2018年1月13日土曜日

『入門 ビットコインとブロックチェーン』

  • 第1章 ビットコインとは何か?
  • 第2章 ビットコインを実際に使うには
  • 第3章 銀行が仮想通貨を発行する
  • 第4章 ブロックチェーンとは何か?
  • 第5章 ブロックチェーンの応用が広がる
  • 第6章 シェアリング・エコノミーとブロックチェーン
  • 第7章 IoTとブロックチェーン
  • 第8章 分散自律型組織DAOが作る未来社会
第1章 ビットコインとは何か?
ビットコインと電子マネーの違い
  • 管理者がいない。
    • 利用者が直接に情報をブロックチェーンに送信することによって、取引がなされる。
    • コンピュータの集まりによって運営されている。P2Pが運営。
  • 世界的な通貨。
  • 価格が変動する。
アルトコイン order by 時価総額 as of 2017-11-09
1.Bitcoin
2.Ethereum
3.Bitcoin Cash
4.Ripple
5.Litecoin
6.Dash
7.NEO
8.NEM
9.Monero
10.IOTA
  • Ethereumの発音は「イーサリアム」ではなく「エセリウム」。アクセントは「セ」。

仮想通貨も現実通貨も本質的には同じ
  • 他の人が受け入れるから、自分も受け入れる。
フィンテック、4つのカテゴリー
1. 送金・決済 ○ウェブ送金(PayPal, Stripe, SPIKE)
○モバイル決済(Square)
2. 貸し付け ○ソーシャルレンディング
3. 保険 ○ビッグデータの活用によるきめ細かい保険
4. 人工知能 ○投資コンサルティング
ビットコインの分裂騒動
  • 従来の組織とは違い、意思決定機関がない。そのため方針がなかなか決まらない。
    →欠陥ではない。ビットコインが民主主義的であることの証。
従来の組織 中央集権的
ビットコイン 民主主義的
ビットコインの将来
  • 現在の問題=処理スピードが遅いこと。 仕様を拡張する必要がある。スケーラビリティ問題
  • 問題解決の切り札
    • 取引チャネル設定と最終的確定だけをブロックチェーンに報告するが、その間の取引はブロックチェーンに報告しない仕組み
      • マイクロペイメント・チャネル
      • ライトニングネットワーク
    • 少額高頻度取引(100分の1円を1秒間に何度も)が可能になり、ユーザ数が爆発的に増える可能性も。
第2章 ビットコインを実際に使うには
第3章 銀行が仮想通貨を発行する
3種類の仮想通貨
ビットコイン 国家の独占を破る管理者のいない通貨
メガバンクの仮想通貨 通貨自由化論の世界
中央銀行の仮想通貨 銀行の消滅?
ビッグ・ブラザーの世界?
銀行が発行する仮想通貨
  • MUFGコインは、銀行が発行して一般に使用できる仮想通貨として、世界で最初のケースになる可能性あり。
  • ビットコインの3つの問題を解決
    • 価格変動が激しい
    • 現実通貨との交換の際に損失が発生する可能性
    • 決済に時間がかかる
  • 送金手段としての側面を重視。
  • 成功するためのポイント
    • どれだけ広い範囲の送金に使えるか
    • 取引コスト
      • 現実通貨からの入金コスト
      • 送金コスト
    • 他行も仮想通貨を発行し、交換できること
中央銀行が発行する仮想通貨
  • ビットコインのような仮想通貨が主流になると、中央銀行が発行する通貨や決済システムの必要性が低下し、金融政策の有効性が低下してしまう。

  • 中央銀行が仮想通貨を発行すれば、ビットコインも銀行の仮想通貨も使われず、世の中のマネーが中央銀行の仮想通貨のみになるかも。
  • 全ての国民と企業が中央銀行に口座を持つようになる。

    銀行預金が消滅する。

    信用創造(貸出)ができなくなる。

  • シカゴ・プラン
    • 準備率を100%に。銀行は預金を全て中央銀行の当座預金に預けなければいけない。
    • 「信用創造が膨らむことで経済が不安定になる。だから銀行が信用創造をできないようにする。」という考えに基づく。

