2017年4月25日火曜日

『サピエンス全史』

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福
ユヴァル・ノア・ハラリ
河出書房新社
売り上げランキング: 124
  • 歴史年表
  • 第1部 認知革命
    • 第1章 唯一生き延びた人類種
    • 第2章 虚構が協力を可能にした
    • 第3章 狩猟採集民の豊かな暮らし
    • 第4章 史上最も危険な種
  • 第2部 農業革命
    • 第5章 農耕がもたらした繁栄と悲劇
    • 第6章 神話による社会の拡大
    • 第7章 書記体系の発明
    • 第8章 想像上のヒエラルキーと差別
  • 第3部 人類の統一
    • 第9章 統一へ向かう世界
    • 第10章 最強の征服者、貨幣
    • 第11章 グローバル化を進める帝国のビジョン
    • 第12章 宗教という超人間的秩序
    • 第13章 歴史の必然と謎めいた選択
  • 第4部 科学革命
    • 第14章 無知の発見と近代科学の成立
    • 第15章 科学と帝国の融合
    • 第16章 拡大するパイという資本主義のマジック
    • 第17章 産業の推進力
    • 第18章 国家と市場経済がもたらした世界平和
    • 第19章 文明は人間を幸福にしたのか
    • 第20章 超ホモ・サピエンスの時代へ

第1章 人類が新たに取り組むべきこと
第1部 ホモ・サピエンスが世界を征服する
第2部 ホモ・サピエンスが世界に意味を与える
第3部 ホモ・サピエンスによる制御が不能になる
歴史年表
135億年前 物質とエネルギーが現れる。物理的現象の始まり。
原子と分子が現れる。化学的現象の始まり。
45億年前地球という惑星が形成される。
38億年前有機体(生物)が現れる。生物学的現象の始まり。
600万年前ヒトとチンパンジーの最後の共通の祖先。
250万年前アフリカでホモ(ヒト)属が進化する。最初の石器。
200万年前 人類がアフリカ大陸からユーラシア大陸へ拡がる。
異なる人類種が進化する。
50万年前ヨーロッパと中東でネアンデルタール人が進化する。
30万年前火が日常的に使われるようになる。
20万年前東アフリカでホモ・サピエンスが進化する。
7万年前 認知革命が起こる。虚構の言語が出現する。
歴史的現象の始まり。ホモ・サピエンスがアフリカ大陸の外へと拡がる。
4万5000年前 ホモ・サピエンスがオーストラリア大陸に住みつく。
オーストラリア大陸の大型動物相が絶滅する。
3万0000年前ネアンデルタール人が絶滅する。
1万6000年前 ホモ・サピエンスがアメリカ大陸に住みつく。
アメリカ大陸の大型動物相が絶滅する。
1万3000年前 ホモ・フローレシエンシスが絶滅する。
ホモ・サピエンスが唯一生き残っている人類種となる。
1万2000年前 農業革命が起こる。
植物の栽培化と動物の家畜化。永続的な定住。
5000年前最初の王国、書記体系、通貨。多神教。
4250年前最初の帝国――サルゴンのアッカド帝国。
2500年前 硬貨の発明――普遍的な貨幣。
ペルシア帝国――「全人類のため」の普遍的な政治的秩序。
インドの仏教――「衆生を苦しみから解放するため」の普遍的な真理。
2000年前中国の漢帝国。地中海のローマ帝国。キリスト教。
1400年前イスラム教。
500年前 科学革命が起こる。
人類は自らの無知を認め、空前の力を獲得し始める。
ヨーロッパ人がアメリカ大陸と各海洋を征服し始める。
地球全体が単一の歴史的領域となる。
資本主義が台頭する。
200年前 産業革命が起こる。
家族とコミュニティが国家と市場に取って代わられる。
動植物の大規模な絶滅が起こる。
今日 人類が地球という惑星の境界を超越する。
核兵器が人類の生存を脅かす。
生物が自然選択ではなく知的設計によって形作られることがしだいに多くなる。
未来 知的設計が生命の基本原理となるか?
ホモ・サピエンスが超人たちに取って代わられるか?
第1部 認知革命
第1章 唯一生き延びた人類種

不面目な秘密 / 思考力の代償 / 調理をする動物 / 兄弟たちはどうなったか?

