ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
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ダニエル・カーネマン
早川書房
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- 第1部 2つのシステム
- 第2部 ヒューリスティクスとバイアス
- 第3部 自信過剰
- 第4部 選択
- 第5部 2つの自己
第1部 2つのシステム
第1章 登場するキャラクター ―システム1(早い思考)とシステム2(遅い思考)
システム1 |
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---|---|
システム2 |
|
第2章 注意と努力 ―衝動的で直感的なシステム1
第3章 怠け者のコントローラー ―論理思考能力を備えたシステム2
第4章 連想マシン ―私たちを誘導するプライム(先行刺激)
プライミング効果
- 先行刺激(プライム)が、それを意識するしないにかかわらず、その後の判断や決定に影響すること。
- 「食べる」という単語を見聞きしたら穴埋め問題「so□p」に「soup」と答える確率が高まる。
イデオモーター効果
- 概念によって行動が変わるプライミング現象。
- 高齢者を連想させる言葉(フロリダ、忘れっぽい)を聞かせると歩行速度が落ちる。(フロリダ効果)
第5章 認知容易性 ―慣れ親しんだものが好き
認知容易性
単純接触効果(mere exposure effect)
- 「反復」が認知を容易にし、なじみがあるという心地よい感覚を与える。
- 生命体は新たに出現した刺激には慎重に反応しなければならない。単純接触効果は、社会的組織や集団の基盤を形成するものであり、心理的・社会的安定性の基盤となる。
その他
- 幸せな気分のときは、システム2のコントロールがゆるむ。ご機嫌だと直感が冴え、創造性が一段と発揮される一方で、警戒心が薄れ、論理エラーを犯しやすくなる。
第6章 基準、驚き、因果関係 ―システム1のすばらしさと限界
- 人間には、統計的な推論をすべき状況で因果関係を不適切に当てはめようとする傾向がある。統計的思考では、カテゴリーや集合の特性(基準率)に基づいて個別のケースの結論を下す。
第7章 結論に飛びつくマシン ―自分が見たものがすべて
確証バイアス(confirmation bias)
- 自分の信念と一致しそうなデータばかり探す。
- 連想記憶が確証バイアスを助長する。
ハロー効果(Halo effect)
- ある人のすべてを、自分の目で確かめてもいないことまで含めて好ましく思う(または全部を嫌いになる)傾向。
WYSIATI
- 自分が見たものがすべて(what you see is all there is)
- 限られた手元情報に基づいて結論に飛びつく傾向。
- 「自信過剰」、「フレーミング効果」、「基準率の無視」の要因となる。
第8章 判断はこう下される ―サムの頭のよさを身長に換算したら?
メンタル・ショットガン(mental shotgun)
- 過剰な情報処理
- ひとつの質問に答えようとしても、そこに照準を合わせることができず、他の情報処理が自動的に始まってしまう。
その他
- システム1は、プロトタイプあるいは代表的な例のセットでもって、あるカテゴリーを代表させる。このため、平均はうまく扱えるが、合計は苦手。
第9章 より簡単な質問に答える ―ターゲット質問とヒューリスティック質問
置き換え(substitution)
- システム1は、難しい質問を簡単な質問に置き換えて、それに答える。
- ターゲット質問をヒューリスティック質問に置き換える。
感情ヒューリスティック(affect heuristic)
- 好き嫌いがメリットやリスクの判断につながる。
- 感情的な要素が絡んでくると、システム2はシステム1の感情を批判するよりも、擁護に回る傾向が強まる。
第2部 ヒューリスティクスとバイアス
第10章 少数の法則 ―統計に関する直感を疑え
少数の法則
- 皮肉。
- 「大数の法則」が小さな標本サイズにもあてはまると勘違いすること。
- 小さい標本に対する過剰な信頼。
- 人間は標本サイズに対してしかるべき関心を示さない。
- 「標本サイズが小さくても抽出元の母集団とよくにているのだからかまわない」というバイアスも。
- メッセージの内容に注意を奪われ、その信頼性を示す情報にあまり注意しない。
ホットハンドの誤謬
- ランダム性の中に秩序や規則性を見つけ出してしまっているだけ。
第11章 アンカー ―数字による暗示
