3年間は長期だが、賢明なる投資家にとっては長期ではない。
成績を評価される時間軸の違いは、賢明なる投資家にとって大いに有利。
企業活動への悪影響
賢明なる投資家の強み
- 資産価格とは、ファンダメンタル・バリューと市場価格の、いずれか高い方である。
-
市場価格がファンダメンタル・バリューを上回っている場合、
賢明なる投資家は市場価格で売って別の投資先を探せばいい。
市場価格がファンダメンタル・バリューを下回っているときには、 保有し続けて定期的に入ってくるキャッシュを享受すればよい。 - ↑ この自由さこそが賢明なる投資家の直接的なアドバンテージ。
第6章 ファンダメンタル・バリューを探して
PER (株価収益率)
CAPE (景気循環調整後PER)
- 過去10年間のインフレ調整後の平均利益に対する、現在の株価水準の比率。
会計操作
俺が殺った獲物は俺が食う
キャッシュ・イズ・キング
競争優位性
- 価値ある競争優位性とは、持続性があり、その企業が独占できて、競合他社やサプライヤー、顧客の圧力から防御できるもの。
かつののバリュー投資家 | 市場価格よりも安く有形資産を買うこと。 |
---|---|
今日のバリュー投資家 | 持続的な競争優位性を割安に買うこと。 |
第7章 リスクと見返りについて ── ちょっとハイレベルかもしれない論証1
リスクと不確実性
主観的期待効用
-
主観的期待効用理論
- 人は物事の起こる確率を予想した上で、最も大きなメリットが得られるよう合理的に行動するという理論。
リスク | 前例のある未知(人が知らないと分かっているものごと) |
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不確実性 | 前例のない未知(知らないということさえ分かっていないものごと) |
確率論で考えろ
-
投資の原則を理解するうえで重要な2つの要素
統計分布 期待値
分布を比べる
分布の「中心傾向」 | 平均値(ミーン) | 期待値、平均的な結果 |
---|---|---|
中央値(メジアン) | 50パーセンタイル、代表的な結果 | |
最頻値(モード) | 最も確率が高い結果 |
- ↑ 正規分布は3つとも同じ。
造船所の命運
限界効用逓減の法則
ポートフォリオに留意せよ
-
ポートフォリオに留意せよ
- リスクは常に、個々の要素ではなくポートフォリオ全体の文脈で考えよ。途中経過ではなく結果に集中せよ。
- 非常にリスキーな資産(ヘッジ属性のある資産)への投資を少し含めることで、ポートフォリオ全体のリスクが減る。
ヘッジ資産としての価値
分散の威力
ベータ(β)とアルファ(α)
個別リスクと市場リスク
- 個別リスクは分散に任せればよい。市場リスクはヘッジや分散ができない。
- → 個別リスクはリスキーでない。市場リスクはリスキー。
- → それを市場が織り込む。
- → 個別リスクがある投機的な株のリターン < 市場リスクがある優良株のリターン
CAPM
-
CAPMでは、リスクと収益はその証券のベータで決まる。
- ベータβ: 個別株のリスクと市場リスクとの関係
- 株主資本コスト = イスクフリーレート + β × マーケットリスクプレミアム
- 株式の期待リターンは、個別企業のベータと、市場の株式リスクプレミアムの組み合わせである。
- 主観的期待効用とCAPMは啓発的だが真実ではない。
第8章 2つの未知の世界 ── ちょっとハイレベルかもしれない論証2
前例のない未知
物語とパターン
蜃気楼、体系、ホットハンド
モデルとその限界
予測とその限界
中国効果は「織り込み済み」
リスクとどう向き合うか
第9章 「手堅い投資家」の投資戦略
ポートフォリオを組み立てよう
出費を抑えよ
手堅い投資家のポートフォリオ
10,000 | ヴァンガード・トータル・ワールド・ストックETF |
5,000 | ブラックロック・グローバル・インデックス・ボンド・ファンド |
2,000 | 物価連動国債 |
1,500 | レバレッジの低いクローズドエンド型の不動産ファンド |
1,500 | 現金か興味をもった他の投資 |
-
為替ヘッジは不要
- 主要な企業は世界中の顧客を相手に、現地通貨建てで商品を売っている。
- あなたが将来返す債務は自国通貨建てであるとはいえ、自国ではなく世界の経済によって価値が決まる資産を持っていればある程度の保険にもなる。
第10章 「賢明なる投資家」の投資戦略
戦略を立てる
- トータルリターンの適切な目標:8%
- 資産の3〜4%を毎年支出する。(用心・税金・物価上昇があるので8%ではない)
投資の目標
分散はリスク管理の要
キャッシュと債券の安全神話
- 安心を得る手掛かりはすべてのリスクを避けることではなく、分散にある。
- キャシュや固定利付債券は、賢明なる投資家のポートフォリオには基本的に無用。
- 手堅い投資家がリスキーと見なす資産を寄せ集めることにより、リスクの低いポートフォリオを構築する。
逆張りのすすめ
- 横並び思考の力を裏返すと、逆張りの投資の力になる。
-
金融業界の専門知識を活用するには、彼らの勧めの逆を行くのが一番。
専門知識なんて無駄だからではない。
専門知識は「織り込み済み」だし、その性格上、客観的に正当化できる以上に「織り込み済み」だから。 - たとえ群衆がファンダメンタル・バリューを正しく判断している場合でも、その流行はもう「織り込み済み」だ。
- まずは大まかな資産クラスやファンドに限って逆張り戦略を始める。
売買のタイミング
資産配分
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「ファンダメンタル・インデックス」を追求する。
- 資産ウェートは時価総額ではなく、経済的寄与を示す何らかの基礎的指標をもとに決める。(世界の総所得に占める国民総所得の割合など)
第11章 「賢明なる投資家」の銘柄選び
分散せよ
-
投資案を検討する際に考えるべきこと
- この投資の潜在的なリターンは、自分の全般的な投資目的と整合的か?
- 5年間、あるいはそれ以上の期間でみてこの投資の成否を決める、この資産特有の要因は何か?
- この投資の特性は、私が既に持っている他の証券の特性と大幅に異なるだろうか?
ファンドの選び方
株式の銘柄選び
銘柄の見極め方
- あなたが目指しているのは10倍株、20倍株ではなく、年率8%という目標の達成を確かなものにすることだ。
第12章 顧客のヨットはここにある
John Kay (著), 薮井 真澄 (翻訳), ダイヤモンド社