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第一章 語彙についての基礎知識
- 意味のネットワーク
- 内容語 vs 機能語
- 理解語彙 vs 使用語彙
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第二章 語彙の「量」を増やす
- 類義語
- 対義語
- 上位語 vs 下位語
- 語種(和語・漢語・外来語)
- 文字種(平仮名・片仮名・漢字)
- 話し言葉 vs 書き言葉
- 漢語副詞・接続助詞・接続詞
- 専門語(学術専門語・ビジネス専門語・趣味の専門語)
- 方言
- 新語 vs 古語
- 雅語
- 語構成(形態素)
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第三章 語彙の「質」を高める
- 誤用
- 重複・不足
- 連語の相性
- 語感のズレ
- 語の社会性
- 多義語
- 語の感性(比喩・ネーミング・オノマトペ)
- 敬語
第一章 語彙についての基礎知識
語彙について考える
内容語 |
名詞、動詞、形容詞など、実質的な意味を持つ語。 一生にわたって鍛える必要がある。 |
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機能語 | 助詞、助動詞、感動詞、接続詞など、文法的な機能を持つ語。 |
- 語形、意味、対象
理解語彙と使用語彙
理解語彙 | 聞いたり読んだりするときに、語形から意味を呼び出せる語の総体。 |
○使用語彙より数が多い。 ○記憶があいまい。 ○類推できる。 |
○読書で量を増やす。 ○細かいニュアンスは気にせず、類義語レパートリーを増やす。 ○語構成、漢字、文脈を活かした類推。 |
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使用語彙 | 話したり書いたりするときに使える語の総体。 |
○理解語彙よりずっと少ない。 ○語形と意味の結びつきが明確であること。 ○使われる環境との調和を考慮する。 |
第二章 語彙の「量」を増やす
- 語彙力 = 語彙の量(豊富な語彙知識)× 語彙の質(精度の高い語彙運用)
語の意味の体系性に注目し、 語彙のネットワークを鍛える。 |
類義語 |
対義語 | |
上位語と下位語 | |
文字を意識する。 | 語種 |
文字種 | |
文体情報を活用する。 使われる環境によって 語彙の出現に偏りがある。 |
話し言葉と書き言葉 |
日常語と専門語 | |
標準語と方言 | |
新語と古語 | |
経験を活用する。 | 実物 |
語の成り立ちを活用する。 | 語構成 |
類義語を考える
- 類語辞典を手元に置いておく。
対義語を考える
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対義語を考えると語彙力強化に繋がる3つの理由
- 頭の中の語彙のネットワークが意識され、記憶への定着力が高まる。
- もとの語の意味理解が深まる。
- 想像力が刺激され、言葉、さらには世界に対する感性が磨かれる。
上位語と下位語を考える
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提喩 (synecdoche シネクドキ)- 全体と部分の関係に依拠した表現技法。
- 上位語で下位概念を、下位語出上位概念を表す。
語種を考える
- 類語を、和語・漢語・外来語の3通りで表す。
- 和語・漢語・外来語をセットで考える習慣をつける。
対象 | 長所 | 短所 | |
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和語 (日本古来の固有語) |
身近な内容 |
耳で聞いて意味がわかる。 内容を易しく示せる。 |
抽象的な内容を表すのが不得手。 文体的に稚拙な印象を与えやすい。 |
漢語 (かつて中国から渡ってきた語) |
抽象的な内容 |
目で見て意味がわかる。 厳密な意味を表せる。 意味の類推が利きやすい。 硬い文章で抽象的な内容を表すのに向いている。 |
耳で聞いたときに意味がわかりにくい。 高度な知識が必要になり、文章が難解になりやすい。 |
外来語 (比較的最近海外 から入ってきた語) |
新しい内容 |
海外の最新の概念を手軽に取り込める。 |
目で見たときに意味がわかりにくい。 |
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混種語
- 豚肉 = 和語+漢語
- 送りバント = 和語+外来語
- ジェット機 = 外来語+漢語
文字種を考える
- 職場のバツイチ男性はすてきな人だけど、ふとっちょさんで食べる量が半端ない。
ひらがな | |
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カタカナ | |
漢字 | ○表現力が強いので、イメージを湧かせるのに向いている。 |
同音異義 | 投機、投棄、登記、冬季 |
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同訓異字 |
堅い、固い、硬い 変わる、代わる、替わる |
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和語副詞
固より もとより そうであることについて、なんら疑いをさしはさむ余地がないさま。いうまでもなく。 偏に ひとえに ただそれだけが原因・理由であることを強調する気持ちを表す。まったく。もっぱら。 徒に いたずらに 期待したとおりにならずに。無駄に。 頗る すこぶる 普通の程度をたいそう超えているさま。非常に。たいへん。 強ち あながち 断定しきれない気持ちを表す。必ずしも。一概に。
- 漢字は表現力が強い文字として意味の喚起に力を発揮する反面、その長所が弱点となる場合がある。ひらがなやカタカナを上手に取り混ぜることが大事。
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漢字が派生的意味を表す場合、漢字を使わず、カタカナを使ったほうが意味を取りやすくなる。
