- 君は沸騰都市を見たか?
- 内側から見た深センの実力
- ドローン王 DJIの深層
- 深セン・珠三角(珠江デルタ)はドローン企業のゆりかごだ
- 東莞は第2の深センになるか?
- 「創新」(イノベーション)都市への大転換
- ある金融マンの経験的深セン発展論
- 深センに根付くメイカー文化
君は沸騰都市を見たか?
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深圳が変貌したのは1980年。
市場経済の段階的な導入を進める改革開放路線(1978年~)の下、 経済特区の1つに指定された。 -
改革開放(1978年~)
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鄧小平の指導体制の下で、1978年12月に開催された中国共産党第十一期中央委員会第三回全体会議で提出、その後開始された中国国内体制の改革および対外開放政策。
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経済特区
経済特区
(投資の受け皿)投資元 広東省の深圳(シンセン) 香港
└西側経済圏からモノ・ヒト・カネを受け入れる中国の「窓」だった。広東省の珠海(シュカイ) マカオ 広東省の汕頭(シャントウ) 東南アジア 福建省の廈門(アモイ) 海南省
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- 深圳は、安モノを生産する街だった。それがしだいに、モノを安く作れる街になった。そして今、モノづくりをするには世界で最高の場所になった」
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深圳では100キロメートル圏内に
製品設計、部品調達、組立生産、品質検査
などのサプライチェーンにかかわる企業集中し、必要な物資は3時間以内でそろう。
経済特区時代から連綿と、日本や米国、台湾などの電子関連企業が集積してきたため。 - 世界第3位のコンテナ港と空港を市内に抱え、3日以内で世界の9割以上の都市に製品を届けられる。
- イテレーション(短期間の開発サイクルの繰り返し)が起こりやすくなっている。
- 有力な国有企業がなかったから、「創業を促進し、ハイテク分野への投資を促す戦略」をスムーズに進められた。
内側から見た深センの実力
- 部品レベルでの中国のイノベーションの進展。
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【半導体・電子部品】
- 数年前までは欧米の製品が中心。
- 2014年頃から台湾製が増える。
- そこに中国製も加わり、現在は中国製のデファクトスタンダードともいえる半導体企業が出現している。
- 「芯」=「半導体」
深圳芯智汇科技有限公司
(X-Powers Technology)○ is a fabless design company dedicated to power management applications and other smart analog IC designs.
○電源制御用半導体のファブレスメーカー。
○2010年に鴻海のサプライヤーに選ばれる。
○2015年に中央政府の半導体産業振興プロジェクト「中国芯」から、「知的財産を持ち潜在的な競争力を有する半導体企業」として賞を受ける。
○現在は、地場だけでなく、台湾や米国の大手PCメーカーにも採用される。
楽鑫信息科技
(Espressif Systems)○ is a world-leading Internet-of-Things company.
○低電力消費型の通信半導体のファブレスメーカー。
○2014年にWi-Fi用の半導体モジュールが国内外でヒット。
○2016年に米調査会社ガートナーから「IoT産業における最もクールな企業」の1つに選ばれる。
○省電力通信半導体では世界的なデファクトスタンダードとなりつつある。 - 深センの巨大な電子生態系では、膨大な需要を背景とした「量」が日々「質」に転化していく。
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IoT市場はピラミッド構造。
頂点は、集まったデータを人工知能などで処理するコンピューティングの層。
ここには米グーグルやアップルなど巨大なデータセンターとアルゴリズム技術を持つ企業が属し、限られたプレーヤーが高い利益率を誇っている。
一方、底辺を支えるのが生データを収集する半導体や電子部品。
両者の間は通信インフラによってつながれている。
ドローン王 DJIの深層
- 創業者:エリック・パン氏
- スピード感と多様な方向性。
ホビー・ドローンの強化 |
○ファントム。 ○進化のスピードが他社を圧倒。 ○DJIのコントローラーは自社製品に搭載されているほか、ブラックボックス化した形で外販しており、他社のドローンにも数多く搭載されている。 ○このコントローラーを通じて、DJIは全世界から大量のフライトデータを収集し、製品を改良している。 |
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産業の川上への展開 |
