- プロローグ 燃えるプラットフォーム
- 第1章 プラットフォームが世界を食い尽くす
- 第2章 ハイエク対コンピューター
- 第3章 限界費用ゼロの会社
- 第4章 現代の独占
- 第5章 ビリオンダラー企業をデザインする
- 第6章 見える手
- 第7章 ネットワークに仕事を任せよう
- 第8章 なぜプラットフォームは失敗するのか、どうすれば失敗を避けられるのか
- 結 論 次のビッグチャンスを見つける方法
プロローグ 燃えるプラットフォーム
- スマートフォン戦争は特殊なものではなく、あらゆる業界に警笛を鳴らす出来事。
- 21世紀初めのモバイル技術の普及とともに始まったシフト。まだ始まったばかり。
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プラットフォームは新しいビジネスモデル
- 相互に依存する複数のグループを結びつけ、すべてのグループが恩恵を得られるようにすうビジネス。
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プラットフォームはエコシステムを作るが、
プロダクトはエコシステムを作れない。 - プラットフォームとエコシステムをめぐる戦争では、しばしば勝者がすべてを支配する。
第1章 プラットフォームが世界を食い尽くす
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オープンなインターネット環境など神話に過ぎない。
現代のインターネットは、ほぼ完全に、プラットフォームに支配されている。
直線的なビジネスモデル
- 商品またはサービスを作り、それを顧客に販売する。
- 価値はサプライチェーンを通じて一方向に直線的に流れる。
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サプライチェーン
- 企業から顧客にモノやサービスを動かす活動や資源を体系化した高度なシステム。
- 20世紀の偉大なビジネス・イノベーションの多くは、サプライチェーンの改善および効率化と関係していた。
プラットフォーム・ビジネスモデル
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21世紀には、サプライチェーンは企業価値の中核をなさなくなった。
ネットワークが企業と個人を結びつけ、お互いの価値交換を可能にしている。 - 複数のユーザーグループや、消費者とプロデューサーの間での価値交換を円滑化するビジネスモデル。
取引費用
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プラットフォームは取引費用を大幅に低下させる。
探すコストと
情報コスト交渉コスト 執行コスト 参加者全員に、適切な行動を促すために発生する費用。 - プラットフォームは、ユーザーが取引をするだけでなく、創造することも奨励するように設計されている。
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すべてのプラットフォームは2つのことをする:
取引費用を下げ、補完的イノベーションを可能にする。
取引を「製造する」
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プラットフォームは、つながりを作り、取引を「製造する」ことで価値を生み出す。
- GMは自動車を作るが、ウーバーはドライバーと乗客の取引を作る。
- プラットフォームの中核をなす取引 = コア取引
- プラットフォーム自身の価値は、ユーザーがコア取引を繰り返して、価値を生みだし、交換することによって高まる。
コア機能
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コア取引を円滑にするための4つのコア機能
オーディエンス構築 マッチメーキング 中核的ツールとサービスの提供 ルールと基準の設定
交換型とメーカー型
交換型 プラットフォーム |
【マッチング意思】1:1
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メーカー型 プラットフォーム |
【マッチング意思】1:無限大
|
独自のセレブ
- パワフルなノードの役割を果たす「スター」を有機的に作る。
- 独自のセレブを生み出せるようになったら「臨界」に達した証拠。
第2章 ハイエク対コンピューター
テクノロジー ≠ 単なるツール
- テクノロジーを単なるツールと呼ぶのは、それが世界に与える影響をあまりにも軽視している。 テクノロジーは、単なる目的達成手段ではない。私たちの現実と経済を形作っているものだ。
市場経済と計画経済
- 誰もが完全な情報を持っているなら、 市場経済と計画経済の間に効率性の差は生じない。
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「ローカルな知識」(※)を集約することができないため、計画経済はうまくいかない。
※ 特定の時間の、特定の場所における状態に関する知識 -
価格システム
- 個々のプロデューサーは、一握りの指標(価格)の動きを見さえすれば、経済全体で起きていることを把握できる。
- 市場は、個人が持つ情報(ローカルな知識)の合計を価格という形で示す。
企業本質論
- 市場が経済活動を効率的に調整できるなら、なぜ企業が存在するのか?