山が外れる → ヤマが外れる 壺を外す → ツボを外す 鴨にする → カモにする
書き言葉を考える
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和語を漢語に置き換えるときのポイント
- 和語のなかにある漢字一字を使った二字漢字を考える。
- 類語辞典を使う。
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例外的に、話し言葉になりやすい漢語もある。
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漢語副詞よりも和語副詞のほうが書き言葉的。
- 全然 vs まったく
- 全部 vs すべて
- 絶対 vs かならず
- 多分 vs おそらく
- 一番 vs もっとも
- 大体 vs ほぼ
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漢語副詞よりも和語副詞のほうが書き言葉的。
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接続助詞と接続詞は、話し言葉と書き言葉の差が表れやすく、
しかも話し言葉らしい表現と書き言葉らしい表現がセットになっていることが多いのでとくに注意。
- 出たから vs 出たので
- 広いけど vs 広いが
- だから vs したがって
- でも vs だが
専門語を考える
学術専門用語 |
○「子ども」→乳児、幼児、児童、生徒、学生、 ○「お金」→通貨、貨幣、為替、資本、資産、資金、利益、利子、利潤、 ○飽きてきたら新しい専門分野に移り、そこでもまた大量の本を読み込む。 |
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ビジネス専門語 |
○「オトナ語」:どの業種でも共通してよく使われるビジネス共通語 ○朝イチで、午後イチで、御社、弊社、キックオフ、アポ、さくっと、ざっくり、まるっと、 |
趣味の専門語 |
○スポーツ用語、将棋用語、 ○趣味を増やせば語彙が増える。 |
方言を考える
新語と古語を考える
- わかりやすい文章は、わかりやすさを優先するがゆえに、手垢のついた表現で構成されがち。 その結果、陳腐で脆弱な表現が増え、日本語の持っている豊かさが失われてしまう。 読者を惹きつける文章にするためには、表現上ひとひねりし、読者の頭を使わせる工夫が必要。
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雅語 - 古くから使われている上品で洗練された和語。
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宴 、認める 、 木の葉が舞う、耽る 、佇 まい、偲 ぶ
実物を考える
- 語彙は机上ではなく現場で学ぶもの、という感覚も重要。
語構成を考える
- 国立国語研究所 = 国立 + 国語 + 研究 + 所
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形態素
- 意味の最小単位。
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自由形態素
- 単語として使える形態素。
- 国立、国語、研究
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拘束形態素
- 他の形態素と一緒でないと使えない形態素。
- 所
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接辞
- 実質的な意味ではなく、文法的な機能を添えるもの。
- 接頭辞、接尾辞
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単純語
- 1つの語基で一語を形成する。
- 国語、研究
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複合語
- 複数の語基で一語を形成する。
- 国語研究
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派生語
- 語基と接辞を組み合わせて一語を形成する。
- 研究所
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語構成
- 形態素や語基・接辞といった、要素の結びつきによる語の成り立ち。
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形態素の使い分け
- 人、者、民
- 員、官、家、手、師、士
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形態素の造語力
- ○○ハラ
- ○○活
- ○○甲子園
- ○○力
第三章 語彙の「質」を高める
誤用を回避する
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音位転換(metathesis、メタセシス)
- ふんいき vs ふいんき
重複と不足を解消する
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重言 事前予約 時間の先後による重言が多い。 いっぱい入れすぎ 量の表現は過度であることを強調しがち。 おたがいに見つめ合う 副詞的な語と複合動詞の組み合わせ。
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換喩 (metonymy、メトニミー)- 冷蔵庫を開ける;扇風機を回す;電話を取る
連語の相性に注意する
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連語(collocation、コロケーション)
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連語の組み合わせ
現代日本語書き言葉均衡コーパス(BCCWJ)- 少納言