歴史の道筋を決めた3つの革命
70,000年前 認知革命 ○「生物学」ではなく「歴史」を始動
12,000年前 農業革命 ○歴史の流れを加速
500年前 科学革命 ○歴史に終止符を打ち、何かまったく異なる展開を引き起こす可能性がある

ホモ・サピエンス
種小名
ヒト科 ホモ(ヒト)属 サピエンス(賢い)
  • 現生人類 = ホモ・サピエンス
  • 人類   = ホモ属の生き物
  • 約200万年前から1万年前まで、いくつかの人類種が同時に存在していた。
    (ホモ・ネアンデルターレンシス、ホモ・エレクトス、ホモ・ソロエンシス、・・・)
  • 特異なのは、複数の種が存在した過去ではなく、ホモ・サピエンスしか存在しない現在。
  • ホモ・サピエンスが世界を征服できたのは「言語」のおかげ。(第2章)
人類の歴史と真理を理解する上での1つの鍵
  • ホモ属は食物連鎖の中ほどに位置する、取るに足らない生き物だった。
  • 人類はあっという間に食物連鎖の頂点に上り詰めた。生態系は順応する暇がなかった。人類自身も順応しそこなった。
  • 捕食者の大半は自身に満ちた生き物。人類はもともと負け組だったので恐れと不安でいっぱい。それゆえ残忍で危険な存在。
火、調理
  • 火 → 調理 → 消化を助ける → 腸が短く → エネルギー節約 → 脳を巨大化
  • 火の力は、人体の形状や構造、強さによって制限されない。
第2章 虚構が協力を可能にした

プジョー伝説 / ゲノムを迂回する / 歴史と生物学

認知革命
  • 認知革命 = 新しい思考と意思疎通の方法の登場
  • たまたまの突然変異によるもの。
  • サピエンスの新しい言語が生まれる。
    • まったく存在しないものについての情報を伝達できるようになる。
    • 「虚構」、すなわち架空の事物について語る能力が、サピエンスの言語の特徴として異彩を放っている。
    • 伝説や神話、神々、宗教は、認知革命に伴って初めて現れた。
  • 共通の神話 ⇒ 大勢で柔軟に協力するという空前の能力をサピエンスに与える
  • 人間の大規模な協力体制は何であれ、人びとの集合的想像の中にのみ存在する共通の神話に根ざしている。
原始的な人々 ○死者の霊や精霊の存在を信じ、満月の晩に集まって焚火の周りで踊り、それによって社会秩序を強固にする。
現代人 ○現代の制度もまったく同じ基盤に依って機能している。
○有限責任会社も虚構のひとつ。法的虚構。私たちはそれが自分たちの想像の中にのみ存在していることを忘れている。

  • 聖職者も魔術師もCEOも、すべては物語を語ることと、人々を説得してその物語を信じさせることにかかっている。
  • 歴史の大半は、どうやって厖大な数の人を納得させ、神、国民、あるいは有限責任会社にまつわる特定の物語を彼らに信じてもらうかという問題を軸に展開してきた。 そのおかげで、無数の見知らぬ人どうしが力を合わせ、共通の目的のために精を出すことが可能になるから。
  • 人々の協力の仕方は、物語を変えることによって、変更可能になった。遺伝進化の交通渋滞を迂回できるようになった。
  • 私たちとチンパンジーの真の違いは、多数の個体や家族、集団を結びつける神話という接着剤。この接着剤が私たちを万物の支配者に仕立てた。
新しい能力 より広範な結果
取り巻く世界について、以前よりも大量の情報を伝える能力 ライオンを避けたり、バイソンを狩ったりするといった、複雑な行動の計画立案と遂行
社会的関係について、以前よりも大量の情報を伝える能力 最大150人から成る、以前より大きく、まとまりのある集団
精霊や国民、有限会社、人権といった、現実には存在しないものについての情報を伝える能力 a. 非常に多数の見知らぬ人どうしの協力
b. 社会的行動の迅速な革新

第3章 狩猟採集民の豊かな暮らし

原初の豊かな社会 / 口を利く死者の霊 / 平和か戦争か? / 沈黙の帳

  • 進化心理学:私たちの脳と心は今日でさえ狩猟採集生活に適応していると主張。
  • 狩猟採集民は何千もの個別の部族に分かれ、何千もの異なる言語と文化を持っていた。途方に暮れるほどの多様性。
  • 食べ物を探して歩き回りながら生活 → 直近の環境について、幅広く、深く、多様な知識を持っていた
  • 人類全体としては、今日のほうが古代の集団よりもはるかに多くを知っている。しかし、個人のレベルでは、古代の狩猟採集民は、知識と技能の点で歴史上最も優れていた。
  • 古代の狩猟採集民は農耕民よりも健康 ← 健康に良く多様な食物、短い労働時間、感染症の少なさ
第4章 史上最も危険な種

