- バブルの種類
- なぜ、バブルは繰り返されるのか
- バブルとの付き合い方 ~バブルを避けるための4条件
- 日本に再びバブルは訪れるか
- バブルの歴史
バブルの種類
他力本願型バブル
- 人々が「この株は割高だが、当分の間は他人が買うから、さらに値上がりするだろう。自分も買おう」と考えるバブル。
- 崩壊は急激。売り逃げるのは困難。
- 基本、他力本願型バブルには参戦しないこと。
惚れ込み型バブル
- 人々が「この株はすばらしいから、株価がこれくらい高いのは当然だ。むしろ、さらに上がるべきだ」と考えるバブル。
- 投資家は投資対象に惚れ込んでしまうので、バブルであることに気づかない。
- 崩壊はゆるやか。
- 賢者もバクチ嫌いも結果として投機に参加し、政府も投機を抑止しない。
- 人々が株高と好景気でハッピーな時にバブルを潰すには、その理由を説明して人々を納得させなければならないため、政府はバブル潰しに動かない。
- 近年のバブルは惚れ込み型が多い。
なぜ、バブルは繰り返されるのか
- バブルが繰り返されるのは、前回のバブルについての人々の記憶が簡単に薄れるから。
- バブルの多くは、賢い人が合理的に考えた結果として起きている。
- 「惚れ込み型バブル」は賢い人も参加する。
- 投機に踊ってはいけないと理解していても、隣人が大儲けした話を聞くと、つい自分も手を出してしまう。
- グリーンスパンでさえ「バブルは崩壊して初めてわかる」と言っている。
- 合理的バブル。バブルは合理的な行動の結果として生じている。
- 全員が合理的に行動した結果として全員がひどい目に遭う。
- 「現在の株価は高すぎるが、明日は2%値上がりする確率が99%、ゼロになる確率が1%」とした場合、期待値を考慮すれば投資することが合理的な行動。
- 比較的大規模で、一国あるいは世界の経済を麻痺させてしまうようなバブルは、世界各地で多発している。 原因・・・①グローバル化した経済において、世界中の資金が利益を求めて一か所に集中するようになった。 ②世界経済が金融緩和圧力を受けやすくなった(安価な中国製品、中国に雇用を奪われ失業対策、中国の先進国債購入、アジア通貨危機を受けて先進国国債購入)。
バブルとの付き合い方 ~バブルを避けるための4条件
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以下の4条件がそろったら投資しない。
- 高すぎると考える人々を説得するような、それらしい理屈があり、それが広く人々に信じられている。
- 全員参加型である。
- 資産価格が高騰し、景気も悪くないのに、一般的な物価は安定しているので、金融が比較的緩和されている。
- 国内と海外の温度差が目立っている。
- 他力本願型バブルには参戦しない。
- オール・オア・ナッシングではない。入口までは大きな金額を投資し、始まったら半分売り、本格化したら大半を売る、など。
- 「相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で熟成し、幸福感の中で消えていく」
- 相場観に関係ない売り注文は、容易には反転しない。
日本に再びバブルは訪れるか
今はバブルか
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以下の3要因のため、アベノミクス前の株価は低すぎた。「下向きのバブル」だった。
- 日本経済の長期的な先行きがネガティブ(少子高齢化、財政赤字)
- 新興国の台頭(外国人投資家の日本株ウェイトが低下)
- 投資家のあきらめムード(20年間も低迷していた日本株)
- アベノミクスにより要因(3)が払しょくされ、株価が上昇した。
- 上昇が急激だったのは「下向きのバブル」が崩壊したため。
- 要因(1)(2)が残っているため、いまだに過去と比べればけっして高くない。
バブルになるか
惚れ込み型バブルの可能性
- 成長戦略と絡んだ局所的なバブルが発生する可能性は高い。
- 日本経済は少子高齢化で衰退していくイメージが定着しているため、全面的な株高バブルの可能性は低い。
他力本願型バブルの可能性
- 「日銀が金融緩和している間は、他の投資家も買うだろうから上がり続けるだろう。だから自分も買おう」
- 物価が2%上昇する可能性は低い⇒「金融緩和が続く→ドルと株は上がり続ける」と人々が考える。
東京オリンピックは?
