2019年3月16日土曜日

『ホモ・デウス 〜テクノロジーとサピエンスの未来』

  • 第1章 人類が新たに取り組むべきこと
  • 第1部 ホモ・サピエンスが世界を征服する
    • 第2章 人新世
    • 第3章 人間の輝き
  • 第2部 ホモ・サピエンスが世界に意味を与える
    • 第4章 物語の語り手
    • 第5章 科学と宗教というおかしな夫婦
    • 第6章 現代の契約
    • 第7章 人間至上主義
  • 第3部 ホモ・サピエンスによる制御が不能になる
    • 第8章 研究室の時限爆弾
    • 第9章 知能と意識の大いなる分離
    • 第10章 意識の大海
    • 第11章 データ教

第1章 人類が新たに取り組むべきこと
章の
要約
飢餓疾病戦争を乗り越えた人類が次に目指すのは、 不死幸福神性
人間を神にアップグレードし、ホモ・サピエンスをホモ・デウス(「デウス」は「神」の意)に変えることを目指す。
生物学的貧困線
見えない大軍団
  • 黒死病(ペスト)
    • 14世紀の大流行は、世界人口を4億5000万人から3億5000万人にまで減少させた。約30%の減少。
  • 天然痘、スペイン風邪、SARS、エボラ出血熱、エイズ

病原菌 vs 医療
  • 医療のほうが優位
    • 病原菌・・・病後堰体のゲノムにおける偶然の変異の結果。
    • 医療・・・より多くのより優れた知識を蓄積し、それを使って効果的な薬や治療法を考案する。
    • 「ナノロボット vs 病原体」となったとき、病原体は、生体工学で造られた捕食者との戦いの経験はないため劣勢に。
  • 【生物兵器】しかし、何らかの冷酷なイデオロギーのために人類が自ら強力な感染症を生み出す場合にのみ、そうした感染症は将来、人類を危険にさらし続ける。
ジャングルの法則を打破する
  • 歴史を通してほとんどの人間にとって、 戦争は起こって当然のものであり、 平和は一時的で、いつ崩れてもおかしくない状態だった。
  • 核兵器のおかげで、超大国の間の戦争は集団自殺という狂気の行為になった。
  • 世界経済は、を基盤とする経済から、知識を基盤とする経済へと変容した。
    原油は戦争で奪取できるが、知識はそうはいかない。
  • 「平和」の意味が変わった。
    • 戦争が一時的に行われていない状態

      戦争が起こりそうもない状態
  • 今後はテクノロジーが発展し、新しい種類の戦争が始まる。
    • サイバー戦争
      • 小国や非国家主体にさえ超大国と効果的に戦う能力を与える。
テロ
  • 真の力にアクセスできない人々が採用した、弱さに端を発する戦略。
  • 重大な物的損害を引き起こすよりも、恐れを蔓延させることで効果をあげてきた。
  • アルカイダ(テロ)よりもコカコーラ(肥満)のほうがはるかに深刻な脅威。
  • テロとは、本質的には見世物。
  • テロに対する過剰な反応は、私たちの安全にとって、テロリストそのものよりも大きな脅威となる。
  • テロリストは、食器店を破壊しようとしているハエ。
    • ティーカップさえ微動もさせられないので、牛の耳に飛び込み牛を暴れさせる。
    • イスラム原理主義者は9.11を引き起こし、中東の食器店(フセイン政権)を破壊してもらった。
死の末日
人類は「不死」を目指す
  • 歴史を通して、宗教とイデオロギーは生命そのものは神聖視しなかった。
    • 宗教は死を、世界の不可欠で好ましい部分と見ていた。
  • 現代は、「死」を「超自然的な神秘」とは考えず、「解決すべき技術的な問題」と考える。
  • 永遠の若さを提供する市場よりも将来性のある市場はない。
世界人権宣言
  • 第二次世界大戦後に国連で採択。
  • 世界憲法に最も近い。
  • 「生命に対する権利」が人類にとって最も根本的な価値である、と宣言。
幸福に対する権利
人類は「幸福」を目指す
  • 人は簡単には幸せになれない。
  • 物質的な成果では満足は長続きしない。お金・名声・快楽をやみくもに追い求めても、惨めになるだけ。
  • 私たちの生化学系は、幸福ではなく生存と繁殖の機会を増やすように適用してきた。
    快い味やオーガズムは長続きしない。
    私たちの幸福が生化学系で決まるのなら、永続的な満足を確保するには、この系を操作するしかない。
生化学的な
解決策
快感の果てしない流れを人間に提供し、けっして快感が途絶えることのないようにできる製品や治療法を開発する。
ブッダの推奨 快感への渇望を減らし、その渇望に人生の主導権を与えないようにする。

心を鍛錬すると、「あらゆる感覚が絶えず湧き起こっては消えていく様子」を観察できるようになる。

自分の感覚の正体が、「儚く無意味な気の迷い」であることがわかる。

そんな感覚を追い求めることは無意味に。
  • 人類は「生化学的な解決策」に関心を抱いている。僧侶や哲学者とは違い、資本主義にとって、幸福は快楽。
地球という惑星の神々
  • 人間は至福と不死を追い求めることで、じつは自らを神にアップグレードしようとしている。
    それは、至福と不死が神の特性だからであるばかりではなく、 人間の老化と悲惨な状態を克服するためにはまず、 自らの生化学的な基盤を神のように制御できるようになる必要があるからである。

