2016年1月3日日曜日

『「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書』

  • 貸借対照表と損益計算書の基本
  • ROE 完全理解
  • その他の経営指標
  • ワンランク上の経営指標
貸借対照表と損益計算書の基本
損益計算書
売上高
−)売上原価
売上総利益
−)販売費及び一般管理費
営業利益 経営者の実力が最も反映。 (経常利益では支払利息などコントロールできない要素が含まれる。)
+)営業外収益
−)営業外費用
本業以外の活動で経常的に発生する利益・費用。
経常利益
+)特別利益
−)特別損失
税金等調整前当期純利益
±)税金等の調整
当期純利益 当期純利益だけが株主に帰属。
貸借対照表
お金の運用方法 お金の調達源
資産      
負債 返済が必要
純資産 返済が不要
自己資本比率
=自己資本/資産
=(純資産−新株予約権−少数株主持分)/資産
1秒だけ財務諸表を見るとすれば、
流動資産 > 流動負債
であることをチェック。
純資産の詳細
株主資本
資本金 会社設立時に入れたお金。
増資(新株発行)のお金÷2。
資本余剰金 増資(新株発行)のお金÷2。
利益余剰金 当期純利益@PL。
自己株式 マイナス項目。
自社株買いはここにマイナス計上。
評価・換算差額 資産の評価額が変わった時用。
「その他有価証券評価差額金」
「為替換算調整勘定」
新株予約権 ある金額で株式を買う権利
(大部分がストックオプション)
…将来、株式に変わる可能性
少数株主持分 子会社の勘定科目は100%合算が必要。
51%子会社の場合も。
本来、親会社のものではない純資産をここに計上。
債務超過
当期純利益のマイナスが続く
→利益余剰金が底をつく
→利益余剰金がマイナスに
→純資産合計もマイナスに = 債務超過
自社株買い
「自己株式」は株主資本のマイナス項目。
自社株買いすると、株主資本のマイナス項目として計上され、純資産の合計がその分減る。
子会社と関連会社
【子会社】出資50%超え;貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書にあるすべての勘定科目が、親子間の取引を相殺した上で合算される。
【関連会社】20〜50%;合算なし。
ROE 完全理解
ROE と ROA
ROE ROA
Return On Equity Return On Asset
自己資本利益率 資産利益率
当期純利益 / 自己資本 利益 / 資産
株主が
会社に預けているお金を使って、
どれだけリターンを稼いでいるか
企業が
資産に対して、
どれだけの利益を生んでいるか
分子は必ず「当期純利益」。
株主に帰属する利益であるため。
分子は
「営業利益」「経常利益」「当期純利益」どれでもよい。
「株主資本」「自己資本」「純資産」の違い
日本でROEがブームになっている理由
2014年8月に発表された『伊藤レポート』
  • = 経済産業省が中心となって進めた「持続的成長への競争力とインセンティブ〜企業と投資家の望ましい関係構築〜」プロジェクトの最終報告書
  • プロジェクト座長=一橋大学大学院特任教授の伊藤邦雄
『伊藤レポート』での提言
  • 「日本企業はROE8%を最低ラインとして、その上を目指すべき」
  • 「経営者と投資家がもっと対話すべき」
  • (ROE平均:日本企業=8%、欧米企業=10〜15%)
『伊藤レポート』に呼応し、金融庁が制定
  • 日本版スチュワードシップ・コード
    ……投資家に企業との対話を促す
  • コーポレートガバナンス・コード
    ……企業に社外取締役を2人以上置くことを促す
議決権行使助言会社ISSが打ち出した方針
  • 「過去5年間の平均と直近決算期のROEがいずれも5%未満の企業については、経営トップの取締役選任議案に反対するように株主に勧める」
JPX日経インデックス400
  • 日銀が、買い入れETF対象に追加。
  • GPIFも追加。
ROEを高める方法
  • ① 分子「当期純利益」を上げる
  • ② 分母「自己資本」を下げる
手っ取り早い方法
  • コストカット…①
  • 自社株買い…②
    • BSの「自己株式」にマイナス計上
    • 購入した自社株は将来的に消却するためマイナスで計上
    • 発行株数が減るので一株当たり利益が増える
健全な方法
  • ROAを高めることによってROEを高める。
利益効率(ROE)と安全性(自己資本比率)は表裏一体
ROE vs ROA
ROE
= 純利益 / 自己資本
= 純利益 / 自己資本 × 資産 / 資産
= 純利益 / 資産   × 資産 / 自己資本
= ROA        × 財務レバレッジ
ROA
= 純利益 / 資産
= 純利益 / 資産  × 売上高 / 売上高
= 純利益 / 売上高 × 売上高 / 資産
= 売上高利益率  × 資産回転率
ROE = ROA × 財務レバレッジ
  • ROAを高めることによってROEを高めなければならない。
  • 経営者は負債と純資産の両方(=資産全体)に対して責任があり、それに見合ったリターンを出す必要がある。
  • ROEやROAは過去数年から10年程度の推移を見る。
  • BSにおいて、資産の部は業種ごとにより内容が異なるが、負債・純資産はほぼ同じ。
調達コスト
純資産の調達コスト >> 負債の調達コスト
(株主の期待利回り)   (有利子負債の利子)