- オリンピック単独でバブルになる可能性は低い。
- 老朽化したインフラに対する潜在的な要求が一気に表面化するかも。少子高齢化で労働力が不足する前に工事をしたい。巨額の公共投資があるかも。
バブルの歴史
チューリップ・バブル(1634~1637年、オランダ)
- 「オランダ経済の奇跡」。経済が発展。スペイン軍の脅威が消える。アムステルダムが世界貿易の中継基地に。 スペイン軍の脅威が消える。 アムステルダムが世界貿易の中継基地に。
- 珍しい種類のチューリップ球根が高騰。のちに珍しくない球根も。
- 取引の主体が収集家から投機家(一般人を含む)に。
- 人々はバブルと認識していた。
- 暴落は突然に。値段がつかなくなった。
- 崩壊から100年後、同じオランダでヒヤシンス・バブル。
ミシシッピ・バブル(1719~1720年、フランス)
- 財政赤字に悩む。国債は額面の数分の1にまで暴落。
- アドバイザーとして実業家ジョン・ローが現れる。
- ローは、王立銀行を設立し、兌換紙幣を発行。
- ローは、ミシシッピ会社を設立し、新大陸(アメリカのミシシッピ川流域)での通商権と開発権を得る。近郊発掘も。
- ミシシッピ会社の株式は人気だったので、大量に増資して、インド貿易の権利・タバコ販売権・貨幣鋳造権徴税権を購入。
- 新都市(現在のニューオリンズ)を造る。
- 「新大陸の夢」に魅せられて株価が上昇。
- しかし、増資で得た資金はフランス国債の購入に充てられていた。
- 国債を売却した人々は、売却代金で同社株を購入。
- 金融は緩和状態。王立銀行は保有する金銀よりも多くの紙幣を発行。
- ジョン・ロー:財政難を救おうとしたのか、フランス帝国を乗っ取ろうとしたのか。
南海泡沫事件(1720年、イギリス)
- 1711年に南海会社が設立され、南米における通商独占権が与えられる。
- イギリス国債を引き受ける代わりに奴隷貿易の独占権を与えられる。これを契機に株価高騰。
- フランスでミシシッピ会社の株価が暴騰を続けていたので連想買いも。
- 多くの人々は将来性を信じていたわけはない。『他力本願型バブル』
- アイザック・ニュートン:高すぎると理解し売却した南海会社の株式を、のちにさらなる高値で購入し大損。
- 南海会社に便乗して、詐欺まがいの会社が泡のように多数設立。「泡沫会社」と呼ばれる。
- 「バブル」という言葉の起源:南海会社の株価高騰ではなく、便乗したあやしい会社が生まれては消えていく様子。
うさぎバブル(1872~1879年、明治初期 日本)
- 発端はうさぎの飼育ブーム。珍しい毛色のうさぎが高値で取引されるようになる。
- 娘を売ったり、破産したり、殺人事件も起きた。
狂騒の20年代(1925~1929年、アメリカ)
- ヘンリー・フォードによる自動車の大量生産。生産の効率化が一気に進んでいた。
- イギリスから世界最大の工業国の地位を奪う。
- 1913年に連邦準備制度が設立され、景気調節を担う。経営の進歩によって在庫水準が低下。→景気循環のない「新時代」を迎えたという認識。
- バブルの発端:1920年代半ばにフロリダ不動産投資ブーム。自動車で行けるリゾート地。
- フロリダの土地バブルは1926年に崩壊。ハリケーン襲来。
- 1925年と1927年の公定歩合引き下げで、株式バブルが発生する。
- 株価は8年で5倍に。
- 高すぎる株価を正当化する理論が登場。「新時代」
- 「ブローカーズ・ローン」の登場。株を担保に借金。
- ジョン・F・ケネディ大統領の父親「靴磨きまでもが株の話に夢中になっている。これは異常だ」と感じて株をすべて売り払った。(1929年9月)