    もし私たちが自分の体から死と苦痛を首尾よく追い出す力を得ることがあったなら、 その力を使えばおそらく、私たちの体をほとんど意のままに作り変えたり、 臓器や情動や知能を無数の形で操作したりできるだろう。
    これまでのところ、人間の力の増大は主に、外界の道具のアップグレードに頼ってきた。
    だが将来は、人の心と体のアップグレード、あるいは、道具との直接の一体化にもっと依存するようになるかもしれない。
アップグレード方法
生物工学 意図的に遺伝子コードを書き換え、脳の回路を配線し直し、生化学的バランスを変える。
サイボーグ工学 有機的な体を、バイオニック・ハンドや人工の目、無数のナノロボットと一体化させる。
同時に複数の場所に存在することも可能。
(司令塔は、有機的な脳)
非有機的な生き物
を生み出す工学
脳も含め、完全に非有機的な生き物。
仮想現実も現実世界も、地球の外でも動き回れる。
神性
  • 人類の新たな課題リストは、じつは、多くの部門を持つたった1つのプロジェクト、すなわち、神性を獲得すること。
  • 聖書に出てくる全能の天の父ではなく、古代ギリシアの神々やヒンドゥー教の神々。
  • 全能ではなく、特定の超能力。
誰かブレーキを踏んでもらえませんか?
  • ブレーキの場所がわからない。
    • AI、ナノテクノロジー、ビッグデータ、遺伝学など、ある1つの分野に精通している専門家はいるが、 すべての分野を熟知している人はいない。
      現在のシステムを理解している人はもう一人もいない。
  • ブレーキを踏んだら経済が崩壊する。
    • 経済には無限に続く成長が必要。果てしないプロジェクトを必要とする。不死・至福・神性の探求のようなプロジェクトを。

  • どんなアップグレードも当初は治療として正当化される。
  • 遺伝子工学: 選別 → 取り換え → 修正
知識のパラドックス
  • 予測が優れているほど、より多くの反応を引き起こす。
  • カール・マルクスの『資本論』
    • 資本主義者は、マルクス主義による診断を採用しながら、それに即して自分の行動を変えた。
  • 行動を変える知識はたちまち妥当性を失う。
芝生小史
  • 歴史を学ぶ目的は、未来を予測するのではなく、過去から自らを解放し、他のさまざまな運命を想像するため。
  • 私たちの現状は自然でも永続的でもない。かつて、状況は違っていた。
    今日、私たちが知っているような不当な世界が誕生したのは、一連の偶然の出来事が起こったからにすぎない。
    私たちが賢明な行動を取れば、その世界を変え、はるかに良い世界を生み出せる。
  • 私たちが「芝は美しい」と思うのも、歴史に縛られているだけ。
第一幕の銃
  • ホモ・サピエンスとはいったい何者か。
  • 人間至上主義はどのようにして支配的な世界宗教になったのか。
  • 人間至上主義の夢を実現しようとすれば、なぜその崩壊を引き起こす可能性が高いのか。





第1部 ホモ・サピエンスが世界を征服する
第2章 人新世
章の
要約
農業革命によって家畜が誕生し、それまで対等だった動物が下等に扱われるようになり、 それを正当化するために有神論の宗教が生まれ、人間至上主義へと進んでいった。

  • 小惑星は地球上の進化の道筋を変えたが、進化の根本的なルールには手を出さなかった。
  • ホモ・サピエンスがゲームのルルールを書き直してしまった。
  • 人類は、自然選択に替えて知的設計を採用し、有機の領域から無機の領域へと生命を拡げるところまで来ている。
ヘビの子供たち
祖先の欲求
  • 人間は独自であるという信念 ←農業革命の副産物
  • 農業が始まり、地球上に完全に新しい生命体「家畜」が誕生した
  • 何千世代も前に形作られた欲求(※)は、現在それが生存と繁殖にもう必要でない場合にさえ、主観的に感じられ続ける。
    悲惨なことに、農業革命のおかげで、人間は家畜の主観的欲求を無視しながらもその生存と繁殖を確保する力を得た。
    (※)あらゆる本能や衝動や情動。甘いものを食べたくなる衝動など。
生き物はアルゴリズム
  • 「アルゴリズム」は、私たちの世界で間違いなく最も重要な概念。
    • アルゴリズムとは、計算をし、問題を解決し、決定に至るために利用できる、一連の秩序だったステップ。
  • 21世紀はアルゴリズムに支配される。
  • 情動は生化学的なアルゴリズムで、すべての哺乳動物の生存と繁殖に不可欠。
  • 自動販売機を制御しているアルゴリズムは、機械的な仕掛けと電気回路位によって機能する。
    人間を制御しているアルゴリズムは、感覚や情動や思考によって機能する。
農耕の取り決め
  • 農業革命は経済革命であると同時に宗教革命でもあった。
    新しい種類の経済的関係が、動物の残酷な利用を正当化する新しい種類の宗教的信念とともに出現した。
  • 家畜を利用している罪悪感を、有神論の宗教で正当化。
    • 有神論:世界はさまざまな生き物から成る議会ではなく、偉大な神々あるいは唯一神が支配する神政国家だと主張。
    • 神話は、人間と栽培化された植物と家畜化された動物との関係を中心としていた。
    • 有神論のドラマでは、サピエンスが主人公になり、森羅万象がサピエンスを中心に回り始めた。
五〇〇年の孤独
  • 農業革命の間に、人間は動植物を黙らせ、 アニミズムの壮大なオペラを人間と神の対話劇に変えた。
    そして科学革命の間に、人類は神々まで黙らせた

農業革命 有神論の宗教を生み出す。
科学革命 人間至上主義の宗教を生み出す。

  • 家畜を窮屈なゲージに詰め込み、肉屋牛乳や卵を効率的に生産する。 近年、そのような慣行が見直し始められている。
    私たちは突然、「下等な生き物」の運命に、今までにない関心を見せている。
    私たち自身が「下等な生き物」の仲間入りをしそうだからかもしれない。
第3章 人間の輝き
章の
要約
人間が他の動物より優れているのは、輝き(魂や心)があるからではなく、虚構をを想像する力があるから。

