- 【巻頭解説】「現実」対「虚構」~MMTの歴史的意義
- 【序論】現代貨幣理論の基礎
- 【第1章】マクロ会計の基礎~1つの部門の赤字は、別の部門の黒字に等しい
- 【第2章】自国通貨の発行者による支出~租税が貨幣を動かす
- 【第3章】国内の貨幣制度~銀行と中央銀行
- 【第4章】自国通貨を発行する国における財政オペレーション~政府赤字が非政府部門の貯蓄を創造する
- 【第5章】主権国家の租税政策~「悪」に課税せよ、「善」ではなく
- 【第6章】現代貨幣理論と為替相場制度の選択~失敗するように設計されたシステム「ユーロ」
- 【第7章】主権通貨の金融政策と財政政策~政府は何をすべきか?
- 【第8章】「完全雇用と物価安定」のための政策~「就業保証プログラム」という土台
- 【第9章】インフレと主権通貨~「紙幣印刷」がハイパーインフレを引き起こすわけではない
- 【第10章】結論:主権通貨のための現代貨幣理論~MMTの文化的遺伝子
- 【巻末解説】MMTの命題は「異端」ではなく、常識である
【巻頭解説】「現実」対「虚構」~MMTの歴史的意義
商品貨幣論 | 交換の際に皆が受け取り続ける限り、紙幣には価値があり、貨幣としての役割を果たす。 |
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MMTの貨幣論 | 人々が単なる紙切れに通貨としての価値を見出すのは、その紙切れで税金が払えるから。 |
- 政府は、債務の計算尺度として通貨単位を決定する。
- 政府は、国民に対して、その通貨単位で計算された納税義務を課す。
- 政府は、その通貨単位で価値を表示した通貨を発行し、租税の支払手段として定める。
- これにより、通貨には、納税義務の解消手段としての需要が生じる。
- こうして人々は、通貨に額面通りの価値を認めるようになり、その通貨を、民間取引の支払いや貯蔵などの手段としても利用するようになる。
- こうして通貨が流通するようになる。
主流派経済学 | ◎金融政策 | △財政政策 |
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MMT | ◎財政政策 | ○金融政策 |
【序論】現代貨幣理論の基礎
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政府の財政は、家計や企業のそれとはまったく別物。
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政府は、支出や貸出を行うことで通貨を創造する。
= 支出や貸出を行うために租税収入は不要。
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納税者が通貨を使って租税を支払うのであれば、
彼らが租税を支払えるようにするため、
まず政府が支出しなければならない。
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政府は、支出や貸出を行うことで通貨を創造する。
- 主権を有する政府が、自らの通貨について支払い不能になることはありえない。
- 政府は支出するために自らの通貨を「借りる」必要がない。
-
主権を有する政府による国債の売却は、金融政策オペレーションと機能上同等。
- 政府による国債売却 ≠ 借入れ
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租税制度の主な目的は通貨を「動かす」ことである。
- × 政府の支出の「財源」を供給すること。
- ○ 政府自身の通貨に対する需要を生み出すことで、政府がそれを支払手段として使えるようにすること。
【第1章】マクロ会計の基礎~1つの部門の赤字は、別の部門の黒字に等しい
国内民間収支 + 国内政府収支 + 海外収支 = 0 |
- すべての部門が同時に財政黒字を計上して純金融資産を蓄積することは不可能。
フロー(黒字/赤字)とストック(資産/債務)の関係
- 個々の支出はたいてい所得によって決定される。
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赤字が金融資産を生み出す。
- 誰かが赤字支出をしなければ、金融資産を蓄積できない。
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総支出が総所得を生み出す。
- 個々のレベルとマクロのレベルとでは逆。
- 1つの部門の赤字が他の部門の黒字を生み出す。
【恒等式】S = (G - T) + I + NX
S | 民間部門の貯蓄 |
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G | 財やサービスに対する政府の支出 |
T | 租税 |
G-T | 財政赤字 |
I | 民間国内投資 |
NX | 純輸出 |
税収は経済動向に依存
-
個々の家計では所得が支出を決めるが、
経済全体では支出が所得を決める。
景気が後退 | ⇒自動的⇒ |
財政赤字が増加 (税収が減るから) |
政府 | 支出 | 裁量的 |
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収入 | 経済動向に依存 |
米国の長期的な平均
民間収支 | + | 財政収支 | + | 海外収支 | = | 0 |
+2% | -5% | +3% |
- 海外収支 = 海外部門の米国に対する黒字 = 米国の経常収支の赤字
MMTの関心
MMTの関心 | 「貨幣」=「金融の会計」 |
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すべての赤字が、それと等しい誰かの黒字によって相殺され、
すべての債務は金融資産として誰かによって保有される。 - 我々は実物資産なら蓄積できるが、 金融資産・夫妻は差し引きゼロにになる。
- 国内民間部門収支 + 政府部門収支 + 海外部門収支 = 0
- (貯蓄-投資) + (租税-政府購入) + (輸入-輸出)= 0
- GDP = 消費 + 投資 +政府購入 + 純輸出
【第2章】自国通貨の発行者による支出~租税が貨幣を動かす
通貨を裏付けているもの
- × 金属
- × 外貨
- × 支払手段制定法(legal tender laws)
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× 間抜け比べ/ババ抜き貨幣理論
- (私が国家通貨を受け取るのは、他の人が受け取ることが分かっているからだ)
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○ 納税義務
- 政府は租税義務を課し、租税の支払いには政府自ら発行した通貨を指定する。
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通貨の利用法 = 租税の支払い
└ 他の利用法(貯蓄、民間債務の支払い、買い物、…)は二次的なもの
通貨発行者の側から見た貨幣制度の目的
政府部門に資源を動かすこと └ 国民が、通貨を手に入れようと、労働力・資源・生産物を政府に売却するように仕向ける |
- これのために、通貨に対する需要を創造する = 租税
- 租税の目的は、「歳入を増やして政府が支出できるようにするため」ではない。
税率を引き上げる目的
- 歳入ではなく、通貨に対する需要を増やすこと。
- 政府は支出の「財源」が足りなくなることはない。
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「通貨に対する需要」が足りなくなることはあり得る。
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「通貨に対する需要」:
通貨を手に入れるために、 労働力・資源・生産物を政府にもっと売ろうという人々の意欲。
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「通貨に対する需要」:
【第3章】国内の貨幣制度~銀行と中央銀行
【第4章】自国通貨を発行する国における財政オペレーション~政府赤字が非政府部門の貯蓄を創造する
【第5章】主権国家の租税政策~「悪」に課税せよ、「善」ではなく
【第6章】現代貨幣理論と為替相場制度の選択~失敗するように設計されたシステム「ユーロ」
【第7章】主権通貨の金融政策と財政政策~政府は何をすべきか?
【第8章】「完全雇用と物価安定」のための政策~「就業保証プログラム」という土台
【第9章】インフレと主権通貨~「紙幣印刷」がハイパーインフレを引き起こすわけではない
【第10章】結論:主権通貨のための現代貨幣理論~MMTの文化的遺伝子
【巻末解説】MMTの命題は「異端」ではなく、常識である