告発のとおり有罪 / オオナマケモノの最期 / ノアの方舟

オーストラリア大陸への上陸
  • 歴史上屈指の重要な出来事
    古代の狩猟採集民によるオーストラリア大陸上陸
    コロンブスによるアメリカへの航海
    アプロ11号による月面着陸
  • 大型の陸上哺乳類動物がアフロ・ユーラシア大陸からオーストラリア大陸へ渡るのに成功したのは人類が初めて。
  • ホモ・サピエンスが特定陸塊で食物連鎖の頂点に立った瞬間である。
  • これ以降、人類は地球という惑星の歴史上で最も危険な種となった。
  • オーストラリアへの移住者は、ただ適応しただけでなく、大陸の生態系を元の面影がないほどに変えた。
  • オーストラリア大陸の大型動物相の絶滅は、ホモ・サピエンスによる最初の重大な生態学的惨事。
絶滅の波
第一波 狩猟採集民の拡がりに伴うもの
第二波 農耕民に拡がりに伴うもの
第三波 今日の産業活動が引き起こしているもの
第2部 農業革命
第5章 農耕がもたらした繁栄と悲劇

贅沢の罠 / 聖なる介入 / 革命の犠牲者たち

  • 私たちが摂取するカロリーの9割以上は、私たちの祖先が紀元前9500年〜紀元前3500年にかけて栽培化した、ほんの一握りの植物
    = 小麦、稲、トウモロコシ、ジャガイモ、キビ、大麦
私たちの心 ← 古代の狩猟採集民のもの
私たちの食 ← 古代の農耕民のもの
  • 農耕は一つの発祥地から世界に拡がったのではなく、さまざまな場所で独立して発生した。
農業革命は史上最大の詐欺
  • ホモ・サピエンスが一握りの食物種を栽培化したのではなく、逆にホモ・サピエンスがそれらに家畜化された。
  • 農耕民は狩猟採集民よりも困難で満足度の低い生活を余儀なくされた。
  • 人口爆発と飽食のエリート層の誕生につながった。
  • 農業革命により、単位面積あたりの土地から多くの食物が得られ、ホモ・サピエンスは指数関数的に数を増やせた。
  • 狩猟採集時代よりも劣悪な条件下であっても、より多くの人を活かしておく能力こそが農業革命の真髄。
  • 劣悪な条件であっても、人口が増加したため、もう引き返せない
    • 人々は、自らの決定がもたらす結果の全貌を捉えきれない。
    • 小さな変化が積み重なって社会を変えるまでには何世代もかかる。社会が変わったころには、過去を思い出せる人が誰もいない。
    • より楽な暮らしを求めたら、大きな苦難を呼び込んでしまった。
    • 歴史の数少ない鉄則の1つ:贅沢品は必需品となり、新たな義務を生じさせる。(過労→贅沢→過労...)
  • 産業革命からの教訓: 進化上の成功と個々の苦しみとの乖離
  • 家畜化された動物にとっても農業革命は恐ろしい惨事。
第6章 神話による社会の拡大

未来に関する懸念 / 想像上の秩序 / 真の信奉者たち / 脱出不能の監獄

  • 農耕民の空間は縮小、時間は拡大。
  • 農耕民は未来を念頭に置き、未来のために働く。→未来に対する不安
  • 農耕民の余剰食糧によって暮らす支配者やエリート層が台頭。
  • 没収された食糧の余剰が、政治・戦争・芸術・哲学の原動力に。歴史とは、ごくわずかの人の営みであり、残りの人々は畑を耕していた。
想像上の秩序
  • 数十人から成る生活集団で進化(何百万年もの間)

    農業革命や帝国の誕生で集団が大規模に(数千年の間)  
  • ↑期間が短すぎて本能が進化するのが間に合わない → 神話を共有することで対応
  • 歴史上とりわけ有名な2つの神話
    ハンムラビ法典 ○法律と裁判の判決を集めたもの。
    ○バビロニアの社会秩序が神々によって定められた普遍的で永遠の正義の原理に根ざしていると主張。
    ○【ヒエラルキーの原理】人々は2つの性と3つの階級(上層自由人・一般自由人・奴隷)に分けられている。家族の中にも厳密なヒエラルキーを定めている。
    アメリカ独立宣言 ○万人は平等に造られており、奪うことのできない特定の権利を造物主によって与えられており、その権利には、生命・自由・幸福の追求が含まれる。
  • ↑「ヒエラルキー」と「平等」の矛盾。
  • 両者はともに間違っている。何ら客観的な正当性はない。 現実は、平等やヒエラルキーのような普遍的で永遠の正義の原理に支配されていると想像したが、そのような普遍的原理が存在するのは、サピエンスの豊かな想像や、彼らが創作して語り合う神話の中だけ。
  • 生物学的な言葉で言い換えたアメリカ独立宣言 万人は異なった形で進化しており、変わりやすい特定の特徴を持って生まれ、その特徴には、生命と、快感の追求が含まれる。
  • 私たちが特定の秩序を信じるのは、それが客観的に正しいからではなく、それを信じれば効果的に協力して、より良い社会を作り出せるから。