  • 中郷銀行が仮想通貨を発行すると、それが貨幣の大部分になるため、直接に経済全体の貨幣量をコントロールできるようになる。
将来の通貨体制、3つシナリオ
ビットコインのような仮想通貨が主流になるシナリオ ○管理者がいない分散型の社会。自由主義的な考えにマッチ。
○金融政策が効かない。
○税の徴収に支障が生じる。
メガバンクなどの銀行が発行する仮想通貨が主流となるシナリオ ○現在の預金が仮想鬱化に変わるだけの可能性。
○日銀ネットから独立した独自の通貨権が形成される可能性。
中央銀行が発行する仮想通貨が主流となるシナリオ ○「ビッグ・ブラザー」の社会。
○全国民が非常に細かく行動を監視される社会
フリードリッヒ・フォン・ハイエク、『貨幣の非国有化』
  • 「中央銀行が通貨発行を独占するのではなく、民間の金融機関が発行し、それらの間で競争が起きるのが望ましい。」
第4章 ブロックチェーンとは何か?
仕組み
  • 電子的な情報を記録する新しい仕組み。
  • 取引記録を、ネットワークの参加者全員で、公開された台帳に記入し、管理する。
  • 10分間に世界中で起きたビットコインの取引データをブロックという1つのまとまりに書き込む。
  • 【主な特徴】管理者が存在せず、自主的に集まったコンピュータが運営しているにもかかわらず、事業が信頼できること。そして記録が改ざんできないこと。
  • 不正が困難な分散型の取引台帳
  • クライアント・サーバー方式ではなく、ピアツーピア(P2P)による分散型の仕組み。


  • ハッシュ関数
    • 一方向関数。
    • ある方向に計算するのは簡単だが、逆方向に計算するのは著しく難しい関数。
    • 素数分解に似ている。
      • 「4770194」を素数分解するのは難しいが、「2」「11」「13」「13」「1283」が「4770194」の素数分解結果であることを確認することは超簡単。
  • マイニング
    • 「ハッシュ値が条件を満たすようなナンスを求める」という作業。
      (ハッシュ値の条件例:最初からある桁までゼロが並ぶこと)
  • プルーフ・オブ・ワーク
    • 「仕事量による証明」。
    • 悪意のあるハッキング等によるコイン偽造を防ぐためのもので、偽造するためにはより多くの「仕事量」を費やさなければならないという仕組み。
    • 改ざんを防ぐための必要悪
  • ビザンチン将軍問題
    • 「信頼できない者同士が集まって共同作業を行い、それでも裏切り者に陥られれないためには、どうしたらよいか?」
    • ブロックチェーンがこの問題に答えを出した。
      • 「悪いことをするのは倫理的によくないから、やらない」という性善説ではなく、「悪いことをしたら損をするから、やらない」という性悪説に立った仕組み。
    • 今まで 「相手がAmazonだから信頼できる」「相手が銀行だから信頼できる」
      ビットコイン 「信頼できないかもしれない人々がやっているのに、信頼できる事業」
  • 51%問題
    • 過半数のノードが結託すればデータを改ざんできる。


