- 第1部 簿記と会社の誕生 3枚の絵画
- 第1章 15世紀イタリア 銀行革命 『トビアスと天使』
- 第2章 15世紀イタリア 簿記革命 『最後の晩餐』
- 第3章 17世紀オランダ 会社革命 『夜警』
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第2部 財務会計の歴史 3つの発明
- 第4章 19世紀イギリス 利益革命 『蒸気機関車』
- 第5章 20世紀アメリカ 投資家革命 『蒸気船』
- 第6章 21世紀グローバル 国際革命 『自動車』
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第3部 管理会計とファイナンス 3つの名曲
- 第7章 19世紀アメリカ 標準革命 『ディキシー』
- 第8章 20世紀アメリカ 管理革命 『聖者の行進』
- 第9章 21世紀アメリカ 価値革命 『イエスタデイ』
第1部 簿記と会社の誕生 3枚の絵画
第1章 15世紀イタリア 銀行革命 『トビアスと天使』
(1)絵描きに「トビアスと天使」の注文が殺到した理由
- 香辛料(かさばらない、食品保存、ニオイ消し、薬)を求めて東方貿易。
- 勇敢な船乗り=リズカーレ(risidare)→ 「リスク」の語源
- バンコ(銀行)が商人向けのキャッシュレス・サービスを開始。
- リズカーレや商人の道中の安全を祈りに込めた「トビアスと天使」。バンコは天使のような存在。
(2)地中海で大活躍したリズカーレとそれを助けるバンコ
- バンコによる遠隔地キャッシュレス・サービス = 為替手形
- バンこのおかげで、イタリア商人はヨーロッパ中を相手に商売ができるように。
- キリスト教は利息(ウズーラ)を禁じていた。
- 利息を偽装する屁理屈 → 「失われたチャンスの補償」= インテレッセ = interest
-
イタリア商人とバンコは商売を成功させ、規模が大きくなった。
↓
「記録を付ける」必要性が生まれる。
↓
中世イタリア(ヴェネツィア)で簿記が生まれる。
(3)イタリアの黄金期を支えたバンコと簿記
-
毛織物産業の衰退
→ 木綿産業の発展
→ 衣料を原料に「紙」が増加 - 1回限りの貿易 → 継続的に活動する繊維産業 → 新たな組織(コンパーニャ compania)
第2章 15世紀イタリア 簿記革命 『最後の晩餐』
(1)レオナルドと「簿記の父」の運命的な出会い
-
中世 = 暗黒時代 = キリスト教が支配していた「神の時代」
- 教会の教えが絶対。「人間らしく」などという態度は許されない。
-
ルネサンス
- 中世以前の歴史に返って「人間らしさを取り戻す」
- レオナルド・ダ・ヴィンチがルネサンスの扉を開く。
-
中世から次の時代への橋渡し
- ルネサンス
-
商売の繁栄と大規模化
-
個人商店から大組織へ、
のちの株式会社へつながる「大規模に儲ける商人たち」。
教会に並ぶ勢力に。
-
個人商店から大組織へ、
のちの株式会社へつながる「大規模に儲ける商人たち」。
-
商人たちを助けた「簿記」
-
簿記の普及に大きな影響を及ぼした人物:
ルカ・パチョーリ(数学者)
(レオナルド・ダ・ヴィンチの先生でもある) -
彼の数学書『スンマ』(1494年)のなかのたった27ページで簿記について説明。
(簿記を発明したわけではないが、これをきっかけで簿記が広まった。1494年が「簿記元年」。)
-
簿記の普及に大きな影響を及ぼした人物:
(2)処刑を逃れたコジモが支えたルネサンス
-
コジモ・デ・メディチのメディチ銀行
-
通信手段がなかったため、支店に経営を任せる。(帳簿があってこそ)
→ 持株会社のルーツ
-
通信手段がなかったため、支店に経営を任せる。(帳簿があってこそ)
(3)公証人を頼らず、自ら記録を付けはじめた商人たち
ヴィネツィア | フィレンツェ | |
---|---|---|
メンバー | 家族・親戚 | 仲間 |
活動 | 1回ごと | 継続的 |
-
バランスシートの右下が「家族・親戚」から「仲間」へ。
→「裏切り者」が現れる恐れ。
→約束を文書で残す
-
公証人が記録
↓
商人自らが記録
↓
簿記
↓
簿記のルール化・・・『スンマ』(ルカ・パチョーリ)
-
帳簿を付けるメリット