アンカリング効果(anchoring effect)
- ある未知の数値を見積もる前に何らかの特定の数値を示されると、見積もりはその特定の数値の近くにとどまる。
-
アンカリング効果を形成する2つのメカニズム
-
調整プロセスとしてのアンカリング(システム2の「不十分な調整」)
- 怠け者のシステム2がアンカーから調整を十分に行わない。
- 例)高速道路から下りた後にスピードを出しすぎる。
-
プライミング効果としてのアンカリング(システム1の自動動作)
- システム1が、アンカーが現実な数字となるような世界を構築しようとする。
- 連想活性化が一貫性を保つ現象の一種。
-
調整プロセスとしてのアンカリング(システム2の「不十分な調整」)
- 明らかにでたらめなアンカーであっても、効果が生じる。
- アンカーは、ヒントとして有用だと受け手が感じるから効果を持つわけではない。
- 交渉では先手が有利。先手の提示がアンカーになるため。
- 私たちの思考や行動は、その瞬間の状況に、自分が気づいている以上に左右される。
第12章 利用可能性ヒューリスティック ―手近な例には要注意
利用可能性ヒューリスティク(availability heuristic)
- 「事例が頭に思い浮かぶ容易さ」で頻度を判定する。
-
容易に思い浮かぶ事例の具体例:
- 注意を引き付けるような目立つ事象
- 世間の耳目を集めるような事象
- 個人的に直接経験したこと
- 自分の仕事は容易に思い出せるので、他メンバーより自分の貢献度を大きいと考える。
第13章 利用可能性、感情、リスク ―専門家と一般市民の意見が対立したとき
感情ヒューリスティック
- 感情に従って意思決定を行なう。
- 「置き換え」の一種。難しい質問を易しい質問(好きか嫌いか)に置き換える。
- 「感情というしっぽは合理的な犬を振り回す」
利用可能性カスケード(availability cascade)
- 些細な出来事をメディアが報道することから始まり、一般市民のパニックや大規模な政府介入に発展すること。
- 利用可能性カスケードを引き起こすに成功しているのがテロリスト。テロ攻撃による死亡者数は他の死因よりも少ないが、より大きな恐怖を与えている。
第14章 トム・Wの専攻 ―「代表性」と「基準率」
基準率(base rate)
- 母集団における各カテゴリーの構成比率。
- 有用の情報がないときは基準率に頼るのが得策。
代表性ヒューリスティク(representativeness heuristic)
- 代表性=ステレオタイプとの類似性
- 確率や可能性を見積もるのは難しいが、類似性を判断するのはたやすい。
- 確率や可能性を尋ねられると、メンタル・ショットガンが始動し、より簡単な質問への答えを引っ張り出す。この簡単な答えの一つが代表性の評価。
代表性の罠/基準率の無視
- 基準率が代表性とはちがうことを示唆しているときに、基準率情報を無視してしまう。
- 代表性があるからといって、基準率の低い事象がきっと起こると思い込む。
第15章 リンダ ―「もっともらしさ」による錯誤
連言錯誤(conjunction fallacy)
- リンダがフェミニストの代表性をもっているからといって、リンダが「フェミニスト銀行員」である可能性が「銀行員」である可能性よりも高く見積もってしまう。
過ぎたるは及ばざるがごとし(less is more)
- 傷物が1つ含まれる食器10個セットの価値は、傷物を取り除いた9個セットよりも、低く評価される。
- 価値評価においてシステム1は、合計するではなく平均する癖がある。
第16章 原因と統計 ―驚くべき事実と驚くべき事例
台数比率 :緑タクシー85%, 青タクシー15% 目撃者の信頼度:80% (青タクシーを目撃) 過去の事故 :緑タクシー85%, 青タクシー15% 目撃者の信頼度:80% (青タクシーを目撃) ⇒犯人が青タクシーの確率=41%
ベイズ・ルール
- 事後確率比=事前確率比×尤度
- 青である確率/緑である確率 = 15%/85% × 80%/20%
統計的基準率(台数比率)
- 過小評価され、ときに無視される。
因果的基準率(過去の事故)
- 他の事象と容易に関連付けされる。
その他
- システム1は、因果関係が形成されるシナリオは扱えるが、統計的な推論には弱い。
第17章 平均への回帰 ―褒めても叱っても結果は同じ
平均への回帰(regression to the mean)
- 2種類の計測値の相関が完全でない場合には必ず平均回帰が起こる。
- ランダム事象につきものの変動に因果関係を当てはめてしまう。
- 子は常に親より並になる。
その他
- 相関と回帰、は同じ概念を別の角度から見ているだけ。