  • 人間には不滅の魂があるが、動物はただの儚い肉体にすぎないという信念。
    法律制度や政治制度や経済制度の大黒柱となっている。
    • 【強力な神話】肉体は衰え、やがて朽ちるが、魂は救済あるいは永遠の断罪に向かって旅を続け、 楽園で永久に続く喜びを経験するか、地獄で永久に悲惨な状態にとどまる。
チャールズ・ダーウィンを怖がるのは誰か?
証券取引所には意識がない理由
生命の方程式
  • 19世紀の科学者たちは、脳と心を、まるで蒸気機関であるかのように説明した。 なぜ蒸気機関なのか。なぜなら、それが当時の最新テクノロジーであったから。
    人間の心を、データ処理するコンピュータであるかのように説明するのも、けっきょく幼稚なものなのかものしれない。
実験室のラットたちの憂鬱な生活
自己意識のあるチンパンジー
賢い馬
  • 知能も道具の製作もそれだけではサピエンスによる世界征服を説明できないことは明白。
  • 私たちの世界征服における決定的な要因は、多くの人間どうしを結びつける能力だった。
    不滅の魂や何か独特の意識ではなく、この具体的な能力で説明できる。
  • 無数の見知らぬ相手と非常に柔軟な形で強力できるのはサピエンスだけ。
革命万歳!
  • 統制の取れた軍隊が、まとまりのない大軍を楽々打ち破り、結束エリート層が無秩序な大衆を支配してきた。
  • 革命を起こすには、数だけでは絶対に足りない。革命はたいてい、一般大衆ではなく運動家の小さなネットワークによって始まる。
セックスとバイオレンスを超えて
  • 大半の社会的な哺乳動物の間の社会的強力は、親密な付き合いに基づいている。
  • 最後通牒ゲームによる発見:サピエンスは冷徹な数学の論理ではなく温かい社会的論理に従って行動する。
  • 人は本来、平等主義であり、不平等な社会は憤りや不満のせいで、けっしてうまく機能しない。
  • 大規模な人間の強力はすべて、究極的には想像上の秩序を信じる気持ちに基づいている。
    想像上の秩序:私たちの想像の中にのみ存在しているのにもかかわらず、冒すべからざる現実であると私たちが信じている一群の規則。悪いことをしたら地獄に堕ちるとか。
  • ある土地に住んでいるサピエンス全員が同じ物語を信じているかぎり、 彼らは同じ規則に従うので、見知らぬ人の行動を予測して、大規模な協力のネットワークを組織するのが簡単になる。
  • チンパンジーには、そのような物語を創作して広めることができない。
意味のウェブ
客観的現実 たいていの人は、現実は客観的なものか主観的なもののどちらかで、それ以外の可能性はないと思いこんでいる
だから何かが、主観的に感じているものでないとき、客観的なものであるという結論に飛びつく。
主観的現実
共同主観的現実 歴史におけるきわめて重要な因子の多くは、共同主観的なもの。
お金、法律、神

  • ほとんどの人の人生には、彼らが互いに語り合う物語のネットワークの中でしか意味がない。
  • 意味は、大勢の人が共通の物語のネットワークを織り上げたときに生み出される。
  • 人々は絶えず互いの信念を強化しており、それが無限のループとなって果てしなく続く。 互いに確認し合うごとに、意味のウェブは強固になり、他のだれもが信じていることを自分も信じる以外、ほとんど選択肢がなくなる。
  • 何十年、何百年もたつうちに、意味のウェブがほどけ、それに代わって新たなウェブが張られる。
    歴史を学ぶというのは、そうしたウェブが張られたりほどけたりする様子を眺め、 ある時代の人々にとって人生で最も重要に見える事柄が、子孫にはまったく無意味になるのを理解すること。
  • 人は意味のウェブを織り成し、心の底からそれを信じるが、遅かれ早かれそのウェブはほどけ、 あとから振り返れば、いったいどうしてそんなことを真に受ける人がいたのか理解できなくなる。
    中東に出かけていって、イスラム教徒を殺すためではなく、イスラム教徒の一集団を別の集団から守るために命を危険にさらす。
    天国に至ることを期待して十字軍の遠征に出る。
  • 100年後、民主主義人権の価値を信じる私たちの気持ちも、私たちの子孫には理解不能になるかも。
夢と虚構が支配する世界
  • サピエンスが世界を支配しているのは、彼らだけが共同主観的な意味のウェブを織り成すことができるから。
  • 他の動物たちが人間に対抗できないのは、彼らにはもないからではなく、必要な想像力が欠けているから。
生命科学 共同主観的なものの存在を認めない。
十字軍遠征は縄張り争い。
人文科学 共同主観的なものを重視。
北朝鮮と韓国が異なるのは、気候や地形の違いからではなく、北朝鮮が非常に異なる虚構に支配されているから。

  • 虚構に基づき科学が利用され、歴史がつくられる。
  • 21世紀の間に、歴史学と生物学の境界は曖昧になる。
    • 歴史上の出来事に生物学的な説明が見つかるからではなく、・・・
      イデオロギー上の虚構がDNA鎖を書き換え、
      政治的関心や経済的関心が気候を再設計し、
      山や川から成る地理的空間がサイバースペースに取って代わられるから。
  • 虚構は、小惑星や自然選択をも凌ぎ、地球上で最も強大な力となりかねない。
  • 将来を知りたいなら、ゲノムを解読したり、計算を行ったりするだけでは不十分。 この世界に意味を与えている虚構を読み解くことが必要。





第2部 ホモ・サピエンスが世界に意味を与える
第4章 物語の語り手

7万年前
認知革命
1.2万年前
農業革命
神々の物語を信じる。
神々は、現代のブランドや企業に相当する機能を果たす。
日々の活動は神殿の神官たちが管理。(規模が大きくなると管理しきれなくなる)
5千年前
シュメール人が
書字と貨幣を発明
人間の脳によるデータ処理の限界を打ち破る。
税の徴収、巨大王国の建国が可能に。
シュメール:王国は神々の名の下に、人間の神官王が管理。
ナイル:神官王を紙と一本化し、生き神のファラオを生み出す。