対外的 取引トラブル時の証拠 体内的 「儲けの分配」トラブル時の証拠
(4)簿記革命とメディチ銀行の終わり
第3章 17世紀オランダ 会社革命 『夜警』
(1)神が中心から人間が中心の時代へ
中世 | → | 近世 |
---|---|---|
神が中心 | 人間が中心 |
(2)レンブラントとオランダの栄光
- ↓ 16世紀、スペイン(カトリック)の支配下
-
↓ 独立戦争
- オランダ(プロテスタント) vs スペイン(カトリック)
-
↓ プロテスタントを中心とした「商人の国」へ
-
カルヴァン派のプロテスタント
- 「神から与えたもうた職業に励むこと」
- 「商売に励み、儲けること」
- 教会は質素
- 贅沢・娯楽はNG →チューリップ・バブルへ
-
カルヴァン派のプロテスタント
-
アムステルダム = 近世のAmazon
- 貿易+海運
-
美術品の商業化
- 絵画の小型化・・・何気ない風景画や静物画
- 市場取引財としての絵画・・・依頼主:教会から富裕市民に移行
-
『夜警』レンブラント
- レンブラントの人生は良き日々が短い
(3)オランダで誕生した株式会社とストレンジャー株主
-
オランダのライバル
- スペイン・・・カトリック
- ポルトガル・・カトリック
- イギリス
-
「東インド会社(VOC)」を設立(1602年)
-
目的
- 安全かつ大砲を備えた船を作りたい
- インドに現地拠点を作りたい
- 世界初の株式会社
- 当座企業から継続企業へ
- 巨額資金を長期的に調達する必要
- ストレンジャー株主の登場
-
目的
出資者の移り変わり
ヴェネチア | 家族・親族 |
---|---|
フィレンツェ | 仲間 |
オランダ | ストレンジャー |
イギリス | マネーマニア度の高いストレンジャー |
ストレンジャー株主のための環境
- 有限責任制度
- 儲けの配当(簿記で計算)・・・インカムゲイン
- 証券取引所・・・キャピタルゲイン
(4)短命に終わったオランダ黄金時代
- 17世紀はオランダ黄金期
- 「レンブラントの世紀」とも言われる(良き日々が短い)
-
主役はVOC(1602〜1799年)
- 支えは、 簿記、 株式会社 証券取引所
-
オランダの転落
- きっかけ・・・英蘭戦争
-
予兆
予兆 背景 その後 ずさんな会計計算・報告 高すぎた株主への配当 不正・盗難に対するチェックの甘さ 未熟な会計制度 内部留保の不足・借入れ体質 ガバナンス機能の不足 財務会計・管理会計 コーポレート・ファイナンス コーポレート・ガバナンス -
「売れ筋の見極め」の失敗
香辛料 → (17世紀〜)
絹織物・綿織物オランダ → イギリス
第2部 財務会計の歴史 3つの発明
第4章 19世紀イギリス 利益革命 『蒸気機関車』
プロテスタント精神 | オランダ | カルヴァン派 | 労働は美徳 |
---|---|---|---|
イギリス | ピューリタン | 〃(引き継ぐ) |
-1「石ころ」の活用から世界トップへ躍り出たイギリス
- 石炭の発見
- 炭鉱の排水ポンプ用に蒸気機関を発明 (ジェームズ・ワット)
-
蒸気機関から蒸気機関車を開発 (ジョージ・スティーブンソン)
- 1830年9月15日、リバプール・マンチェスター鉄道の開通
(2)蒸気機関車のはじまりと固定資産
-
鉄道会社の問題点
- 開業までの初期投資がデカい。
- 世界初の「固定資産が多い株式会社の資金調達・運用」。
- 在庫なし。固定資産を長期的に利用して稼ぐ。
- → 近代会計のルーツに
-
減価償却の登場
- 会計史のなかの重要なターニングポイント
- 鉄道会社「儲けを平準化し、安定的に配当したい!」
(3)画家も株主も興奮した鉄道狂時代
(4)19世紀の鉄道会社からはじまった「利益」
-
利益革命
- 会計上の儲けは「収支」から離れ「利益」へ。
-
産業革命による固定資産の増加
↓
減価償却の登場
↓
利益計算の登場 - 「自分のための帳簿」から「他人のための決算書」に進化。(さらに進化@アメリカ)
現金主義 (cash basis) |
収入 − 支出 = 収支 (Revenue - Expense = profit) |
fact |
---|---|---|
発生主義 (accrual basis) |
