2016年6月15日水曜日

『世界を変えるiPS(週刊ダイヤモンド2016.6.11)』

  • iPSの基本
  • iPS細胞 vs ES細胞 vs クローンES細胞
  • 研究最前線
  • iPSビジネス
  • ゲノム編集、遺伝子治療、着床前診断
iPSの基本
2つの能力
  1. 体のどんな種類の細胞にもなることができる能力
  2. ほぼ無限に増殖できる能力
作り方
  • 4つの遺伝子を導入するだけで、専門化した細胞が初期化され、万能細胞になる。
初期の方法 最新の方法
使用する細胞 皮膚の繊維芽細胞 血液のT細胞
初期化遺伝子の運び手 レトロウイルス センダイウイルス
初期化遺伝子の運び先 初期化遺伝子を核内のDNAに結合する 初期化遺伝子は核の外
ガン化リスク 高(DNAが傷つくため)
細胞の専門化と初期化
どんな細胞
にもなれる
受精卵 iPS細胞
なれる細胞
は限られる
幹細胞
(内胚葉系)
幹細胞
(中胚葉系)
幹細胞
(外胚葉系)

(初期化)
専門化
された細胞
(270種類、37兆個)
胃、腸の細胞 肝臓の細胞 骨の細胞 心臓、血液の細胞 筋肉の細胞 神経細胞 角膜、網膜の細胞 etc.
できること
  • 再生医療
  • 創薬 (難病患者のiPS細胞から病気の原因を調べる)
iPS細胞がヒトの治療に使われた、世界初の臨床研究
→加齢黄斑変性の治療。2014年9月、iPS細胞から網膜色素上皮細胞を作り、シート上にして移植。
iPS細胞 vs ES細胞 vs クローンES細胞
iPS細胞 ES細胞 クローンES細胞
作り方 使用する細胞 本人の「任意の細胞」 他人の「受精卵」 他人の「核を除去した卵子」+本人の「任意の細胞の核」
操作 初期化遺伝子を導入して初期化する。 胚盤胞(はいばんほう)に成長させ、それの内部細胞塊(さいぼうかい)を取り出し培養する。 「核を除去した卵子」にクローン対象人物の細胞の核を導入し、胚盤胞に成長させ、それの内部細胞塊を取り出し培養する。
特徴 万能性 ○あり ○あり ○あり
拒絶反応 ○なし ×あり ○なし
倫理問題 ○なし ×あり
(受精卵の破壊)
×あり
(クローン人間につながる/卵子が必要)
研究最前線
  • 治療に使用する細胞が少なく、ガン化の危険性も低い目の分野から再生医療が開花。
  • 加齢黄斑変性 ←世界初のiPS治療。安全性はクリア。
  • iPS製角膜シートで、傷ついた角膜の再生
神経
  • パーキンソン病 ←iPS製ドーパミン生産細胞を移植。サルで成功。
  • 脊髄損傷 ←iPS製神経前駆細胞を移植。サルで成功。
心臓
  • 心疾患 ←iPS製心筋シートの貼付け、心筋細胞を集めた「心筋球」の直接注入
  • 足の筋肉から作った細胞シートは商品化済み。テルモの「ハートシート」
肝臓
  • ミニ肝臓(3次元の構造物)の作成に成功
  • 3つの細胞をいっしょに培養
    • iPS細胞から作成した肝臓の一歩手前となる前駆細胞
    • 細胞をつなぐ間葉系幹細胞(かんようけいさいぼう)
    • 血管を作る血管内皮細胞
膵臓(すいぞう)
  • 1型糖尿病 ←iPS製膵β細胞
腎臓(腎臓)
  • 透析患者 ←立体的な肝臓の組織を作るのに成功したが、機能が低い。
iPSビジネス
欧米では投資家の多くが、iPS細胞のビジネス化に見切りをつけ、より研究が進んでいるES細胞に流れており、日本だけがiPS細胞に固執している状況
研究機関
  • 京都大学iPS細胞研究所 = CiRA(サイラ;Center for iPS Cell Research and Application)
  • 理化学研究所
企業
  • 大日本住友製薬(最も先行)
  • 武田薬品
  • アステラス製薬
  • 富士フイルム
    • Cellular Dynamics International, Inc.を買収
      • ヒトES細胞を世界で初めて作成した教授が設立
      • iPS細胞を大量かつ安定生産する技術
      • 創薬向けの心筋細胞や肝細胞を販売
      • 世界最大規模のiPS細胞バンクの製造受託
  • タカラバイオ
周辺ビジネス
  • 輸送サービス
  • 細胞の加工施設(CPC)
  • 自動培養器
  • 検査機器
  • 民間保険
  • 消耗品類
iPS細胞ストックプロジェクト
  • 課題:iPS細胞を作成して安全性を確認するまでに、時間 (1年)とコスト(数千万円)がかかる。
  • 課題を解決すべく、拒否反応が起きにくい特殊な白血球の型を持つ人のiPS細胞をストック。(現在は1種類をストックしているが日本人の17%をカバー。)
ゲノム編集、遺伝子治療、着床前診断
ゲノム編集
  • 2015年、中国が、タブーとされていたヒト受精卵のゲノム編集を実施。→あせった各国政府は態度を変更
  • 2013年に開発された第3世代のゲノム編集ツールがゲノム編集の研究を加速
    • CRISPR-Cas9(クリスパー-キャスナイン)
    • 精度が1000倍以上に。
    • 作業は簡単。
    • 費用は10分の1。
    • 開発者はいつノーベル賞をとってもおかしくない。
ゲノム編集の仕組み
  1. ゲノム編集ツール(CRISPR-Cas9)が細胞内に入る。
  2. 狙ったDNAに結合するリボ核酸(RNA)をガイド役にして編集したい場所を見つける。
  3. 酵素のハサミでDNA配列を切り取る。
  4. 切り取った場所に新しいDNA配列を組み込む。
遺伝子治療
  • 特別な機能を持つ遺伝子を体に入れて難病を治す。
  • 2つの方法
    1. ウイルスに遺伝子を投入して培養し、製剤化して投入。
    2. 患者の細胞を取り出して遺伝子を導入・改変・活性化した後に患者の体内に戻す。
着床前診断
PGD
(Preimplantation Genetic Diagnosis)
着床前遺伝子診断
PGS
(Preimplantation Genetic Screening)
着床前遺伝子スクリーニング
○特定の遺伝子異常の有無を診断。 ○すべての染色体を見て異常を検査。
○日本では一部しか認められていなかったが、欧米では普及。
○体外受精の妊娠率が向上。男女産み分けは100%確実。