  • 書字のおかげで、人間は社会まるごとアルゴリズムの形で組織できるようになった。
  • 読み書きのできる社会では、人々はネットワークを形成しており、 各人は巨大なアルゴリズムの中の小さなステップでしかなく、アルゴリズム全体が重要な決定を下す。 これこそが官僚性の本質
紙の上に生きる
  • 文書という媒体を通して現実を見るようになった。
  • 文字:現実を描写するささやかな方法 → 現実を作り変える強力な方法
  • 公の報告書 vs 客観的な現実 → 現実が負けることも
聖典
  • 現実が文書に負ける → アフリカの国境は直線的
    • 河川や山並みや交易ルートが反映されえいない。
    • アフリカに足を踏み入れたこともないヨーロッパの官吏たちが定めたから。
  • 何らかなの虚構の神話に頼らなければ、大勢の人を効果的に組織することができない。
    虚構をまったく織り込まずに、現実にあくまでこだわっていたら、ついてきてくれる人はほとんどいない。
システムはうまくいくが……
  • 歴史は単一の物語ではなく、無数の異なる物語。
    そのうち1つを選んで語るときには、残りをすべて沈黙させることを選んでいるわけでもある。
  • 虚構と現実を区別する。
    • 虚構は「苦しむことがない」。戦争に負けても国は苦しまない。苦しむのは国民。
    • 物語を目標や基準にするべきではない。物語がただの虚構であることを忘れたら、現実を見失ってしまう。 「国益を守るため」に戦争を始めてしまう。
第5章 科学と宗教というおかしな夫婦

  • 人々が自分のお気に入りの虚構に合うように現実を作り変えるにつれ、コンピュータと生物工学のおかげで、 虚構と現実の違いがあやふやになっていく。
病原菌と魔物
  • 宗教の定義
    • 【正】人間の法や規範や価値観に超人間的な正当性を与える網羅的な物語。
    • 【誤】迷信と同一視する。
    • 【誤】超自然的な力を信じることと同一視する。
    • 【誤】「神の存在を信じること」と定義する。
  • 宗教は、私たちが創作したわけでもなく変えることもできない道徳律の体系に、私たち人間は支配されている、と断言する。
  • 仏教や共産主義やナチズムや自由主義まで、これらいわゆる超人的な法は自然の摂理であり、どこかの神の創造物ではないと主張する。
  • 自由主義者も、共産主義者も、現代の他の主義の信奉者も、自らのシステムを「宗教」と呼ぶのを嫌う。 なぜなら、宗教を迷信や超自然的な力と結びつけて考えているから。
  • どの社会もその成員に、人間を超越した何らかの道徳律に従わなければならないと命じ、 その道徳律に背向けば大惨事を招くと言い聞かせる。
もしブッダに出会ったら
  • 宗教とは社会秩序を維持して大規模な協力体制を組織するための手段。
  • 宗教=取り決め;精霊=旅
  • 霊的な旅
    • 人々を神秘的な道に連れ出し、未知の行き先に向かわせる。
    • 私は何者か、人生の意味とは何か、善とは何か、といった大きな疑問から始まる。
神を偽造する
  • 宗教の物語にはほぼ必ず3つの要素が含まれている。
    倫理的な判断 「人の命は神聖である」
    事実に関する言明 「人の命は受精の瞬間に始まる」
    実際的な指針 「受精のわずか1日後でさえ、妊娠中絶は絶対に許すべきではない」
    (「倫理的な判断」を「事実に関する言明」と融合させることから生じる指針)
  • 「倫理的な判断」は、「事実に関する言明」を内に秘めていることが多い。
聖なる教義
  • 科学には超えられない一線がある。 何らかの宗教の導きがなければ、大規模な社会的秩序を維持するのは不可能。
  • 宗教的信仰を考慮に入れなければ、科学の歴史は理解できない。
魔女狩り
  • 科学も宗教も真理はあまり気にしないので、簡単に妥協したり、共存したり、協力したりさえできる。
    • 宗教:真理よりも秩序を優先する。
    • 科学:真理よりもを優先する。
  • 現代社会は人間至上主義の教義を信じており、その教義に疑問を呈するためにではなく、 それを実行に移すために科学を利用する。
第6章 現代の契約
銀行家はなぜチスイコウモリと違うのか?
  • 人々が何千年にもわたって将来の成長を信じなかったのは、 成長が私たちの直感や、人間が進化の過程で受け継いできたものや、この世界の仕組みに反しているから。
  • 自然界の系の大半は平衡状態を保ちながら存在していて、 ほとんどの競争はゼロサムゲームであり、他者を犠牲にしなければ繁栄はない。
  • 新しい事業のための資金調達が難しかった。
  • 信用に基づく経済活動がなかった。
ミラクルパイ
伝統的な宗教 既存のパイを再分配するか、天国というパイを約束する。
現代 経済成長は可能であるばかりか絶対不可欠であるという固い信念に基づいている。

  • 資本主義は、2000年近いキリスト教の教えよりもはるかに、全世界の平和に役立ってきた。
  • 【資本主義】
    • 成長という思考の価値観の信奉
    • 戒律「汝の利益は成長を増大させるために投資せよ」
    • 敬虔な資本主義者は利益を使って新たに従業員を雇ったり、工場を拡張したり、新製品を開発したりする。
方舟シンドローム
  • 知識はもうすべて聖典や古代からの伝承のなかに含まれている、という思い込み。
  • 人類は科学革命によって、この素朴な思い込みから解放された。
  • 最も偉大な科学的発見は、無知の発見だった。
激しい生存競争
パイの大きさが
決まっていたころ
飽きることのない欲は悪
近代
貪欲は成長を促すので善に

強欲を抑えていた規律が廃れる

不安が生じる

自由市場資本主義が不安を和らげる。

経済が成長してさえいれば、市場の見えざる手が他のことはいっさい取り計らってくれるから。

どこに向かって自分が突き進んでいるかを誰も理解しないままに急速に成長する貪欲で混沌としたシステムを、 資本主義は正当化した。

  • 資本主義単独では人間社会に資することはありえなかった。
  • 現代社会を崩壊から救ったのは、革命的な新宗教、すなわち人間至上主義
第7章 人間至上主義
内面を見よ
  • 意味も神や自然の法もない生活への対応策 →人間至上主義