  • 社会を維持している秩序は、偉大な神々あるいは自然の法則によって生み出された客観的実体であると、つねに主張する。また、人々を徹底的に教育する。
自分の人生をまとめ上げている秩序が自分の想像の中にしか存在しないことに人々が気づくのを防げている3つの要因
  1. 想像上の秩序は物質的世界に埋め込まれている
    • 個人主義(人の価値は他の人がどう思うかに左右されないという信仰)→ 子供の一人部屋
    • 中世の貴族は個人主義を信仰していなかったので、子供の一人部屋などなかった。人の価値は社会のヒエラルキーにその人が占める位置や、他の人々がその人についてどう言っているかで決まっていた。
  2. 想像上の秩序は私たちの欲望を形作る
    • 誰もがすでに存在する想像上の秩序の中へと生まれてきて、その人の欲望は誕生時から、その秩序のなかで支配的な神話によって形作られる。
    • 「今日の西洋人が大切にしている欲望」を形作っている神話
      ロマン主義 【主張】人間としての自分の潜在能力を最大限発揮するには、できるかぎり多くの異なる経験をしなくてはならない
      【神話】新しい経験によって目を開かれ、人生が変わった!
      【欲望】外国で休日を過ごしたい(ロマン主義的消費主義)

      ロマン主義は多様性を推奨するので、消費主義と完璧に噛み合う。
      【消費主義の主張】幸せになるためには出来るかぎり多くの製品やサービスを消費しなくてはならない
      国民主義
      資本主義
      人間至上主義
  3. 想像上の秩序は共同主観的である
    • 想像上の秩序は、私自身の想像の中に存在する主観的秩序ではなく、膨大の数の人々が共有する想像の中に存在する共同主観的秩序
    • 「客観的」ではなく「共同主観的」。
    • 「共同主観的」は、多くの個人の主観的意識を結ぶコミュニケーション・ネットワークの中に存在する。
    • 歴史を動かす重大な要因の多くは、法律・貨幣・神々・国民といった、共同主観的なもの。
    • 既存の想像上の秩序を変えるためには、まず、それに代わる想像上の秩序を信じなくてはならない。
第7章 書記体系の発明

「クシム」という署名 / 官僚制の驚異 / 数の言語

  • 農業革命の後、複雑な社会が出現し、大量の数理的データを扱う必要に迫られる。
  • → 紀元前3500年〜紀元前3000年の間に、シュメール人が数理的データを扱うための「書記」を発明。
  • → 都市・王国・帝国の出現への道を開く。
第8章 想像上のヒエラルキーと差別

悪循環 / アメリカ大陸における清浄 / 男女間の格差 / 生物学的な性別と社会的・文化的性別 / 男性のどこがそれほど優れているのか? / 筋力 / 攻撃性 / 家父長制の遺伝子

Q. 人類は、大規模な協力ネットワークを維持するのに必要な生物学的本能を欠いているのに、自らをどう組織してそのそのようなネットワークを形成したのか? A. 「想像上の秩序」を生み出し、「書記体系」を考案することによって。
想像上の秩序は、想像上のヒエラルキーを生み出す
  • 想像上のヒエラルキーはみな虚構を起源とすることを否定し、自然で必然のものであると主張するのが、歴史の鉄則。
ハンムラビ法典 上層自由人・一般自由人・奴隷
奴隷制
人種的ヒエラルキー 白人至上主義者は、人種間の生物学的違いに関する似非科学を主張。
カースト制 ヒンドゥー教徒は、人知を超えた宇宙の究極の力がカーストの優劣を定めたと信じている。
約3000年前にインド・アーリア人が地元の人々を征服したとき、数が少なかった自分たちが特権的な地位を失うのを恐れて制定。
富のヒエラルキー 資本家は、能力の客観的違いに発する避け用のない結果であると主張。
性別のヒエラルキー (後述)