- 株価は3年でピークの9分の1に。「惚れ込み型バブル」のため一気に暴落したわけではない。
平成バブル(1986~1992年、日本)
- バブルの始まり:プラザ合意後の円高不況の時期。
- 「21世紀は日本の時代」という惚れ込み。
- 株高の支え:①土地の高騰、②株式の持合い。
- 1987年2月、NTTの上場で人々の株への関心が高まる。
- 企業も、増資して得た資金で株式投資。
- 景気が好調でも、円高で消費者物価が落ち着いていたため、金融引き締めは行われず。
- 政府・日銀による地価を押し下げる政策(総量規制)により、バブルは潰される。
- バブル崩壊から1年以上経過しても、日経平均はピークの3割安程度に留まっていた。
- 株価が下がると買いを入れる人も多かった。
- 大幅に売り越していたのは外国人投資家。
- バブル崩壊後の企業が抱えた「3つの過剰」:①大きすぎる工場(設備)、②多すぎる社員(雇用)、③大きすぎる借金(債務)
- 金融危機の発生(1997年)。
- バブル崩壊後の日本は、民間需要が弱く、外需に頼るしかなかった。→ITバブル崩壊やリーマン・ショックの影響が大きく、景気回復が中断される。
ITバブル(1999~2000年、アメリカ)
- 日本は恒久的な需要不足だが、海外では、すこしでも需要が伸びると需給が逼迫しインフレになってしまう国が多い。供給の効率化こそが経済成長に必要だと考える。
- ITによる企業の効率化→景気循環が消滅しインフレなき成長が永遠に続く経済【ニューエコノミー】。
- インフレがないので金融引き締めもない。
- 「経済成長と同じペースで企業の生産性が効率化していけば、永遠にインフレなき成長が続くことになる。それを可能にするのは夢の技術『IT』」
- アラン・グリーンスパン「根拠なき熱狂であると警告」(1996年12月)。「技術革新に遭遇しているのかも」とのちに前言を撤回。 ←バブル期にバブルであることを確信することは困難であることを物語っている。
住宅バブル(2003~2006年、アメリカ)
- ITバブル崩壊→景気悪化→金融緩和→低金利→住宅購入増→住宅価格上昇。
- 消費者物価は上昇しなかったため、金融は緩和されたまま。
- グリーンスパンは、バブル対策に金融政策を用いることに否定的。
- 住宅価格上昇を正当化する新しい理論「アメリカには移民が大量に流入してくるため、今後大量の住宅を必要とするから、住宅価格の上昇も住宅建設の活況も理に適っている」。
- サブプライム・ローンの証券化。
- 銀行による貸出審査が甘くなる。
- 発行体の依頼を受けて格付けするため、甘い格付けになる。
- 景気が良い時期の過去データを見て格付けする。
- 投資銀行の報酬体系がリスク選好的。CODを大量購入。
- 「他社と同じことをしていれば失敗しても許されるが、異なることをして失敗したら許されない」という考え。
- バブル崩壊のきっかけは、住宅価格の上昇が止まったこと。
- 日本では銀行が不良債権処理を先送りにしたため金融危機まで数年の間隔があった。アメリカは不良債権処理を急いだため、短期間で激しい危機となった。
- 金融機関の貸し渋り ←FRBが市場に巨額の資金供給。
- 大手銀行お自己資本不足 ←政府が公的資金注入。
- 借金で不動産を買った人々の破綻 →相場観に関係ない売り注文。
- 投資銀行が商業銀行に衣替え。
- ドット・フランク法で自己勘定取引、ヘッジファンド、格付会社に対する規制強化。
- リーマン・ショック、欧州危機を経て、日本の金融機関のプレゼンスが回復。