- 因果関係を見つけたがる強いバイアス。
- 回帰現象に間違った因果関係を当てはめる。
第18章 直感予測の修正 ―バイアスを取り除くには
- 小さい標本ほど極端な結果が出る可能性が高い。
- 大幅に平均に回帰させなければならない。
第3部 自信過剰
第19章 わかったつもり ―後知恵とハロー効果
講釈の誤り(narrative fallacy)
- 過去について根拠薄弱な説明をつけ、それを真実だと信じることによって、のべつ自分をだましている。
- 私たちが納得できるストーリーは単純で、抽象的ではなく具体的、偶然よりも才能や愚かさや意志から成る。起らなかった無数の事象よりも、たまたま起きた衝撃的な事象に注目。最近起きた目立つ出来事は、因果関係をでっちあげる後講釈の題材になりやすい。
ハロー効果
- ある人のたった1つの目立つ特徴についての判断に、すべての資源に対する評価を一致させるよう仕向ける。
後知恵バイアス(hindsight bias)
- 「私はずっとしっていた」効果
- 過去における自分の理解の状況や過去に持っていた自分の意見を正確に再構築できない。
結果バイアス(outcome bias)
- 決定に至るプロセスが適切だったかどうかではなく、結果がよかったか悪かったかで質を判断する。
その他
- 自分の決定が後知恵で詮索されやすいと承知している意思決定者は、リスクを取ることを嫌がるようになる。
- 一握りの幸運なギャンブラーは、大胆な行動と先見性のハロー効果によって「勇気あるリーダー」という称号を手に入れる。
-
企業の成功とCEOの手腕との相関係数は0.3。
類似のA社とB社。A社の CEOがB社のCEOよりも優れている場合、A社がB社よりも好業績を上げる確率は60%。 - 『ビジョナリー・カンパニー』。2社を比較し、勝者の経営手法を誇張。運が大きな役割を果たしているのに。
第20章 妥当性の錯覚 ―自信は当てにならない
妥当性の錯覚(illusion of validity)
- 自信を表明するのは、頭のなかでつじつまの合うストーリーを作りました、と宣言するのと同じ。そのストーリーが真実だということにはならない。
スキルの錯覚(illusion of skill)
- 金融業界のように、高度なスキルを要するゲームよりも、サイコロ投げに似ている仕事なのに、自分にスキルがあると思うこと。
- 錯覚の原因:銘柄選定する人たちが実際に高度なスキルを駆使しているから。経済データや財務諸表を分析している。
その他
- 認知容易性と連想一貫性に基づく理解が、主観的な自信をシステム1に植え付けている。
- 主観的な自信は感覚であって判断ではない。
- 過去は容易に説明できると感じられるため、大方の人は未来が予測不能だとは考えようとしない。
- 今日後知恵で説明がつくなら昨日予測できたはずだ、という直感をどうしても拭い去ることができない。
- 過去をわtかっているという錯覚が、未来を予測できるという過剰な自信を生む。
- 知識の限界収益が減少に転じる点は、驚くほど早くやってくる。
第21章 直感 対 アルゴリズム ―専門家の判断は統計より劣
- 専門家は自分に高いスキルがあることは知っているが、そのスキルの限界を理解していない。
- 単純で統計的なルールのほうが直感的な「臨床」判断よりも正しい。チェックリストとか。
- アルゴリズムのミスで子供が死んだら、ヒューマンエラーのせいで死ぬよりも耐え難い。感情的な痛手のちがいが、人間による判断を好むことにつながっている。
第22章 エキスパートの直感は信用できるか ―直感とスキル
- 感情を伴う学習は短期間でできるが、エキスパートが身につけているような知識やスキルの習得には時間がかかる。
-
直感がスキルとして習得できる条件
- 十分に予見可能な規則性を備えた環境であること。
- 長期間にわたる訓練を通じてそうした規則性を学ぶ機会があること。
第23章 外部情報に基づくアプローチ ―なぜ予想ははずれるのか
計画の錯誤
- ベストケース・シナリオに非現実的なほど近い。
- 類似のケースに関する統計データを参照すれば改善の余地がある。
- 楽観バイアスのひとつ。
サンクコストの錯誤
第24章 資本主義の原動力 ―楽観的な企業家
- 影響力のある人たちは、楽天的かつ自信過剰で多くのリスクをとる。
死亡前死因分析(premortem)
- いまが一年後として、計画が失敗した経緯をまとめる。
- 懐疑的な見方に正統性を与える。
第4部 選択
第25章 ベルヌーイの誤り ―効用は「参照点」からの変化に左右される
期待効用理論
- 心理学ではなく、合理性の原理に基づいた選択の理論。
- ヒューマンではなくエコンを前提に。
プロスペクト理論