  • ヒエラルキーはすべて人類の想像力の産物。
  • 自分の社会のヒエラルキーは自然で公正だが、他の社会のヒエラルキーは誤った基準や滑稽な基準に基づいていると主張する。
  • 複雑な人間社会は想像上のヒエラルキーを必要としてきた。
  • ヒエラルキーのおかげで、見ず知らずの人どうしが、時間とエネルギーを浪費しなくても、お互いをどう扱うべきか知ることができる。
  • 穢れと清浄の概念は、社会的区分や政治的区分を擁護する上で主要な役割を果たし、無数の支配階級が自らの特権を維持するために利用してきた。
悪循環……偶然の歴史的状況が、硬直した社会制度に変化する
①偶然の歴史上の出来事
↓
②白人による黒人の支配
↓
③差別的な法律
↓
④黒人の貧困と教育の不足
↓
⑤文化的偏見
↓
フィードバック → ③④
  • 不正な差別は時が流れるにうちに、改善されるどころか悪化することが多い
    • 貧困が貧困を招く
    • 教育が教育を呼ぶ
    • 無知は無知を誘う
    • お金はお金のある人の所に行く
性別のヒエラルキー
  • 農業革命以降はほとんどどこでも男性が良い目を見てきた。
  • 「男らしい/女らしい」(社会的・文化的性別)は共同主観的で、たえず変化している。
  • 男性は優れているのか
    • 【筋力】社会的能力と身体的能力は関係ない。
    • 【攻撃性】戦争を指揮するのに体力や攻撃性は不要。貴族・富裕者・教育ある者は、戦場に行く必要がない。
    • 【家父長制の遺伝子】他者の助けを必要とするメスの方が社会的技能が上では。オスは戦いに時間を使うので社会的技能は未発達のままになる。
第3部 人類の統一
第9章 統一へ向かう世界

歴史は統一に向かって進み続ける / グローバルなビジョン

  • 農業革命以降、人間社会はしだいに大きく複雑になり、 社会秩序を維持している想像上の構造体も精巧になっていった。 神話と虚構のおかげで、人々はほとんど誕生の瞬間から、 特定の方法で考え、特定の標準に従って行動し、特定のものを望み、特定の規則を守ることを習慣づけられた。 こうして彼らは人工的な本能を生み出し、そのおかげで厖大な数の見ず知らずの人どうしが 効果的に協力できるようになった。 この人工的な本能のネットワークを「文化」という。
  • どの文化にも典型的な信念・規範・価値観があるが、環境の変化・近隣の文化との交流・内的ダイナミクスによりたえず変化している。
  • 人工の秩序は、内部に矛盾が満ちている。矛盾に折り合いをつけようとする過程が変化に弾みを付ける。 矛盾は文化の原動力であり、創造性と活力の根源。
    中世ヨーロッパの貴族 キリスト教(禁欲的・非暴力)と騎士道(贅沢・好戦的)を信奉。
    近代の政治秩序 自由と平等を信奉。
    平等は、暮らし向きの良い人々の自由を削減することでのみ確保される。
歴史は統一に向かって進み続ける
  • 歴史が多様性ではなく統一性へと向かっているのは、数百年ではなく数千年の視点から見れば歴然とする。
  • 地球は、孤立して散在する無数の人間社会の一大星雲だった。
  • 1450年(ヨーロッパ人による大航海時代の直前)の人間社会
    アフロ・ユーラシア大陸・・・人類の9割近くが暮らしていた
    メソアメリカ世界
    アンデス世界
    オーストラリア世界
    オセアニア世界

グローバルなビジョン、普遍的な秩序
  • 紀元前1000年、普遍的な秩序となる可能性を持ったものが3つ登場した。
    秩序の種類 秩序 人類統一の可能性
    を予見した人
    経済的な秩序 貨幣 貿易商人
    政治的な秩序 帝国 征服者
    宗教の秩序 普遍的宗教
    (仏教・キリスト教・イスラム教)
    預言者

人類を統一する
3つの要素
貨幣 帝国 宗教

第10章 最強の征服者、貨幣

物々交換の限界 / 貝殻とタバコ / 貨幣はどのように機能するのか? / 金の福音 / 貨幣の代償

  • 最初の貨幣はシュメール人の「大麦貨幣」@紀元前3000年。書記が現れたのと同じとき、同じ場所で誕生。
  • 貨幣は、これまで考案されたもののうちで、もっとも普遍的で、もっとも効率的な相互信頼の制度。
  • 貨幣は、人類の寛容性の極み。言語・国家の法律・文化の基準・宗教的信仰・社会習慣よりも心が広い。差別することのない唯一のもの。貨幣のおかげで見ず知らずのの人と効率的に協力できる。
第11章 グローバル化を進める帝国のビジョン

帝国とは何か? / 悪の帝国? / これはお前たちのためなのだ / 「彼ら」が「私たち」になるとき / 歴史の中の善人と悪人 / 新しいグローバル帝国

帝国とは
資格1 異なる文化的アイデンティティと独自の領土を持った、いくつもの別個の民族を支配していること。
資格2 変更可能な境界と潜在的に無尽の欲を特徴とする。

