2016年6月9日木曜日

『やさしいバイオテクノロジー』

  • DNA、遺伝子、ゲノム
  • バイオテクノロジー
DNA、遺伝子、ゲノム
DNA ●デオキシリボ核酸
●4種の塩基がつながって構成される。塩基配列
├ A アデニン
├ G グアニン
├ C シトシン
└ T チミン
●塩基のつながる順番や長さはなんでもよい。
遺伝情報 ●どのような塩基配列であるかという情報。(どのような並び順・長さか)
●遺伝子に記録されている。
遺伝子 ●DNA分子の中の機能単位。
●この一部にタンパク質のアミノ酸がつながる順番が記録されている。
●ヒトの場合、約2万ヵ所が確認されている。
●遺伝情報が記録されている。
ゲノム ●1つの生物を構成するのに必要なDNAの塩基配列全体を指す。
●ヒトゲノムには約30億塩基分の遺伝情報がある。
タンパク質 ●20種類のアミノ酸がつながって構成される。アミノ酸配列
細胞→核→染色体→DNA→遺伝子
  ○ヒトは60兆個の細胞のかたまり。
   ○(真核)細胞には、1つの核と
    複数のミトコンドリアが存在する。
    ○核は、ヒトの場合、
     23対46本の染色体をもつ。
     ○染色体はDNAとDNA結合タンパク質
      からなる構造物。
     ○染色体1本にDNA1分子がある。
      ○第1~22が常染色体、
       第23が性染色体(女はXX、男はXY)。
       第23が2種あるから全部で24種。
      ○DNAは塩基配列。
      ○DNAには数百~数千の遺伝子が
       乗っている。
   ○ミトコンドリアは、1分子のDNAをもつ。

  ○遺伝子はDNAの中にある。

  ○ゲノムとは遺伝情報のこと。
  ○ゲノムとは塩基配列全体のこと。
  ○ヒトゲノムとは、全24種の染色体に
   含まれるDNAの30億塩基分の
   全塩基配列のこと。
  ○ゲノムは生物種ごとだけではなく、
   個人ごとにも差異がある。
   ヒトゲノムの個人差は0.1%。
  • アミノ酸は20種類しかないが、アミノ酸から作られるタンパク質は10万種類以上ある。
  • アミノ酸配列の構成によってタンパク質が種類が変わる。
  • 遺伝子にはタンパク質のアミノ酸配列が書いてある。
  • 遺伝子がタンパク質の種類を決めている。
  • それぞれ生物がことなる形態と機能をもっているのは、生物を構成するタンパク質の種類・量・分布が生物ごとに異なるため。
  • 遺伝情報からタンパク質がつくられる。
  • すべての核には同じゲノム(遺伝子セット)がある。
  • 遺伝子から「転写」と「翻訳」の過程を経てタンパク質が合成される。
  • 核の中でDNAが転写され「メッセンジャーRNA」が作られる。
  • mRNAが核からリボソームに移動し、タンパク質に翻訳(合成)される。
  • 翻訳されたタンパク質の行き先(細胞外、核、ミトコンドリア、細胞質)はアミノ酸配列によって決まる。
  • 突然変異は、染色体レベル、遺伝子レベル、塩基レベルに分類される。
  • すべての細胞は同じゲノムをもつ。
  • すべての細胞で、すべての遺伝子が働いているわけではない。
  • 細胞種ごとに働く遺伝子セットが異なり、
    その結果、たんぱく質の種類や量も異なり、
    細胞種ごとに多様な機能を持つ。(細胞の分化)
  • 分化してもゲノムは変化しない。
■お酒が飲める・飲めない
エチルアルコール
 ↓アルコール脱水素酵素
アセトアルデヒド ・・・有害。赤い顔・頭痛・吐き気の原因
 ↓アルデヒド脱水素酵素
酢酸
 ↓
排出