人間至上主義
という宗教
  • 人間性を崇拝し、キリスト教とイスラム教で神が、仏教と道教で自然の摂理がそれぞれ演じた役割を、人間性が果たす。
  • 人間の自由意志こそが最高の権威。
  • 「自分に耳を傾けよ、自分に忠実であれ、自分を信頼せよ、自分の心に従え、心地よいことをせよ」
  • 物事は、そのせいで誰かが嫌な思いをするときにだけ悪いものになりうる。

人間至上主義の政治
  • 「有権者がいちばんよく知っている」
  • 個々の人間の自由な選択が究極の政治的権威であると、私たちは信じている。(民主的な選挙)
人間至上主義の美学
  • 「美は見る人の目の中にある」
  • 芸術的創造と美的価値観の唯一の厳選は人間の感情だと信じている。
  • かつて芸術は、人間の天分ではなく、神聖な霊感に帰せられていた。
人間至上主義の経済
  • 「顧客は常に正しい」
人間至上主義の教育
  • 「自分で考えろ」
人間至上主義の倫理
  • 「もしそれで気持ちが良いのなら、そうすればいい」

黄色いレンガの道をたどる
知識の公式 中世ヨーロッパ 知識 = 聖書 * 論理
  • 聖書を読み、文章の厳密な意味を理解するために論理を使う。
科学革命後 知識 = 観察に基づくデータ * 数学
  • 観察に基づくデータを集め、数学的ツールを使って分析する。
  • この公式では、価値や意味や倫理に関する疑問には答えられない。
人間至上主義 知識 = 経験 * 感性
  • 倫理に関する疑問に対する答えを知りたければ、自分の内なる経験と接触し、 この上ないほどの感性をもってそれを観察する。
  • 【経験】主観的な現象で、「感覚」と「情動」と「思考」という3つの構成要素から成る。
  • 【感性】自分の「感覚」と「情動」と「思考」に注意を払うこと。 それらの「感覚」と「同情」と「思考」が自分に影響を与えるのを許すこと。

  • 人間至上主義の人生における最高の目的
    • 多種多様な知的経験や情動的経験や身体的経験を通じて知識をめいっぱい深めること。
戦争についての真実
戦争の捉え方 軍事的・政治的現象
  • 何千年にもわたって、人々は戦争を眺めるときには、神・皇帝・将軍・偉大な英雄を目にした。
  • 「苦しくても、良き大義のために戦っていると皇帝がおっしゃるのだから、苦しみには意味がある」
情動的現象
  • 過去2世紀の間に、王や将軍はしだいに脇へ押しやられ、スポットライトは一兵卒やその経験に向けられるようになった。
  • 「苦しいのは悪いこと。だから戦争は悪い。そんな戦争を皇帝が支持するなら、皇帝が間違っている」

人間至上主義の分裂
「経験」の
解釈の違い
による分裂
自由主義的な
人間至上主義
(正統派の
人間至上主義)
  • 自由を重視。
  • ありとあらゆる人にできるかぎり多くの自由を与え、世界を経験したり、自分の内なる声に従ったり、自分の内なる真実を表現できたりできるようにするべきだ。
社会主義的な
人間至上主義
  • 自分と自分の感情ばかりに夢中になるのをやめ、他者がどう感じているかや自分の行動が他者の経験にどう影響するかに注意を向けることを要求する。
進化論的な
人間至上主義
  • ダーウィンの進化論に根差す。
  • 争いは、自然選択の原材料で進化を推し進めるため、賞賛するべきもの。
  • 優秀な人間が劣悪な人間を迫害することを命じる。
  • 戦争の経験は人類を新しい業績へと押しやる。

ベートーヴェンはチャック・ベリーよりも上か?
人間至上主義の宗教戦争
電気と遺伝学とイスラム過激派
  • 歴史は過去に囚われた一般大衆ではなく、先見の名のある少人数の革新者によって形作られることが多い。

マルクスとレーニンが成功した理由
  • 聖典を調べることよりも、テクノロジーと経済の実情を理解することに注意を向けたから。
  • 社会主義者たちは、テクノロジーと経済を通しての救済を約束し、 それによって史上初のテクノ宗教を確立し、イデオロギー上の議論の土台を変えた。
  • 神や天国よりもテクノロジーと生産に注目した。

再び進歩の列車が駅を出る
19世紀半ば 神や天国よりも、テクノロジーと生産
21世紀初頭の今 21世紀のテクノロジー(バイオテクノロジーとコンピュータアルゴリズム)
列車に乗れば、神のような創造と破壊の力を獲得することになる。
列車に乗った少数の国々が世界を制服する。

  • 遺伝子工学AIが潜在能力を発揮した日には、 自由主義民主主義自由市場は時代遅れになる。





第3部 ホモ・サピエンスによる制御が不能になる
第8章 研究室の時限爆弾

現在は、自由主義のパッケージ
に支配されている。
個人主義
人権
民主主義
自由市場

自由主義の崩壊
  • 自由主義者が個人の自由を重視する理由 = 人間には自由意志があると信じているから。
  • 21世紀の科学は自由主義の秩序の土台を崩しつつある。
  • 脳の電気化学的プロセスは、決定論的か、ランダムか、その組み合わせのいずれか。
    決定論とランダム性がケーキを山分けしてしまい、「自由」の取り分はひとかけらすら残っていない。
    「自由」という神聖な単語は、まさに「魂」と同じく、具体的な意味など全く含まない空虚な言葉。
  • 特定の願望が自分の中に湧き上がってくるのを感じるのは、それが脳内の生化学的なプロセスによって生み出された感情だから。
    そのプロセスは決定論的かもしれないし、ランダムかもしれないが、自由ではない。
どの自己が私なのか?
人生の意味
  • 自由な個人というのは生化学的アルゴリズムの集合によってでっち上げられた虚構の物語にすぎない。
中世の十字軍戦士 神と天国が人生に意味を与える。
現代の自由主義者 個人の自由な選択が人生に意味を与える。