純資産の調達コスト
= 国債金利 + β(株式市場利回りー国債利回り)
WACC
  • Weighted Average of Cost of Capital
  • 加重平均資本コスト
  • 純資産調達コストと負債調達コストとの加重平均
  • 資産をまかなうための資産を調達するときにかかるコスト
  • ROA ≧ WACC でなければならない。
その他の経営指標
安全性
自己資本比率 = 純資産 / 資産
流動比率 = 流動資産 / 流動負債
当座比率 = 当座資産 / 流動負債
手元流動性 =(現金+有価証券)/月商
収益性
売上高成長率
  • 売上高は企業の社会でのプレゼンス。
  • 「たな卸資産」も合わせてチェック。
  • 売上高の伸び率は資産の伸び率と比例すること。
たな卸資産
  • 「売上原価」には、在庫のうち「売れた分」だけしか計上されない。
  • 売れ残り在庫の増減はPLに表れない。
資産回転率
  • = 売上高 / 資産
  • 資産をどれだけ有効活用しているか。
  • 効率性と安全性はトレードオフ関係。
  • 資産回転率が高い業種=参入障壁が低い。
売上原価率
  • = 売上原価 / 売上高
  • 製造コストや仕入れが上がっていないか。
売上総利益率
  • = 売上総利益 / 売上高
  • = 1 - 売上原価率
  • 製造コストや仕入れが上がっていないか。
たな卸資産回転月数
  • = たな卸資産 / 1ヵ月あたりの売上原価
  • 在庫の量は適正か。
販管費率
  • = 販管費 / 売上高
  • 人件費や広告宣伝費がかかりすぎていないか。
売上高営業利益率
  • = 営業利益 / 売上高
  • 本業でどれだけ効率よく稼げているか。
将来性
健全な状態
営業キャッシュフロー プラス
投資キャッシュフロー マイナス
財務キャッシュフロー マイナス
合計 プラス
チェックポイント
  1. 営業CFは十分の稼いでいるか
  2. 未来への投資を十分に行なっているか
  3. 株主還元はどれくらい行なっているか
  4. 最終的な残高はプラスになっているか
営業キャッシュフロー
税金等調整前当期純利益
実際にはお金が入ってきていないのに、
売上高に計上した収益
未回収の今期の売掛金
実際にはお金が入ってきているのに、
売上高に計上しなかった取引
回収した前期の売掛金
実際にはお金が出ていったのに、
費用として計上していなかった取引
未払の今期の買掛金
実際にはお金が出ていっていないのに、
引いていた費用
支払った前期の買掛金減価償却費
± 在庫の増減など、PLとは関係のない
資産・負債の増減を調整
資産項目の入替り(たな卸資産の増加&現金の減少)★★★
  • 会社が継続的にキャッシュを稼ぐ源泉は、営業キャッシュフローしかない。
  • キャッシュフロー・マージン
    = 営業キャッシュフロー / 売上高
『MarketHack流 世界一わかりやすい米国式投資の技法』より“安産型ナイスバディ”
  1. 営業キャッシュフローが毎年着実に増えていること
  2. 営業キャッシュフローが純利益より大きいこと
  3. 営業キャッシュフロー・マージンが15〜35%であるこ
MarketHack流 世界一わかりやすい米国式投資の技法
広瀬 隆雄
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投資キャッシュフロー
  1. 事業を行なう上で必要な投資
    ……土地・建物・ソフトウェアの購入
  2. ファイナンス的な投資
    ……3ヵ月以上定期預金や長期にわたる株式投資
  • 通常はマイナス = 会社の将来への投資
財務キャッシュフロー
  1. ファイナンスの状況
    ……借金返済・社債償還・株式発行(増資)
  2. 株主への還元状況
    ……配当金・自社株買い
  • 通常はマイナス = 借入金と返済金が同じくらいなら株主還元の分だけマイナスに
フリーキャッシュフロー
  • 定義① 営業CF - 投資CFのマイナス分
  • 定義② 営業CF - 現事業維持のために必要なCF
ワンランク上の経営指標
DCF法
Discounted Cash Flow

現在価値 = Cf1/(1-i) + Cf2/(1-i)^2 + Cf3/(1-i)^3

企業を買う側、売る側の立場によって、年数や利子が異なる。
決まったルールはない。
会社の値段 = 将来のキャッシュフローの現在価値 − ネット有利子負債
EBITDA
Earning Before Interest, Tax, Depreciation, Amortization
金利、税、減価償却前利益

= 営業利益に減価償却費を足し戻したもの

Depreciation = 有形固定資産の減価償却費
Amortization = 無形固定資産の減価償却費
会社の値段 =(EBITDA × EBITDA倍率)− ネット有利子負債
等式
(EBITDA × EBITDA倍率)− ネット有利子負債 = 時価総額
からEBITDA倍率を求め、値ごろ感を探る。
7〜8倍を超えると高い感じ。
DCF法とEVITDA
DCF法 EVITDA
未来の数字 過去の数字
恣意的 客観的
EVA
Economic Value Added
経済付加価値

EVA = 税引き後営業利益 - 総資本調達コスト

EVAがゼロより大きければ、営業利益で資金調達コストをカバーできているということ。