- → 市場に参加するにはコストがかかる。=取引費用
- → 取引費用を最小限に抑えるために企業が存在する。
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企業本質論 by ロナルド・コース
- 取引費用の概念に基づき、市場経済においては取引費用が組織の形を決める。
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【企業が組織される理由】
分権化された市場取引により経済活動を調整することから生じる 取引費用と情報の欠乏を最小限に抑えるために組織される。 - 企業は、市場でやるよりも効率的に処理できる活動は社内化し、 それ以外の活動は外部化する。
- 企業は事実上、巨大な市場経済の中に存在する小さな計画経済である。
直線的企業の礎
- マイケル・ポーターの「価値連鎖」(バリュー・チェーン)と、 ブルース・ヘンダーソンの「規模の経済性」が 過去30年間の経営戦略の中核をなし、 20世紀末の垂直統合された大規模組織の戦略的基礎をなした。
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【価値連鎖(バリュー・チェーン)】
顧客に価値が届けられるまでに企業間で付加される価値のつながり。
価値連鎖分析の目的は、価値連鎖における結びつきの最適な組み合わせを実現して、最小限のコストで最大の価値を生み出すこと。 -
【規模の経済性】
「たくさん作るほど、うまく作れるようになる。」
生産効率は、生産量を2倍に増やすたびに25%上昇する。
直線的企業の限界
- しかし、企業組織があまりに大きくなると、正しい経営判断を下すのに必要な情報すべてを集め、それに基づき対応するのが難しくなる。
- 一定のラインを超えると、成長は、その価値を上回る費用を生み出す。
4つの重要な変化が経営戦略の世界を根本からひっくり返した
- ↓ 処理コストが下がれば、取引費用も下がる
- ↓ 取引費用は、「価値連鎖をまとめるボンド」。
- ↓ 処理コストが下がれば、ボンドが剥がれ、価値連鎖が崩壊する。
- ↓ コンピュータが処理コストを下げる。
- ↓ 処理コストが下がっても、処理対象のデータを集めることができなければ意味がない。
- ↓ インターネットが解決。
- ↓ モバイルテクノロジーが、インターネットにとってのロケット燃料に。
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4つの重要な変化が経営戦略の世界を根本からひっくり返した。
処理応力の民主化 安く、使いやすいプロフェッショナルツール。
個人は、まったく新しいレベルで価値の作り手になれるように。
通信費の下落 密なコミュニケーション。会ったことのない人とも。
コラボレーション。
ユビキタスなコネクティビティとセンサーの普及 インターネットが生活の中心に入り込む。
データ分析の規模に関する収穫逓増 ビッグデータを理解でき、それに基づく行動をリアルタイムにできるように。
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突然、現代の経済で、価値が作られる場所に重大なシフトが起きた。
- 消費者が価値を作り、シェアするようになった。
- ウィキペディアが示すように、緩やかに組織された個人のコミュニティは、あらゆる企業に取って代わる可能性がある。
- 組織化されていない個人が自発的に参加する分散型ネットワーク。
- サプライチェーンや価値連鎖 → ネットワークのエコシステム
- プラットフォーム企業のコア活動は、ネットワークの成長と管理を中心とする。
- プラットフォームが作っているのは、中央で計画された市場。
20世紀の経営戦略経済理論の根底にあった概念は「不変の法則」なんかじゃない
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コネクテッド革命は、
ブルース・ヘンダーソンの規模の経済性と、
マイケル・ポーターの価値連鎖の概念
を根本から吹き飛ばした。
「計画経済の立案者は大規模な経済活動を調整できない」 というハイエクの主張を無効にした。
20世紀の経営戦略経済理論の根底にあった概念は、不変の法則ではなく、 テクノロジーの進歩とともに時代遅れになった思い込み に基づいていた。
社会主義のユートピアが実現
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現在もっとも価値が高い企業
- ハイエクがかつて不可能とみなしたもの。
- 分散化された大規模な経済の隅々で起きていることをリアルタイムに把握し、 対応できる中央集権化された組織。
- 社会主義のユートピア
市場経済と計画経済の振り子
- 振り子は、分散化から、計画経済を生み出す大組織(つまりプラットフォーム)へと大きく振れつつある。
第3章 限界費用ゼロの会社
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ソフトウェアは、それだけならコモディティにすぎない。
- いずれその機能が誰かにコピーされ、改良され、もっと安く、もっとスピードを高められるのを止められない。
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歯科医院の管理ソフト物語