  • 自由主義は、哲学的な考えによってではなく、テクノロジーによって脅かされている。
第9章 知能と意識の大いなる分離

  • 人間は経済的有用性軍事的有用性を失い、 そのため、経済と政治の制度は人間にあまり価値を付与しなくなる。

軍事的有用性
  • 21世紀の最も先進的な軍隊は、人員よりも最先端のテクノロジーに依存する度合いがはるかに高い。
  • ドローンやサイバーワームから成るハイテク部隊。
  • 将軍からアルゴリズムへ。
  • 戦争は生物の時間スケールで行われてきた。サイバー戦争は数分で終わりうる。
経済的有用性
  • 専制君主や軍事政権が自由主義化する気になったのは、道徳的理由ではなく経済的理由から。
  • 知能と意識が分離する。→ 人間は経済的な価値を失う。
  • 高い知能を必要とする仕事は、意識ある私たち人間にしかできなかった。
  • 意識を持たない新しい種類の知能が開発されている。

無用者階級
  1. 生き物はアルゴリズムである。 ホモ・サピエンスも含め、あらゆる動物は厖大な歳月をかけた進化を通して自然選択によって形作られた有機的なアルゴリズムの集合である。
  2. アルゴリズムの計算は計算機の材料には影響されない。 そろばんの材料は木でも鉄でもプラスチックでもよい。
  3. したがって、有機的なアルゴリズムにできることで、非有機的なアルゴリズムにはけっして再現したり優ったりできないことがあると考える理由はまったくない。 計算が有効であるかぎり、アルゴリズムが炭素の形を取っていようと関係ない。

  • 富と権力は、全能のアルゴリズムを所有する、ほんのわずかなエリート層の手に集中して、空前の社会的・政治的不平等を生み出す。
  • アルゴリズム自体が所有者になるかも。
    • シュメールの多くは、想像上の神々に所有されていた。
    • もし神々が土地を所有し、人々を雇えるなら、アルゴリズムにもできる。
  • 芸術は、何か神秘的な霊か超自然的な魂の産物ではなく、数学的パターンを認識する有機的なアルゴリズムの産物。 非有機的なアルゴリズムがそれを習得できない道理はない。

19世紀の
産業革命
  • 巨大な都市プロレタリアートが誕生。
  • 社会主義が広まったのは、この新しい労働者階級の、前例のない欲求と希望と恐れに、他のどんな教義も応えられなかったから。
  • 最終的に自由主義が社会主義を打ち負かせたのは、社会主義の綱領から最良の部分を採用したからにすぎない。
21世紀
  • 新しい巨大な非労働者階級「無用者階級」が誕生する。
  • 経済的価値や政治的価値、さらには芸術的価値さえ持たない人々、社会の繁栄と力と華々しさになんの貢献もしない人々。

  • 無用者階級を満足させるもの
    • テクノロジーが豊かさをもたらし、やることがなくなる。
    • 何かをしていなければ頭がおかしくなる。→ 薬物コンピュータゲームが答えかも。
八七パーセントの確率
  • 自由主義は個人主義を信奉している。
  • 個人主義に対する自由主義の信心は、3つの前提に基づいている。生命科学はこれら3つの前提に意義を唱える。
自由主義が個人主義を信奉する理由 生命科学が唱える意義
私は分割不能の個人である。
(自分の奥深くに単一の内なる声本物の自己がある。)
生き物はアルゴリズムであり、人間は分割可能な存在である。
(人間は多くの異なるアルゴリズムの集合で、単一の内なる声や単一の自己などというものではない。)
私の本物の自己は完全に自由である。 人間を構成しているアルゴリズムはみな、自由ではない。それらは遺伝子と環境圧によって形作られ、 決定論的に、あるいはランダムに決定を下すが、自由に決定を下すことはない。
以上より、私は、自分自身に関して他人には発見しえないことを知りうる。 以上より、外部のアルゴリズムは理論上、私が自分を知りうるよりもはるかによく私を知りうる。
体と脳をモニターすれば、私が何者なのかや、何を望んでいるかを正確に知りいうる。

20世紀の
テクノロジー
  • 「私自身については私よりもよく知ることのできる人は他に誰もいない」という自由主義の主張は正しかった。
  • 人間は自らを自律的なシステムと見なし、ビッグ・ブラザーの命令ではなく、自分自身の内なる声に従うべき根拠をたっぷり持っていた。
21世紀の
テクノロジー
  • 外部のアルゴリズムが人間の内部に侵入し、私よりも私自身についてはるかによく知ることが可能になる。
  • 個人主義の信仰は崩れ、権威は個々の人間からネットワーク化されたアルゴリズムへと移る。

「定量化された自己(Quantified Self)」運動
  • 自己は数学的パターン以外の何者でもないと主張する。
  • ヘルスケア・アプリを使って自己管理。
  • 宗教まではいかないがもはやイデオロギー。
  • 汝自身を知りたかったら、 哲学や瞑想や精神分析に時間を無駄にしないで、 バイオメトリックデータを体系的に集めてあるごりずむに分析させ、 自分が何者でどうしたらいいかを教えてもらうべきだと主張する。
  • モットー:「数値を通しての自己認識」