- By ダニエル・カーネマン & エイモス・トヴェルスキー
- 期待効用理論を土台に。
ベルヌーイの誤り
- ベルヌーイ「富の限界効用が逓減するため、意思決定者はリスク回避的になる。」
- 富の多寡ではなく、参照点(reference point)からの変化によって幸福の度合いが決まる。
第26章 プロスペクト理論 ―「参照点」と「損失回避」という2つのツール
プロスペクト理論
- 評価が中立の参照点(reference point)に対して行われる。
- 感応度逓減性(diminishing sensitivity)である。
- 損失回避性(loss aversion)である。
- 利得と損失は価値の「媒体」。グラフの中心が「参照点」。S字であり左右対称ではない。
- ベルヌーイの理論では富の状態が価値の媒体。
損失回避
- 利益よりも損失を強く感じる。
- 損失の2倍の利益が見込めないと、ギャンブルには乗らない。
リスク回避 |
[v] 100%の確率で900ドルを得る [ ] 90%の確率で1000ドルを得る |
---|---|
リスク追及 |
[ ] 100%の確率で900ドルを失う [v] 90%の確率で1000ドルを失う …どちらに転んでも悪い目の出るギャンブルでは、感応度の逓減によりリスク追求的になる。 |
第27章 保有効果 ―使用目的の財と交換目的の財
現状維持バイアス(status quo bias)
- デメリットはメリットより大きいため、現状にとどまることを選ぶ。
保有効果(endowment effect)
- 保有物を手放す苦痛は、同等の物を手に入れる喜びよりも大きい。
- 保有している状態が参照点。
- 交換目的か使用目的か。
- 使用目的の物を手放すとき、嫌悪感や苦痛を伴う。
- 取引経験を重ねると、保有効果がなくなる。
- 保有状態の比較で保有効果を防止。AとBを比較するのではなく、Aを保有することとBを保有することを比較する。
第28章 悪い出来事 ―利益を得るより損失を避けたい
-
マイナスはプラスを圧倒する(損失回避)
- 山盛りサクランボの中の一匹のゴキブリ
- 長年にわたる友情も一度の行動で壊れる
- 「よい」と「悪い」の境界が参照点になる。
- 利得を手に入れようとする動機よりも、損失を避けようとする動機のほうが強い。
第29章 四分割パターン ―私たちがリスクを追うとき
可能性の効果(possibility effect)
- 0%から5%への変化はインパクトが大きい。
- 小さな可能性・リスクを過大評価する。
確実性の効果(certainty effect)
- 95%から100%への変化はインパクトが大きい。
- ほぼ確実な結果は、確実な結果に比べ、過小評価される。
決定加重(decision weight)
- 意思決定において、人々が結果に割り当てる重み
- 可能性の低い結果に過大な重み(可能性の効果)
- 確実な結果に比べ、ほぼ確実な結果に過小な重み(確実性の効果)
四分割パターン
利得 | 損失 | |
---|---|---|
高い確率 確実性の効果 |
|
|
低い確率 可能性の効果 |
|
|
第30章 めったにない出来事 ―「分母の無視」による過大評価
分母の無視(denominator neglect)
- 1/10の当り確率より、8/100の当り確率を選好してしまう。
- 相対的な頻度表現(○○人に○人)のほうが、抽象的な「確率」「可能性」「リスク」などの言葉を使うより、確率の低い事象が過大評価される。
その他
- 流暢性・鮮明性・顕著性・認知容易性が決定加重を増やす方向に作用する。
- 稀な事象は無視か過大評価。
第31章 リスクポリシー ―リスクを伴う決定を総合的に扱う
- 複数の決定を一つにまとめて扱える場合には、常にそうするほうが良い。
- 勝てば200ドルもらえ負ければ100ドル失るギャンブル。1回だけならやらないが(狭いフレーミング)、100回やるならやってもいい(広いフレーミング)。
- 広いフレーミングでは損失に対する感情反応が抑えられたり、リスクをとろうとする傾向が強まる。
- 25部門からなる会社。部長が躊躇するリスクも、CEOなら躊躇せずテイクする。
リスク回避 |
[v] a. 100%の確率で240ドルを得る [ ] b. 25%の確率で1000ドルを得る |
リスク追求 |
[ ] c. 100%の確率で750ドルを失う [v] d. 75%の確率で1000ドルを失う |
合理的 |
[ ] a+d. 25%の確率で240ドルを得る、75%の確率で760ドルを失う [v] b+c. 25%の確率で250ドルを得る、75%の確率で750ドル失う |
第32章 メンタル・アカウンティング ―日々の生活を切り盛りする「心理会計」