http://www.kotonoha.gr.jp/shonagon/
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連語の組み合わせ
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単純な動詞を使うと、それだけでは力が弱く感じられることがある。
そうしたときは、その動詞の意味に含まれる名詞、とくに身体名詞を使った組み合わせにすると、読み手に対する印象が強まる。
- 見る → 目にする;目に触れる;目を凝らす
- 聞く → 耳にする;耳に入る;耳を貸す;耳を傾ける
- 話す → 口にする;口を開く;口を閉じる;口を閉ざす
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私たちのあたまのなかの辞書はきっと、一語一語別々に収まっているのではなく、組み合わせで入っている。
- 善良な市民;軽快なリズム;平易な文章
- 語の組み合わせは社会的習慣として決っている。
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ちぐはぐな組み合わせが、おかしみを醸しだす。
- 渋滞の名所;現存する最古のメール
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語は単独で存在しているわけではない。
現実の文章ではいつも組み合わせとして存在している。
その組み合わせが自然だと、読み手が内容を理解しやすい。
あえて不自然にすると、読みてをはっとさせる印象的な表現も作れる。
語感のズレを調整する
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語感
- 語の意味そのものではなく、その語にまとわりついているイメージや、使用環境、プラスマイナスの評価のようなもの。
- 語感が問題になりやすいのは、語の評価に関わるもの。 プラスの語感のある語がネガティブな文脈で使われていたり、 反対にマイナスの語感のある語がポジティブな文脈で使われていたりすると、 読み手に違和感を与えやすくなる。
- 語のイメージを喚起する語感というものに敏感になり、語感と文脈の相性を考えれば、語の選択の制度を上げることが可能になる。
語を適切に置き換える
- 語のイメージ喚起力を強めたり弱めたりするために、語を置き換える。語の精度のピント合わせ。
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ぼかす置き換え
- 太っている → ぽちゃり
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明確化する置き換え
- オレオレ詐欺 → 振り込め詐欺
語の社会性を考慮する
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「言葉は文化」。しかし文化のなかにどっぷり浸かって暮らしていると、そのことはあまりピンとこない。
隠れた文化をあぶりだす概念 → 有評と無評
無評 | 典型的・一般的なもの。デフォルトの場合で、とくに標識がつかない。 | 赤いポスト、 赤い消防車 |
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有評 | 典型的・一般的でなく、特殊な標識がつく。 |
黒いポスト、青い消防車 国産若鶏、新米ササニシキ、徳用タマネギ、格安コーヒー、有機納豆、プレミアム・ビール |
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性差別語
- 女性が有評になる語:女医、女流作家、女性自衛官
多義語のあいまいさを管理する
- 書き言葉では、文脈に依存しない、一義的に決まる表現が好まれる。
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多義語に気づく方法
- 対義語を考える(高い ←→ 低い、安い)
- 同訓異字を考える(とる → 取る(取得)、採る(採取)、捕る(保護))
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他の言語への翻訳を考える(公園 → park、playground;時計 → clock、watch)
- 日本語のなかに区別がないのは形式上の問題で、意味の使い分けは確実にある。
- 公園(park)のなかを散歩する
- 公園(playground)で幼児を遊ばせ、ママ友とおしゃべりに興じる
- 時計(clock)のアラームをセットしてから寝た
- 時計(watch)をポケットに入れた
異なる立場を想定する
語の感性を研ぎ澄ませる
比喩 |
○何度も使われているうちに陳腐になる。 ○比喩は斬新な見立てを伝えて初めて、高い表現効果を得る。 |
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オノマトペ |
相手の気持ちに配慮する
敬語 | 素材敬語 | 文に登場する人物に使う敬語。 | 尊敬語 | 行為の主体(主語)に対して敬意を示す。 |
①お〜になる ②〜れる、〜られる ③特殊型 |
謙譲語 | 行為の対象(主語以外)に対して敬意を示す。 |
①お〜する ②特殊型 |
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対者敬語 | 聞き手に使う敬語。 | 丁寧語 | 常体(だ・である)に対する敬体(です・ます)。 | ①〜です、〜ます |
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慇懃無礼 - 丁寧な言葉を使うからこそ、かえって失礼になること。
- 相手が行為者でも、自分が行為者でも「ご」を付けてよい。ご確認、ご相談、ご連絡
- 相手と関わりなく、自分たちのなかだけで行為が完結する場合は「ご」を付けない。私のご検討、私のご都合
- そもそも立場が上の人がする行為には「ご」を付けない。ご教示、ご指導
心に届く言葉を選択する