〜ソフトウェア・ビジネスの防衛性に関する現代の寓話- 歯医者での待ち時間を削減するための管理ソフト「デンタルソフト」
- モバイルアプリが含まれ、視界が予約などを遠隔管理できる「デント・アイオ」
- オープンソース・ソフトウェア・プロジェクトの「デントオプト」
- クラウド版「デントハブ」
- → ソフトウェアの防衛性は、 「ユーザー、取引、またはデータ のネットワーク」 によりもたらされる。
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ネットワーク効果
- ユーザーの取った行動が、別のユーザーが得られる価値に直接的なインパクトを与える。
- ネットワーク効果は、経済的に最強の堀。
- 25年以内に、プラットフォーム企業はS&P500の純利益の50%を占める。
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イノベーションはすべて、直線的なビジネスの生産コストを削減することに重点を置いていた。
- 組み立てライン
- チェーン店システム
- フランチャイズ
- ジャストインタイム生産方式
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成長方法
直線的な企業 プラットフォーム企業 ○人員や物理的資産を追加することで成長する。
(スケール化がしにくい)
○コネクションを円滑化することだけに専念して、生産の限界費用をなくす。
(限界費用ゼロの情報ビジネス)
○理論的には市場そのものと同規模まで拡大できる。ハイアットが成長のために、新しいホテルを建設する。 Airbnbはコストゼロで、宿泊施設を増やせる。 ウォルマート社員:200万人以上 アリババ社員:3.5万人
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小規模な市場では直線的ビジネスがうまくいく。
プラットフォーム・ビジネスが本当に恩恵を得られるのは、スケールが極めて多きとき。
第4章 現代の独占
支配過程の違い
- 生産手段を所有することによってではなく、ユーザーを結びつける手段によって市場支配力を構築する。
- 所有ではなく、ユーザーの参加によって成功を収める。
- 現代の独占企業を作り出したのは、私たち。
- プラットフォーム企業はユーザーから幅広い支持を得る。昔の独占企業ではありえない。
自然独占
- 市場原理が破綻した結果ではなく、市場が正しく作用した結果。
- 競争は多いほうがいいという伝統的な考え方は、プラットフォームの市場には当てはまらない。
- 業界そのものを大きくする。
- Airbnbはホテル業界を犠牲にして成長してきたのではなく、まったく新しい経済活動のソースを作り出して成長してきた。
競争的な独占
- 昔の独占企業と違って、激しい競争にさらされている。
- ユーザーは簡単にライバルの傘下に移る可能性がある。
- 現代の独占企業は長生きできそうにない。
- 「ネットワーク」は最強かつ最も防衛性の高い「堀」を作るが、参入障壁は作らない。
独占に対する政府の対処
- 現代の独占企業は激しい競争にさらされており、昔の独占企業とは違うことを認識すべき。長い目で状況で見守るべき。
- 重要なのは、プラットフォームが生み出している社会的・経済的新保の果実を消費者が得られるようにすること。
第5章 ビリオンダラー企業をデザインする
- 価値連鎖ではなく、価値エコシステム。
コア取引の4つの基本的なアクション
コア取引 | 創造する | |
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結びつける | ||
消費する | ||
対価を支払う | 金銭だけでなく、点数・レビューコメント・視聴回数なども。 |
方式
- シングル・オプトイン方式、ダブル・オプトイン方式
- フォロー方式
プラットフォームの始め方
- シンプルな1つのコア取引から始め、 複数種類のプラットフォームを持つ「プラットフォーム・コングロマリット」に進化するのが 成功への典型的な道のり。
第6章 見える手
- 最高のプラットフォームは、 アルゴリズム、 運営サイドによる編集(キュレーション)、 ユーザー評価の バランスのとれたルールを執行し、ユーザーの行動を監視する。
- プラットフォームの設計は、工業的な工程の設計というより、 社会学的な考察と継続的な行動設計に近い。
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ユーザーが変化の担い手になることも多い。ユーザー手動のイノベーション。
- ユーザー名に「@」、ハッシュタグ
- 伝統的なソフトウェア企業のように、リリース時にフル機能を持たせようとするアプローチは、理にかなっていない。
- 特注のソフトウェアがなくても始められる。 何がうまくいくいき、何がうまくいかないかが大まかに分かってから、フル機能かつスケール可能なソフトウェアの構築を考えればいい。
第7章 ネットワークに仕事を任せよう
チャットルーレットの法則
- 十分な規模に達したネットワークは、放置しておくと自然にユーザーと使用法の質が低下する。
- 自由放任は変態の増加を招く。
ネットワーク効果
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伝統的なネットワーク効果の理解は間違っている。
- メトカーフの法則
- ネットワークの価値は、接続されているユーザー数の2乗に比例する。