気質効果(disposition effect)
- 負け組株ではなく勝ち組株を売ること。負けをみとめるのはプライドが傷つく。
- 自分の中の感情を赤字で締めたくないという感情。
- 投資家が銘柄ごとに勘定を設定しているため。合理的な投資家はポートフォリオ全体で考える。
メンタル・アカウンティング(mental accounting)
- エコンは総合的に判断する。
- ヒューマンは別々の勘定に仕訳し、限られた思考力で管理できる範囲に考慮の対象を制限する。
サンクコストの錯誤(sunk-cost fallacy)
- 損をしている勘定に追加資金を投じる。
- 前売り券を買ってしまったからといって、吹雪のなか外出する。
- だめな仕事・不幸な結婚・見通しの暗い研究に見切りをつけられない。
後悔
- 反事実感情。現実に起きたのとは異なる状況が思い浮かぶからこそ引き起こされる感情。
-
行動して生み出された結果に対しては、行動せずに同じ結果になった場合よりも、強い感情反応が生まれる。
- B株に乗り換えずにA株を持ち続けたため、1200ドルの利益を逃した。
- B株からA株に乗り換えたため、1200ドルの利益を逃した。
- 人間は実際に感じる以上に深い航海を予測しがち。人間に備わっている心理的防衛メカニズム「心理的免疫システム」を過小評価している。
トレードオフのタブー視
- あらゆるリスクの増加は絶対に認めない。
- 後悔したくないという利己的な恐れに動機づけられている場合が少なくない。
- 一番高く一番安全なチャイルドシートを見たら、安物を買えなくなる。
第33章 選好の逆転 ―単独評価と並列評価の不一致
選好逆転
- 単独評価と並列評価とで選好が逆転すること。
- 単独評価はシステム1、並列評価はシステム2。
- より広い総合的な枠組みで考えるほうが、合理的な判断が下されやすい。
- 並列評価は、明らかに単独評価より広い枠組みである。
第34章 フレームと客観的事実 ―エコンのように合理的にはなれない
フレーミング効果
- 問題の提示の仕方が選好に不合理な影響をおよぼす。
- 「損失」という言葉は、「費用」という言葉より、ずっと強い嫌悪感をかき立てる。
- {10%確率で95ドルもらえ、90%確率で5ドル失うギャンブル}はやらないが、{10%確率で100ドルもらえ、90%確率で何ももらえない宝くじの券}を5ドルで買う。
- より広いフレーミングで考え、より一般的なメンタル・アカウントに計上すれば妥当な決定に到達する。芝居のチケットを紛失したら「芝居」勘定ではなく「収入」勘定に損失計上すれば、再びチケットを買うことに抵抗がなくなる。
第5部 2つの自己
第35章 2つの自己 ―「経験する自己」と「記憶する自己」
ピーク・エンドの法則
- 記憶に基ずく評価は、ピーク時と終了時の苦痛の平均でほとんど決まる。
持続時間の無視
- 検査の持続時間は、苦痛の総量の評価にはほとんど影響をおよぼさない。
経験する自己(experiencing self)
- 「いま痛いか?」に回答する自己
記憶する自己(remembering selfl)
- 「全体としてどうだったか?」に回答する自己
- 合計ではなく平均や基準や代表性にこだわるシステム1が働く。
第36章 人生は物語 ―エンディングがすべてを決める
- 「幸せの総量」は、全人生にわたって実感されたしあわせの合計ではなく、人生における代表的な時間のしあわせとして認識される。
- 私は「記憶する自己」なのであって、実際の場面に直面している「経験する自己」は、私にとって他人のようなもの。
第37章 「経験する自己」の幸福感 ―しあわせはお金で買えますか?
フロー状態
- 芸術家が創作活動をしているときに感じる状態。
- 中断したくない、ずっとやっていたいと強く願うような状態。
その他
- もうそれ以上は幸福感を味わえないという所得の閾値は約7万5000ドル。
- 幸せになるいちばん簡単な方法は、時間の使い方を自分でコントロールすること。自分の好きなことをする時間を増やせばいい。
第38章 人生について考える ―幸福の感じ方
焦点錯覚(forcusing illusion)
- そのとき注意が向けられていた生活の一要素が、総合評価において不相応に大きな位置を占めること。
- あなたがあることを考えているとき、人生においてそのこと以上に重要なことは存在しない。
- 気候が良いのでカリフォルニア住人が幸せだと予測する。気候だけが幸福の決定要因ではないのに。
その他
- 幸福感も生活満足度も、持って生まれた性格によって決まるところが大きい。
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