アルデヒド脱水素酵素の遺伝子は
分解型(飲酒可)・不分解型(飲酒不可)の2種類があるが
違いは塩基1つだけ。
バイオテクノロジー
大腸菌を利用した組換えDNA実験(1970年代に始まった革命)
実験道具
 増幅器 :大腸菌     (原核生物)
 はさみ :制限酵素   (タンパク質)
 のり  :DNAリガーゼ(タンパク質)
 運び屋 :プラスミドベクター(DNA)
目的のタンパク質を作る方法
  1. 運び屋をはさみで切る。
  2. 目的タンパク質の遺伝子(DNA)を運び屋にのり付けする。
  3. 運び屋を増幅器に入れて増幅させる。
ポリメラーゼ連鎖反応PCR法(1980年代に始まった革命)
  • 大腸菌を使わずに、特定の塩基配列の微量DNAを増幅する。
  • 熱安定性DNAポリメラーゼと、向かい合う2種のプライマを使用。
  • 少量でもDNAがあれば、短時間で遺伝子を増幅できる。自動化も実現。
  • あらゆる分野で応用されている。(DNA鑑定、クローニング、進化論、絶滅生物の復活)
伝統育種(遺伝子組換え以前)
  • 交配(近縁種同士のみ)
  • 組織培養の技術を使った細胞融合法(遠縁種でも可)
遺伝子組換え技術
  • アグロバクテリウム法(よく使われる遺伝子導入法)
  • 土壌細菌のアグロバクテリウムは、ゲノムDNAの他にT-DNAという領域がある。
    この細菌が植物に感染すると、T-DNAが切り出され、宿主の核DNAに入り込む。
    T-DNAに乗っている遺伝子を目的遺伝子に置き換えることにより、宿主に目的遺伝子を導入する。
  • 目的遺伝子として多用されている遺伝子:
    • 害虫抵抗性遺伝子
    • 除草剤耐性遺伝子
害虫抵抗性遺伝子(Bt遺伝子)
  • Bt遺伝子からBtタンパク質がつくられるが、酸性に弱いため、
    胃が酸性であるヒトには無害であるが、
    胃がアルカリ性である害虫は分解できず、腸機能が低下し餓死する。
  • バイオ農薬として40年も前から使われていて、安全。
除草剤耐性遺伝子
  • 除草剤「グリホサート」(ラウンドアップ)に耐える遺伝子。
  • 「芳香族アミノ酸」をつくる遺伝子。
  • 「芳香族アミノ酸」はヒトにとっては必須アミノ酸であるため無害。
  • 畑にグリホサートを撒くと、この遺伝子が導入された作物だけが生き残る。
伝統育種 vs 遺伝子組換え技術
伝統育種(交雑・交配) 遺伝子組換え技術
概要 ゲノムレベルで組換えが起こることがある。
その場合、まったく新しいゲノムの生物が誕生する。
1個から数個の遺伝子が交換されるだけ。
もとのゲノム構成は変化しない。
方法 放射線や薬剤により突然変異を誘発。
異種間の交雑や細胞融合も。
ある1つの機能が、既知の遺伝子の挿入や欠失でつくられる。
結果 ランダム。未知。 意図した機能のみが追加/削除される。
種の壁 乗り越える。 「ゲノム±数個の遺伝子」だから乗り越えない。
安全性検査 不問。世間も無関心。 検査も世間の目も非常に厳しい。
「無差別多数」遺伝子組換え
「ゲノム」組換え
「特異的単一」遺伝子組換え
受精卵クローン
  • 一卵性双生児はお互いにクローン。1つの受精卵が分割。同じ遺伝子をもつ。
  • 一卵性双生児を人工的につくる=「受精卵クローン」。
  • 受精卵が2回の卵割で4細胞期になったところで、4個に分割し、仮親に移植する。(牛の繁殖によく使われる)
  • 核移植受精卵クローン:未受精卵から核を除いた除核卵をつくり、胚由来の核を移植する。
  • クローンはつくれるが、人工授精をすることから、どのような形質をもつクローンが生まれるかは制御できない。
体細胞クローン
  • 1997年、世界初の体細胞クローン、羊のドリー。
  • 新たな受精卵を経由せず、すでに個体として存在している生物のゲノムと同じゲノム構成をもつ個体を別につくる方法。
  • ゲノム構成のわかっている生物のコピーをつくる技術。
  • 遺伝的に同一の子孫が無限につくれる。
幹細胞(Stem Cell)
  • 新しい細胞をつくりだす元になる細胞。
  • 役割の決まった細胞に分化する前の、元になる細胞。
  • 幹細胞は非対称に分裂して、幹細胞を維持している。分裂した細胞の一方は母細胞と同じ幹細胞として残る。
  • 幹細胞には種類がある:造血幹細胞・神経の幹細胞・肝臓の幹細胞・など。
胚性幹細胞(Embryonic Stem Cell、ES細胞)
  • すべての幹細胞に分化可能な究極の幹細胞。
  • 胚盤胞の内側の細胞からつくる。どんな細胞にも分化できる。
  • 遺伝子の導入操作が極めて簡単。
  • 特定の遺伝子の機能を失ったマウス「ノックアウトマウス」が誕生。
  • 成人の体細胞と同じゲノムのES細胞をつくることが可能。自己の臓器がつくれる。
  • ES細胞をつくるには胚盤胞を壊す必要がある。胚盤胞は子宮に戻すと個体が誕生するため、倫理的に問題となる。
iPS細胞(Induced Pluripotent Stem Cell、人口多能性幹細胞)
  • ヒトのES細胞株はたくさん作られているが、再生医療に使うためには、本人のゲノムをもつ体細胞由来のクローンES細胞が必要。
  • 4つの遺伝子を導入することでつくられる。
  • 培養できるため、遺伝子組換えも可能。
  • 卵子や胚を使わない。
  • 全能性をもたないため、クローン人間は誕生しない。
  • クローンES細胞より作成がはるかに容易。
  • 免疫的に「自己」。
ES細胞 vs iPS細胞
  • 再生医療に利用できる多能性細胞は、たんなるES細胞ではなく、クローンES細胞。
  • クローンES細胞をつくるためには、卵子や胚が必要という倫理的・技術的な問題でだけでなく、「クローン人間」ができてしまうという問題もある。 (クローンES細胞をつくるためのクローン胚(胚盤胞期)を子宮に戻せば体細胞クローン人間になる)
  • 生命の萌芽となる胚を壊さないといけないことからも、クローンES細胞は問題。
  • そんななかで発見されたiPS細胞は画期的。
全能性
  • 子宮の助けを借りて個体になれる能力。
  • 胚は胚盤胞期まで培養することができ、その中の細胞を特殊な条件で培養すれば、どんな細胞にも分化可能な多能性をもつ細胞ができる。
  • 4細胞期までならバラバラにしてもそれぞれが個体になる。一卵性クローン人間ができる。
  • 分化した細胞は単能性だが、遺伝子導入によりiPS化すれば、多能性になる。
  • 胚盤胞を子宮に戻せば個体になる。
  • ES細胞やiPS細胞はどんな細胞にも分化できるが、どんな臓器や器官になるというわけではない。