  • 統治形態・領土の広さ・人口によってではなく、文化的多様性と変更可能な国境によってもっぱら定義される。
  • 帝国は過去2500年間、世界で最も一般的な政治組織だった。
  • 帝国の遺産のいっさいを拒否するのは、人類の文化の大半を退けるのに等しい。
帝国のサイクル
段階\帝国 ローマ イスラム教世界 ヨーロッパの帝国主義
小集団が帝国を確率する。 ローマ人がローマ帝国を確立する。 アラビア人がアラビアのカリフ統治を確立する。 ヨーロッパ人がヨーロッパの諸帝国を確立する。
帝国文化が創出される。 ギリシア・ローマ文化 アラビア・イスラム教文化 西洋文化
帝国文化が被支配民に採用される。 被支配民が、ラテン語・ローマ法・ローマの政治概念などを採用する。 被支配民が、アラビア語・イスラム教などを採用する。 被支配民が、英語・フランス語・社会主義・国民主義・人権などを採用する。
被支配民が、共通の帝国の価値観の名において、対等の地位を要求する。 イリュリア人・ガリア人・カルタゴ人が、共通のローマの価値観の名において、ローマ人と対等の地位を要求する。 エジプト人・イラン人・ベルベル人が、共通のイスラム教の価値観の名において、アラビア人と対等の地位を要求する。 インド人・中国人・アフリカ人が、国民主義・社会主義・人権といった共通雨の西洋の価値観の名において、ヨーロッパ人と対等の地位を要求する。
帝国の創建者たちが支配権を失う。 ローマ人が独自の民族集団として存在しなくなる。
帝国の支配権は新しい多民族のエリート層に映る。
アラビア人たちがイスラム教世界の支配権を失い、多民族のイスラム教エリートがそれに取って代わる。 ヨーロッパ人たちがグローバルな世界の支配権を失い、西洋の価値観や思考法におおむね傾倒した多民族のエリートがそれに取って代わる。
帝国文化が繁栄と発展を続ける。 イリュリア人・ガリア人・カルタゴ人が、採用したローマ文化を発展させ続ける。 エジプト人・イラン人・ベルベル人が、採用したイスラム教文化を発展させ続ける。 インド人・中国人・アフリカ人が、採用した西洋文化を発展させ続ける。

グローバル帝国
  • 将来の帝国は、真にグローバルなものとなる。
  • 国民主義は急速に衰えている。
  • 本質的にグローバルな問題が出現。(地球温暖化など)
  • グローバル帝国は、ローマ帝国に似ている。特定の国家・民族集団によって統治されるのではなく、多民族のエリート層(起業家・エンジニア・専門家・学者・法律家・・・)に支配され、共通の文化と共通の利益によってまとまっている。
第12章 宗教という超人間的秩序

神々の台頭と人類の地位 / 偶像崇拝の恩恵 / 神は一つ / 善と悪の戦い / 自然の法則 / 人間の崇拝

宗教の定義
  • 超人間的な秩序の信奉に基づく、人間の規範と価値観の制度。
  • 2つの異なる基準
    1. 超人間的な秩序の存在を主張する。(その秩序は人間の気まぐれや合意ではない。)
    2. 超人間的な秩序に基づいて規範や価値観を確立し、それには拘束力があると見なす。(道徳や行動の基準の源となる信念。)
  • 集団を統一するために必要な2つの特性
    1. 普遍的であること(普遍的な超人間的秩序)
    2. 宣教を行なうこと

  • 普遍的で、宣教を行なう宗教が現れ始めたのは紀元前1000年紀。これは歴史上屈指の重要な革命。帝国・貨幣と同様、人類の統一に不可欠の貢献をした。
  • 神々の主な役割は、人間と動植物との仲立ち。古代の神話の多くは、法的な契約で、動植物の支配権と引き換えに、神々への永遠の献身を約束するもの。
アニミズム
多神教 本来、度量が広く、異端者や異教徒を迫害することがない。
一神教 暴力によって競争相手を排除することで、自らの立場を繰り返し強めようとしてきた。
二元論の宗教 善と悪という2つの対立する力の存在を認める。