収益 − 費用 = 利益 (Revenue - Expense = profit) |
fiction |
- revenue ⊂ sales, interest income
第5章 20世紀アメリカ 投資家革命 『蒸気船』
(1)西の新大陸へ、海を渡った移民と投資マネー
-
ジャガイモ危機
↓
アメリカを目指す
↓
アメリカ投資ブーム
↓
鉄道建設ラッシュ - 会計士は「破綻処理」から「監査」に業務を広げる。
(2)崩壊前夜、ニューヨーク・ラプソディ
(3)大悪党ジョー、まさかのSEC初代長官に就任
- 1929年10月24日、暗黒の木曜日
-
↓
フランクリン・ルーズベルト- ニューディール政策
- 第二次世界大戦に参戦
- グラス・スティーガル法・・・商業銀行と投資銀行を分離
- 会計制度の改革・・・SEC(Securities and Exchange Commission、証券取引委員会)の設立
-
SECの設立
- いかさまマーケットを公正な場に変えるべく設立。
-
SECの初代長官・・・ジョセフ・パトリック・ケネディ
- 悪党。ジョン・F・ケネディの父。
-
「公開企業の会計制度」の根幹ができあがる。
経営者はルールに基づいて正しく決算書を作成すること。 正しく作成されたかは監査を受けること。 決算書を投資家に対してディスクローズすること。
→ 将来、株主・債権者になる可能性のある人も保護
= 安心して入れるマーケット ・・・パブリック革命
(4)パブリックとプライベートの大きな分かれ目
第6章 21世紀グローバル 国際革命 『自動車』
(1)自動車にのめり込んだ機関車運転士の息子
(2)海運とITで覇権を握ったイギリスのグローバル戦略
(3)金融資本市場のグローバル化と国際会計基準
-
1990年代のグローバル化
-
グローバルな投資
↓
国際会計基準(IFRS)← アメリカのUSギャップ vs イギリスのIFRS -
「自分のため」から「他人(投資家)のため」へ
自分のため 他人(投資家)のため 原価主義 時価主義 製造業(日本、ドイツ) 金融業(アメリカ、イギリス) - 金融重視の流れへ
-
グローバルな投資
(4)増えるM&Aとキャッシュフロー計算書
-
1999年、グラス・スティーガル法の撤廃
- → 巨大金融機関の誕生
-
→ ファンド、M&Aの増加
- ファンド = 新しい株主
-
M&Aの増加 → EBITDAが注目
- earnings before interest, tax, depreciation, and amortization
-
「利息、税金、減価償却、償却費」控除前の利益
- 「利息、税金、減価償却、償却費」は国によって違いが大きい。
- 利息・・・経済状況
- 税金・・・税法
- 減価償却、償却費・・・会計ルール
- 本業の儲けを表現できる。=キャッシュに近い利益
- 200年ぶりのキャッシュへの回帰現象
- → キャッシュフロー計算書の登場
第3部 管理会計とファイナンス 3つの名曲
第7章 19世紀アメリカ 標準革命 『ディキシー』
(1)南北戦争から大陸横断鉄道へ
-
鉄道 + 銃 → 南北戦争で死者増
- 鉄道・・・アメリカが1つになる象徴
- 南北戦争の4年後、大陸横断鉄道が完成(1869年)
-
アメリカ各地で路線が建設
↓
路線を連結- 鉄道会社も合併
- 19世紀末、はじめて先決決算が登場
路線拡大
↓
同質的な都市が同時に発生
↓
同質の製品を大量生産
↓
管理会計の誕生・・・自分のための会計
(2)大量生産する工場の分業と原価計算
-
工場に機械が増える
↓
さまざまなコスト(減価償却など)をどうやって 製品原価に落とし込むか?
↓
その仕組み = 原価計算
└ 製造業にとって数字の生命線
・・・近代的な枠組みは19世紀アメリカで確立。
外部記録 | → ターニング ポイント → |
内部記録 |
---|---|---|
外部との取引を記録 | 原価計算 | |
↓ 外部報告の 財務会計 |
↓ 内部利用の 管理会計 |
(3)ライバルを潰しながら巨大化する企業
- 企業集中運動、コングロマリット
- 水平的統合・・・ライバルを潰す
- 垂直的統合・・・グループ全体のコストを下げる
- 大げさな社名・・・US、アメリカ、ユナイテッド、ゼネラル、ナショナル...