  • アンジェリーナ・ジョリーは、乳癌への関心を高めるために自分のプライバシーを進んで犠牲にした。
  • 人類の健康を増進したいという願望のため、私たちの大半は、国家の官僚制と多国籍企業に自分の内奥へのアクセスを許すだろう。
  • 巨大な遺伝子データベースを最初に築いた企業が、顧客に最高の予測を提供することになり、市場を独占する。
  • 個人のプライバシーを顧みない中国が、遺伝子市場をやすやすと手に入れる。
  • 「人間は分割不能の個人である、個々の人間には自由意志があって、何が善で、何が美しく、何が人生の意味かをめいめいが判断する」、 という考え方を、どうしても捨てざるをえなくなる。
  • 人間はもう、「物語る自己」が創作する物語に導かれる自律的な存在ではなくなる。
  • 自由主義は「物語る自己」を神聖視する。
    • だから、投票所やスーパーマーケットや結婚市場で、その自己が投票するのを許す。
    • 何世紀もの間、自己よりも本人のことをよく知っているシステムは他になかった。
    • 「物語る自己」以上に本人のことをよく知るシステムがいったん手に入れば、「物語る自己」の手に権限を委ねたままにするのは無謀。
  • 民主的な選挙のような自由主義の習慣は時代遅れになる。
  • 自由主義は、システムが私自身よりも私のことをよく知るようになった日に崩壊する。
巫女から君主へ
  • 巫女 → 代理人 → 君主
    助言 → 代行 → 意思決定
  • アルゴリズムは、いったん全知の巫女として信頼されれば、代理人へ、最終的には君主へと進化する。
  • SiriやCortana同士が連絡を取り合い、決定を下す。
  • 「経験する自己」からの指示を却下し、「物語る自己」のために働く。

  • 21世紀のテクノロジーは、人間至上主義の革命を逆転させ、人間から権威を剥ぎ取り、アルゴリズムに権限を与える。
  • この流れは、コンピュータ科学よりも生物学の見識に基づく。
  • 生き物はアルゴリズムであると結論したのは生命科学だった。
不平等をアップグレードする
自由主義に対する
3つの脅威
人間が完全に価値を失う
個人としての権威を失い、外部のアルゴリズムに管理される
アップグレードされた人間が、少数の特権エリート階級となる

  • ほとんどの人はアップグレードされず、コンピュータアルゴリズムと新しい超人たちの両方に支配される劣等カーストとなる。
  • 身体的能力と認知的能力の本物の格差が生じる。
  • 医学の概念的大改革
    • 20世紀・・・病人を治す(平等主義の事業)
    • 21世紀・・・健康な人をアップグレード(エリート主義
    • 無用な貧しい人々の健康水準を向上させること、
      標準的な健康水準を維持すること
      は意味がない。
      少数の超人たちをアップグレードすることに専念する。

  • 飢餓・疫病・戦争の克服

    不死・至福・神性の獲得

    超人カーストの誕生
    無用者階級の誕生
    権限が人間からアルゴリズムへ移る

    自由主義は崩壊

    新しい宗教あるいはイデオロギーは?
第10章 意識の大海

  • 新しいテクノ宗教がアルゴリズムと遺伝子を通しての救済を約束して世界を征服する。
  • 神とは無縁。テクノロジーがすべて。

テクノ宗教の2つのタイプ テクノ人間至上主義
データ教

テクノ人間至上主義
  • 「進化論的な人間至上主義」のアップデート版の一変種。

進化論的な人間至上主義 テクノ人間至上主義
選抜育種や民族浄化によって超人を創造する。 遺伝子工学やナノテクノロジーやブレイン・コンピュータ・インターフェイスによって、平和的に超人を創造する。

認知革命 ← サピエンスのDNAにおける小さな変化
← サピエンスの脳におけるほんのわずかな配線の変更
第2の認知革命? ← テクノロジーによりるゲノムの小さな変更
← テクノロジーによる脳の配線の小さな変更

心のスペクトル
精神状態の
スペクトル
標準未満の精神状態
WEIRD (Western, educated, industrialized, rich and democratic)の精神状態
人間の精神状態
動物の精神状態
存在しうるすべての精神状態

  • 解明されていない精神状態(僧侶の精神状態など)
    • 思考の静寂や極度の鋭敏さや比類のない感受性
  • 今までは「標準未満の精神状態」を治すことに関心が向けられていた。
  • テクノロジーにより、健康な人の精神状態をアップグレードする方向へ。
恐れの匂いがする
宇宙がぶら下がっている釘
人間至上主義 内なるメッセージに耳を傾け、 自分の本物の声を突き止め、 困難をものともせずにその支持に従うことを求める。
テクノロジーの進歩 内なる声に耳を傾けたがらない。
その声を制御することを望む。

  • 多くの「内なる声」や「本物の願望」は科学的な不均衡と神経疾患の産物
  • 有害な内なる声に耳を傾ける代わりに、それらを黙らせてしまう。頭の中のうるさい雑音を消す。
  • 自分の意志をデザインしたりデザインし直したりできるようになった日には、もう私達は「本物の自己」をあらゆる意味と権威の究極の源泉と見なすことはできない。
  • 人間至上主義:人間の欲望だけがこの世界に意味を持たせる。
    ↑ 自分の欲望を選べるとしたら?デザインできるとしたら?
  • テクノ人間至上主義のジレンマ
    • テクノ人間至上主義は、人間の意志こそが最も重要なものだと考えているので、 その意志を制御したりデザインし直したりできるテクノロジーを開発させようとする。
    • そんなテクノロジーが開発できたとしても、そのテクノロジーを使って何をしたらいいのかわからない。
    • 神聖な人間も、ただのデザイナー製品になってしまうから。
    • 人間の意志と人間の経験が権威と意味の思考の厳選であると信じているかぎり、そのようなテクノロジーでは対処できない。
第11章 データ教
権力はみな、どこへ行ったのか?
  • 民主主義と独裁制も、競合する情報収集・分析メカニズム
    • 民主主義 = 分散処理
    • 独裁制 = 集中処理
  • 21世紀に再びデータ処理の条件が変化するにつれて、民主主義が衰退し、消滅さえするかもしれない。
  • データの量と速度が増し、データを効率的に処理できなくなり、選挙や政党や議会のような従来の制度は廃れるかも。
  • 今でもサイバースペースにおいては、民主的な政治プロセスは適用されていない。