悪の問題 世界になぜ悪があるのか?
なぜ苦しみがあるのか?
なぜ善い人に悪いことが起こるのか?
秩序の問題 万物が同じ諸法則に従うのは、世界が単一の神に造られたからだ。
  • 一神教は、「秩序」を説明できるが「悪」を説明できない。
  • 二元論は、「悪」を説明できるが「秩序」を説明できない。
  • 一神教の基本的概念の一部は二元論を起源とし、その精神を受け継いでいる。(キリスト教徒が悪魔・サタンと呼ぶもの)
  • 一般的なキリスト教徒は、一神教の絶対神を信じているが、二元論の悪魔や、多神論的な聖人たち、アニミズム的な死者の霊も信じている。
  • 混合主義(異なるばかりか矛盾さえする考え方を同時に公然と是認し、さまざまな起源の儀式や慣行を組み合わせること)こそが、唯一の偉大な世界的宗教なのかもしれない。
イデオロギーも宗教

相対性理論 宗教ではない それに基づく人間の規範や価値観がないから。
サッカー 宗教ではない ルールが超人間的な命令を反映していると主張する人がいないから。
キリスト教
イスラム教
仏教

イデオロギー
自由主義
共産主義
資本主義
国民主義
ナチズム
宗教である 超人間的な秩序の信奉に基づく人間の規範と価値観の体系であるから。
  • イデオロギーにも聖典・予言の書や祝祭日がある。(『資本論』、革命記念日…)
今日の典型的なアメリカ人
国民主義者 歴史の中で果たすべき特別な役割を持ったアメリカ国民の存在を信じる。
自由市場主義の
資本主義者
自由競争と私利の追求こそが、繁栄する社会を築く最善の方法であると信じている。
人間至上主義者 人間は奪うことのできない特定の権利を造物主から授けられたと信じている。
人間至上主義
  • 人間至上主義者は人間性を崇拝するが、人間性の定義には3つの競合する宗派がある。
自由主義的な
人間至上主義
社会主義的な
人間至上主義
進化論的な
人間至上主義
ホモ・サピエンスは、他のあらゆる生き物や現象の性質とは根本的に異なる、独特で神聖な性質を持っている。至高の善は人間性の善だ。
人間性 個人的なもので、ホモ・サピエンスの各個人の中に宿っている。 集合的なもので、ホモ・サピエンスという種全体の中に宿っている。 変わりやすい、種の特性だ。人種は人間以下の存在に退化することも、超人に進化することもありうる。
至高の戒律 ホモ・サピエンスの各個人の内なる核と自由を守ることである。 ホモ・サピエンスという種の中での平等を守ることである。 人間以下の存在に退化しないように人類を守り、超人への進化を促すことである。
土台 一神教
(各個人の中に自由で永遠の魂が宿っているという伝統的なキリスト教の信念お生まれ変わり。)
一神教 進化論
ナチス
  • 「進化論的な人間至上主義」の代表例。
  • ナチスの野望;「人類を退化から守り、漸進的進化を促す」
  • ナチスの主張:「人類の最も進んだ形態であるアーリア人種は保護され育まれなくてはならず、ユダヤ人・ロマ・同性愛者・精神障害者のような退化したホモ・サピエンスは隔離され、皆殺しにさえしなければならない」
  • ナチスとの戦争後、人間至上主義を進化論と結びつけ、生物学的方法を使ってホモ・サピエンスを「アップグレード」することを提唱することはタブーであった。だが今日、そのような事業が再び流行している。人間の生物学の知識を使って超人を生み出そうと考えている人は多い。
第13章 歴史の必然と謎めいた選択

後知恵の誤謬 / 盲目のクレイオ

  • 歴史を研究するのは、未来を知るためではなく、視野を拡げ、現在の私たちの状況は自然なものでも必然なものでもなく、したがって私たちの前には、想像しているよりもずっと多くの可能性があることを理解するためなのでだ。
  • 歴史の選択は人間の利益のためになされるわけではない。
    • 歴史が人類の利益のために作用しているという証拠がないのは、そのような利益を計測する客観的尺度がないから。
    • キリスト教がマニ教よりも優れた選択肢だったという証拠はない。
    • 勝者はいつも自分の定義が正しいと信じるがその証拠はない。
  • 文化は一種の精神的感染症あるいは寄生体で、人間はその宿主。【ミーム学】
    • 寄生体は、一人の宿主から別の宿主に拡がり、宿主に頼って生き、宿主を弱らせ、ときには殺しさえする。
    • 文化とは、他者につけ込むために一部の人が企てた陰謀ではなく、精神的な寄生体で、偶然現れ、それから感染した人全員を利用する。
第4部 科学革命
第14章 無知の発見と近代科学の成立