- 持株会社の形態
-
鉄道会社に倣って、コングロマリットも連結決済を始める。
- 決算書は、連結PL, 連結BS, 連結CFへ
(4)南部から北部へ旅立つコカ・コーラとジャズ
-
南部で生まれ、北部へ広がった。
コカ・コーラ 「コーラを売る権利」を又貸し
→ フランチャイズ契約の始まりブルース ミシシッピ・デルタで綿花栽培
↓
奴隷解放された黒人が綿花摘み(過酷)
↓
夜の酒場で歌う魂の叫び
→ デルタ・ブルースジャズ ニューオリンズにて
ワークソングや黒人霊歌がごちゃまぜ
第8章 20世紀アメリカ 管理革命 『聖者の行進』
(1)シカゴからはじまったジャズと管理会計の100年史
- 1920年代 = ジャズ・エイジ
シカゴ | ルイ・アームストロング | ジャズ演奏を始める。 |
---|---|---|
シカゴ大学 |
【会計の歴史が変わる】
会計の新講座が始まる(by ジェームズ・マッキンゼー教授) 管理会計 └ 予算管理
|
原価計算 | 予算管理 |
---|---|
コスト 過去の実績 過去 |
利益 将来の計画 未来 |
-
T型フォードなど
・・・シカゴ周辺の製造業において、大量生産の技術は完成
↓
「規模」から「効率」へ
↓
管理会計
- 経営者が学ぶべき会計が2本立てに
財務会計 |
【守りの会計】 決算書を作り報告する。 |
|
---|---|---|
管理会計 |
【攻めの会計】 経営問題を解決するために 経営者が自由に組み立てる会計。 |
マッキンゼーが「型」を提供
|
GE
- 創業者エジソン・・・発明王
-
ジェラード・スウォーブ・・・販売王
-
家電を売るため割賦販売を編みだす。
↓
アメリカ人の消費マインドを変えるインパクト
= 借金を恐れないアメリカン・スピリット
↓
株も借金でかる → 1929大恐慌
-
家電を売るため割賦販売を編みだす。
(2)分けることで分かる「管区」由来のセグメント情報
(3)フランス系・デュポンの起こした管理会計革命
デュポン
- セグメントに区分けし、それぞれの収益性を計算して業績評価。
-
伝説のデュポン公式
利益/資本 = 利益/売上 × 売上/資本
ROI = P × T
資本利益率 = 利益率 × 回転率
利益率か回転率か、どちらで稼ぐか。
基本思考: 小さな投資で大きな利益を - 計画 + 分ける + 評価する = セグメント別業績評価
(4)クロスオーバーがはじまった音楽と会計
- 財務会計と管理会計のクロスオーバー
-
二重の委託関係
株主 ↓ 委託(評価基準:ROE) 経営者 ↓委託(評価基準:事業別ROI) 事業部長
第9章 21世紀アメリカ 価値革命 『イエスタデイ』
(1)マイケル・ジャクソンに学ぶ価値(バリュー)思考
(2)企業価値とは何か?
会計 | 財務会計 | 過去から現在までの取引をベースにした記録・計算・報告の体系。 |
---|---|---|
管理会計 | ||
コーポレート・ファイナンス | 未来の数字。 |
- コーポレート・ファイナンス的な、企業価値の求め方
- 会社買収後の将来キャッシュフローを見積もる
- 将来キャッシュフローを現在価値に割引計算する
(3)投資銀行とファンドの活躍を支えたファイナンス
-
簿記
↓
決算書
↓
↓
管理会計
↓
ファイナンス
-
ファイナンス理論
- 収益性評価に基づく事業の選別(NPV法、IRR法)
- 割引に用いる資本コストの計算(CAPM、WACC)
- 配当・自社株買い政策
- ・・・「こうすれば企業価値を増やすことができる」という方法が明らかになった。
3つの「数字の力」 | 帳簿をつくる(イタリア・オランダ時代) |
---|---|
決算書を読む(イギリス・アメリカ時代) | |
未来を描く(アメリカ・グローバル時代) |
-
規模の追求(カーネギーやロックフェラー)
↓
効率の追求(デュポン)
↓
価値の追求
- 短期的な売上・利益重視の古い常識を捨て、 未来の将来キャッシュフローを増やす努力をしなければならない。
(4)うつろいやすい「価値」を求め、さまよう私たち