○半導体を設計。 ○画像認識で世界最先端のファブレス半導体メーカー「モビディウス」と衝突回避機能を共同研究。 ○カメラなどの光学分野にも意欲的。老舗カメラメーカー「ハッセルブラッド」を買収。 ○ニコン、ソニー、キャノンが集まる品川に研究開発拠点を開設。 |
産業の川下への発信力 |
○深セン、ソウル、上海、香港に凱旋点をオープン。 ○洗練された企業イメージを構築。 ○SDKを公開 ○農薬散布業者と農家をマッチングさせるサービスを展開。 |
空撮以外のドローン市場への展開 |
○農業用ドローン「アグラス」。 AGRAS MG-1, DJI ○メガソーラー、インフラ設備、建設現場の点検などに「インスパイア」「マトリス」。 |
ドローン・エコシステムの形成 |
○人材育成、啓蒙活動、法整備、国内外での技術標準化。 ○中国の大学生のロボット大会「ロボマスターズ」に協賛。 ○「ドローン界のアップル」。 ・機能美を意識した製品デザイン ・ミニマリズムを基調とした広告 ・SDKの提供を含む垂直統合化 |
深セン・珠三角(珠江デルタ)はドローン企業のゆりかごだ
DJI | 民間用途での世界展開を優先するため、あえて軍事・警察用途の製品開発は行なっていない。 |
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AEE (一電科技) |
○公安・警察向けのドローンを展開。 ○中国でDJIに次ぐ2番手。 j ○自動巡視、スポットライト、拡声器、飛行しながらの有線充電。 |
MMC (科比特科技) |
○過酷な現場、消防現場やインフラ設備の点検。 |
Ehang (広州億航智能技術) |
○一人乗りドローン。 ○ドバイでドローン・タクシーの試験運用。 |
Xエアクラフト (広州極飛電子科技) |
○農薬散布。 |
東莞は第2の深センになるか?
「創新」(イノベーション)都市への大転換
- 中国の家電・エレクトロニクス産業は、78年末に始まった改革開放政策の下で急速に発展した。
- 【既存の中国企業】 グローバル市場に挑戦する際には中国と似た新興国の市場にまず進出する傾向。
- 【最近の中国企業】 これまでにない製品を武器に、創業当初から先進国市場へ積極展開。
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【深センで急成長するスタートアップ】
Seeed
(シード)IoTデバイスやウエアラブル端末などの製品開発を支援する各種モジュールのメーカー LeMaker
(楽美客科技)小型コンピュータ NXROBO
(創想未来機器人)家庭用ロボット -
【スタートアップが続々と生まれるワケ】
充実した
サプライチェーン起業家のアイデアを
実現するための
投資の増加スタートアップを
支援するサービス
の充実○クラウドファンディング
○3Dプリンタ
○オープンソースのソフトウエア
○クラウドコンピューティング
○シェアオフィス
○ものづくりスペースの共有 ←Seed社
中国政府の政策 ○2015年に
・「大衆創業」(大衆の創業)
・「万衆創新」(万人のイノベーション)」
を目指す「双創」政策を打ち出す。
└スタートアップ・エコシステムの充実を図る。
ある金融マンの経験的深セン発展論
- メタマテリアルや遺伝子工学などの新分野で、国内外から最先端分野の高級人材を呼び集める政策、通称「孔雀計画」が進んでいる。
深センに根付くメイカー文化
- 深圳の成長は、米国で起こったメイカームーブメントと表裏一体。
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メイカームーブメントとは従来の開発・製造とは違い、個人的な欲求や動機に基づいてものづくりを行うホビイストが、大企業の製品と同様に世に流通しうる製品を生み出す一連の動きを指す。
製造業を指すメーカーとは異なる新しい概念で、新しい形のものづくりプレーヤーを「メイカー」と表記する。 - 「ものづくりの民主化」
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DIY愛好家にとって深圳がハリウッドであるのは、メイカーを支援するユニークなベンチャー企業Seeedと、その創業者であるエリック・パン氏の存在が大きい。
中国経済の構造変化を受けて活発化した産業振興の動きと、米国発のメイカームーブメントをつなげたのがパン氏。
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世界初のハードウエアアクセラレータとして設立されたHAX。
- アクセラレータとは、アイデアや製品のプロトタイプはあるがビジネスには至っていない起業家をサポートし、ベンチャー企業にするサービス。
- アクセラレータの草分けであるYコンビネータからはエアビーアンドビーやドロップボックスのような著名企業が生まれている。
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いま深圳には3つの機能が根付いている。
- Seeedのように間接的に世界のホビイストたちを支えるサービス
- HAXのような、アイデアを最速で市場に送り出したい人のためのラボや製造パートナー
- 柴火のようにメイカー文化を発信していく活動