ブロックチェーンが可能にした、インターネットでもできなかったこと
  1. 経済的な価値を送ること
  2. 信頼を確立すること

  • 従来のインターネットが情報のインターネットであるのに対して、ブロックチェーンは価値のインターネット
ブロックチェーン革命がもたらしたこと
「ビザンチン将軍問題」の解決
相手の組織を信頼する必要がない、trustless 社会の実現
マネーを送れるようになった
巨大組織の有利性の消滅
組織に縛られずに働ける、独立自営業者の時代
パブリックとプライベート
  • プライベート・ブロックチェーンは、管理者の信頼性によって担保されている。パブリック型とは思想的にまったく異なる。「革命」とは呼べない。
第5章 ブロックチェーンの応用が広がる
金融での応用
通貨 ○ビットコイン型
○メガバンクが発行
○中央銀行が発行
保険 ○P2P保険(何人かの人が資金を拠出し、グループ内の個人に起きた事故に保険金を支払う仕組み)
○パラメトリック保険(損失額を測定してから保険金を支払うのではなく、特定の事象の生起に対して、即時に保険金を払う。例. 地震が発生したら自動的に保険金を支払う。)
証券 ○清算と決済が高速化
資金調達 ○ICOがIPOにとって代わる
金融以外での応用
スマートコントラクト あらかじめ決められている契約に従い、ブロックチェーンを用いて取引を自動的に行う。
契約の条件確認や履行が自動化される。
仮想通貨において実現済み。
正しさの証明 商品の履歴追跡、公的承認、土地登記、文書の存在証明
予測市場 胴元がいない透明なシステム
Augur(オーガー)
シェアリング・エコノミー UberやAirbnbのような仲介者がいない仕組み
IoT
第6章 シェアリング・エコノミーとブロックチェーン
シェアリング・エコノミーの本質
  • 従来からあるシェアリング(タクシー、レンタカー、ホテル、旅館)は、業者が提供するサービス。
  • シェアリング・エコノミーでは、サービスの供給者が、業者から個人になった
  • シェアリング・サービスの拡大ではなく、供給者の範囲拡大であり、就業機会の増大であると捉えるべき。
  • 個人の所得獲得機会を広げる。
規制
  • 消費者保護の観点からなされていた規制を正当化した理由は、情報の不完全性情報の非対称性。 その状況が、いま大きく変わろうとしている。
ブロックチェーンが変えるシェアリング・エコノミー
  • 仲介者や管理者がいなくなる。UberやAirbnbが不要になる。
  • Uber → La'Zooz (イスラエル)
  • スマートロック
    • 不特定多数が同じものを共有するシェアリング・エコノミーでは、ロックやキーが重要。
    • Slock.it(スロックイット)(ドイツ); ブロックチェーンで動いているので、Slock.itのメンバーが全員死んでも動きつづける。
    • ロックできるものなら、家、車、洗濯機、自転車など、なんでも誰もが簡単に貸したりシェアしたりすることを可能にする。
第7章 IoTとブロックチェーン
  • 現在のIoTシステムは、情報処理を集中的なシステムで行っている。社会主義国家が、計画経済を国家的規模で実現しようとしたのと基本的に同じ方式。
  • ↑システム運営コストが高い;サーバーに付加が集中してボトルネックが発生;攻撃されやすい
  • ブロックチェーンなら、運用コストが低く、攻撃にも強い。
量子コンピュータとブロックチェーン
  • 量子コンピュータの攻撃にも耐えられる仕組みのチェーン = IOTA(アイオータ)
    • ブロックチェーンの代わりに、Tangleという仕組みを使う。
第8章 分散自律型組織DAOが作る未来社会
DAO
  • Decentralized Autonomous Organization 分散自律型組織
  • 経営の必要がない、経営者がいなくてもよい、組織。
  • ビットコイン、Slock.it、Augur は DAO。
組織の自動化
ロボット化 労働者の仕事の自動化
○工場のオートメーション化
○銀行窓口をATMに
ブロックチェーンの応用 管理者の仕事の自動化
○ルーチンワークをブロックチェーンで自動化
DAO
組織の4形態
労働者がいる労働者がいない
経営者がいる 伝統的な株式会社 ロボットを使う会社
経営者がいない DAO AIとブロックチェーンによる完全自動会社
フラット化する世界
  • インターネットが普及したのに世界がフラット化しなかった理由
    • 経済的な価値を簡単に送ることができなかった (送金コストの点で、大規模事業が圧倒的に有利だった)
    • 真正性の証明ができなかった (零細企業は信頼性を獲得できず、大組織だけができた)

  • ブロックチェーンの世界においては、人や組織を信頼する必要がない。改ざんできないデータがブロックチェーンに埋め込まれているから。
  • 相手が大企業だから信頼できるのではなく、ブロックチェーンの仕組みで真正性が保証されているから信頼できる。
  • こうした世界では、組織の大きさに起因する不公平は消滅する。
  • IT革命はブロックチェーンによって完成される。


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