- メトカーフの法則
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ほとんどのネットワーク効果はローカルであって、グローバルではない。
- 世界のウーバードライバー数が100万人増えても、あなたの町のドラバーでなければ、あなたにとってのウーバーの価値は変わらない。
- プラットフォームは、潜在的なつながりではなく、 取引によって価値を生み出す。
- 小さいけれど密度が高く、活発なネットワークのほうが、大きいけれど散漫なネットワークよりも、はるかに価値が高くて有用。
- ウーバーなどのサービス・マーケットプレースの多くは、まず1つの街(たいていニューヨークかサンフランシスコ)でサービスを開始する。
- 逆ネットワーク効果もある。悪質なユーザーは良質なユーザーを追い出すことができる。
- 先発優位の重要性はほとんどない。
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ネットワークの成長はランダムではなく、経路依存性がある
- どんなユーザーが入ってくるかは、既存のユーザーのタイプと行動に左右される。
ユーザーは平等ではない
- 一部のユーザーは他のユーザーよりも価値が高い。コンテンツ・プラットフォームでは明白。
- 立ち上げ当初は価値の高いユーザーグループだけに参加を限定する。
ネットワークの質を高める 〜ネットワーク効果のはしご
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プラットフォームはまず、ひたすらユーザーを呼び込んで、
ユーザー間につながりを作らなくてはいけない。
だが、こうしたコネクションの潜在的価値を実現するには、 コミュニケーションを通じてユーザーを動かさなくてはいけない。
ひとたびネットワークが確立され、価値の交換が始まると、 ユーザーに権限を与えることでネットワーク効果を強化する。
次に、もっと恩恵を得たいというユーザーの意識を利用して、 キュレーションとコレボレーションを促してネットワークの質を高め、 新しいタイプの価値を作る。
そして最後に、ユーザーにネットワークの統治を任せて、コミュニティに対する 当事者意識を持たせる。
このはしごの各ステップを上ることで、プラットフォームはネットワーク効果を強化し、 より質の高いネットワークを構築できる。
第8章 なぜプラットフォームは失敗するのか、どうすれば失敗を避けられるのか
- 伝統的な直線的スタートアップは、とりあえず1つの顧客グループの支持を得ればいいが、 プラットフォームは少なくとも2つ、 すなわち消費者とプロデューサーというタイプの異なる顧客グループの支持を 勝ち取らなければならない。
参加価値を高める3つの方法
- 金銭的な補助
- 機能による補助
- ユーザー・シーケンシング(ユーザーの順位付け)
結論 次のビッグチャンスを見つける方法
- 大型プラットフォームの周囲に派生的ビジネスが生まれる。
- 20世紀のほとんどの間は、直線的ビジネスが支配的だったため、多くの法律はこうしたビジネスを規定することを想定されている。 プラットフォームは、法的なグレーエリアで活動することになる場合が多い。
プラットフォーム・ビジネスの機械を見つける方法
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取引コストを減らしてボトルネックを取り除ける技術を探す
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複雑もしくは見過ごされているネットワークを探す
- ゼロからネットワークを作ろうとしない。既存のネットワークや活動を利用する。
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大規模で分断された未活用の資源を探す
- 未活用の資源:空き家 → Airbnb
- 未活用の資源:アプリ → iOSプラットフォーム (供給元がまだ存在しなかった)
- 取引コストを下げたり、ボトルネックを取り除くテクノロジー
- 見えないか需要がみ満たされていないネットワーク
- バラバラに存在する大量の未活用の資源
医療業界
- 大量の無駄と非効率が存在する。
IoT
- IoTの価値の大部分は、「モノ」のメーカーが作り出すものでも、手にするものでもない。 価値は、これらのモノをすべて結びつけるプラットフォームにある。
ブロックチェーン
- デジタルメッセージをある人から別の人に移す新しい方法。 たとえ相手を信頼していない当事者同士であっても、 あるいは相手が知らない人であっても、そのメッセージの真正性は信頼することができる。
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ブロックチェーンはプラットフォームのネットワークデータをオープンにして、
ほかのネットワークに持ち出すことを可能にするから、現代の支配的なプラットフォーム企業は破滅する。
↑
言い過ぎ -
自分が送るメッセージが、意図した相手に秘密のまま届くことを信頼できる。
しかし、そもそもその相手を信頼すべきかどうかは教えてくれない。 - ブロックチェーンは、プラットフォームのごく一部にすぎない。
- ブロックチェーン技術が成長すれば、プラットフォームによる独占は終止符を打たれるどころか、 むしろ多くの新しいプラットフォーム企業が生まれる。