  • 一般の有権者は、民主主義のメカニズムはもう自分たちに権限を与えてくれないと感じ始めている。
    • 権力がEUに移ってしまったと思っている → BREXIT
    • 権力が既成の体制が独占していると思っている → トランプ支持
歴史を要約すれば
  • 人類という種全体も単一のデータ処理システムとして解釈できる。人間はそのシステムのチップ
  • 歴史とは、以下の4つの方法を通してこのシステムの効率を高める過程。
プロセッサーのを増やす。 ○人口の多い都市のほうが、人口の少ない村よりも、演算能力が高い。
プロセッサーの種類を増やす。 ○システムのダイナミズムと想像力が増す。

○農民と聖職者と医師の会話は、3人の狩猟採集民の会話からは生まれないような斬新なアイデアを生む。
プロセッサー間の接続数を増やす。 ○プロセッサーの数や種類が多くても、互いに接続されていなければ意味がない。

○10都市を結ぶ交易ネットワークは、独立した10都市よりも、多くの革新をもたらす。
既存の接続に沿って動く自由を増やす。 ○プロセッサーが接続されていてもデータが流れなければ意味がない。

○10都市間に道を通しても、商人や旅人に好きなように移動することを許さなかったら、その道は役に立たない。

第1段階 認知革命 ○厖大な数のサピエンスを結びつけて単一のデータ処理ネットワークにすることが可能になった。
第2段階 農業革命 ○人間というプロセッサーの数が急増。
第3段階 書字と貨幣の発明
〜科学革命
○都市や王国を建設。
○異なる都市や王国の間の結びつきも強まる。
○人類は全世界を網羅するような単一のネットワークの構築を意識的に夢見るようになった。
第4段階 1492年(コロンブスのアメリカ大陸時発見)ごろ〜 ○夢が実現し始める。
○初めは文化的偏見や厳しい検閲があったが、自由市場や科学界、法の支配、民主主義の普及などが相まって、障壁を消滅させた。

  • 民主主義と自由市場が勝利したのは、それが「善い」からではなく、グローバルなデータ処理システムを向上させたから。
  • 人類は過去7万年間に、まず拡散し、その後別々の集団に分かれ、最後に再び一体化した。
  • 人類が単一のデータ処理システムだとしたら、何を出力するのか?

    データ至上主義者の答え:
    • 「すべてのモノのインターネット」と呼ばれる、新しい、さらに効率的なデータ処理システムの創造。
    • この任務が達成されたなら、ホモ・サピエンスは消滅する。
情報は自由になりたがっている
  • データ至上主義が信奉する至高の価値 = 「情報の流れ」
  • 人間の経験は神聖ではない。ホモ・サピエンスは、森羅万象の頂点でもない。いずれ登場するホモ・デウスの前身でもない。
  • 人間は「すべてのモノのインターネット」を創造するための単なる道具にすぎない。
  • ホモ・サピエンスは時代遅れのアルゴリズム
    • 人間がニワトリより優れているのは、人間のほうが、多くのデータを取り込み、より良いアルゴリズムを利用して処理するから。
      (i.e. 人間はより深い情動とより高い知的能力を持っているから(情動や知能はたんなるアルゴリズム))

データ至上主義
の戒律
ますます多くの媒体と結びつき、ますます多くの情報を生み出し、消費することによって、データフローを最大化せよ。
接続されることを望まない異教徒も含め、すべてをデータフローのシステムにつなげ。「すべて」は人間に限らない。

  • データ至上主義は、「情報の自由」を何にも優る善として擁護する。

  • 1789年(フランス革命)以降、新しい価値を生み出した動きはデータ至上主義が初めて。
    • 神への服従、国家への忠誠

      ↓ 人間至上主義の革命(18世紀)

      人間の自由、平等、友愛

      ↓ データ至上主義

      情報の自由
記録し、アップロードし、シェアしよう!
自由至上主義 市場の見えざる手
データ至上主義 データフローの見えざる手

人間至上主義 経験は私たちの中で起こっていて、私たちは起こることすべての意味を自分の中に見つけなければならず、 それによって森羅万象に意味を持たせなければならない。
データ至上主義 経験は共有されなければ無価値で、私たちは自分の中に意味を見出す必要はない、いや、じつは見出せないと信じている。
私たちはただ、自らの経験を記録し、データフローにつなげさえすればいい。アルゴリズムがそれの意味を見出して、私たちにどうするべきか教えてくれる。

人間至上主義 ○旅先で「自分は何を感じているか」自問する。
○自分しか読まない日記を書く。
データ至上主義 ○写真を撮ってSNSにアップロード。

データ至上主義の
スローガン
何かを経験したら、記録しよう。
何かを記録したら、アップロードしよう。
何かをアップロードしたら、シェアしよう。

  • 人間を他の動物よりも優れた存在にしているものは何か?
    ↓ データ至上主義の答え
    • 人間は、自分の経験や詩やブログを書いてネットに投稿し、それによってグローバルなデータ処理システムを豊かにできる。 だからこそ人間のデータは価値を持つ。
汝自身を知れ
人間至上主義 「神は人間の想像力の産物だ。」
データ至上主義 「そうです。神は人間の想像力の産物ですが、人間の想像力そのものは、生化学的なアルゴリズムの産物にすぎません。」

  • 何百年にもわたって、感情は世界で最高のアルゴリズムだった。
  • 21世紀の今、私たちはかつてない演算能力と巨大なデータベースを利用する優れたアルゴリズムを開発している。
  • 自分の感情に耳を傾けるのをやめて、代わりにこうした外部のアルゴリズムに耳を傾け始めるべきだ。
データフローの中の小波
  • 「すべてのモノのインターネット」がうまく軌道に乗った暁には、 人間はその構築者からチップへ、さらにはデータへと落ちぶれ、 ついには急流に呑まれた土塊のように、データの奔流に溶けて消えかねない。

  1. 科学は1つの包括的な教義に収斂しつつある。それは、生き物はアルゴリズムであり、生命はデータ処理であるという教義だ。
  2. 知能は意識から分離しつつある。
  3. 意識は持たないものの高度な知能を備えたアルゴリズムが間もなく、私たちが自分自身を知るよりも私たちのことを知るようになるかもしれない。