無知な人 / 科学界の教義 / 知は力 / 進歩の理想 / ギルガメシュ・プロジェクト / 科学を気前良く援助する人々

  • 科学革命は、「知識の革命」ではなく「無知の革命」
  • まだ知られていない重要な事柄が多数あることを認め、そのような無知の自認が、科学の発見は私たちに新しい力を与えるるという考え方と結びついたとき、真の進歩はけっきょく可能なのではないかと人々は思い始めた。解決不可能のはずの問題を科学が解決し始めると、人類は新しい知識を獲得して応用することで、どんな問題も全て克服できることを、多くの人が革新を持ち出した。
  • 西暦1500年ごろまでは、世界中の人類は、医学・軍事・経済の分野で新たな力を獲得する能力が自らにあるとは思えなかった。
  • 過去500年間で最も瞠目するべき決定的瞬間:人類最初の核実験、トリニティ実験(1945年7月16日 米国アラモゴード)。 人類は、歴史の行方を変えるだけではなく、それに終止符を打つことさえできるようになった。
  • 科学と産業と軍事のテクノロジーが結びついたのは、資本主義と産業革命が到来してから。
    • 19世紀までは、軍事面での革命の大多数は、テクノロジー上ではなく組織上の変化の産物だった。
    • 中国史で最も重要な軍事的発明である「火薬」を主に爆竹に使った。発明から600年たった15世紀になってようやく大砲に利用される。
  • 多くの信仰では、いつの日か救世主が現れて戦争や飢饉にすべて終止符を打ち、死さえなくすと信じられていた。 だが、人類が新しい知識を発見したり新しい道具を発明したりしてそれを成し遂げられるという考えは、滑稽というだけでは済まされず、不遜でさえあった。 バベルの塔の話・イカロスの話・ゴーレムの話、その他無数の神話は、人間の限界を越えようとする試みは必ず失望と惨事につながることを人々に教えていた。
  • 科学者にとって、死は避けようのない宿命ではなく、たんなる技術上の問題。科学革命の最も重要なプロジェクトは、人類に永遠の命を与える、というもの。(ギルガメッシュ・プロジェクト)
  • 近代後期の宗教とイデオロギーは死と死後の生を計算に入れなくなった。18世紀まで、主教は死とその後を、生命の意味にとって重要であると考えていた。
  • 科学も、経済的・政治的・宗教的関心によって形作られている。科学研究は、それが政治的・経済的・宗教的な目標を達成するのに役立つと誰かが考えているからこそ、資金を提供してもらえる。
  • 科学研究は宗教やイデオロギーと連携した場合のみに栄えることができる。科学と帝国主義と資本主義の間のフィードバック・ループは、過去500年にわたって歴史を動かす最大のエンジンだった。
第15章 科学と帝国の融合

なぜヨーロッパなのか? / 征服の精神構造 / 空白のある地図 / 宇宙からの侵略 / 帝国が支援した近代科学

なぜヨーロッパなのか?
  • 西洋で何世紀もかけて形成され熟成した価値観・神話・司法の組織・社会政治的な構造で、それらはすぐには模倣できない。
  • 明治時代に日本が西洋に追いつけたのは、西洋の機械や装置を採用するだけでなく、社会と政治の多くの面を西洋を手本として作り直したため。テクノロジーの才のおかげではない。
  • ヨーロッパは、近代前期の貯金があったからこそ院内後期に世界を支配することができた。貯金←近代科学と近代資本主義
  • ヨーロッパはもはや世界を支配していないが、科学と資本主義はますます強力になっている。
征服
  • 科学者も征服者も無知を認めることから出発。「外の世界がどうなっているのか見当もつかない」。新しい知識によって正解を制するという願望。
  • 「知識の征服」「領土の征服」。重要な軍事遠征には、科学的発見を目的として科学者が同行。
  • イギリス海軍は地図を作成するためにビーグル号を派遣。地層を調査するため地質学者のチャールズ・ダーウィンを同行。
空白のある地図
  • よく知らない地域は省略したり、空想の怪物や驚くべき事物で満たしされていた。
  • 空白のある地図:無知を認めた証
アメリカ大陸の発見
  • アメリカ大陸の発見は科学革命の基礎となる出来事。
  • ヨーロッパ人は、過去の伝統よりも現在の観察結果を重視することを学び、
  • アメリカを征服したいという欲望によって猛烈な速さで新しい知識を求ざるをえなくなった。
第16章 拡大するパイという資本主義のマジック

拡大するパイ / コロンブス、投資家を探す / 資本の名の下に / 自由市場というカルト / 資本主義の地獄

  • 貨幣が転換できるのは、その時点で現に存在するものだけだったため、新規事業に融資するのは困難であり、経済成長は著しく制限された。
  • 想像上の財・現在はまだ存在していない財を特別な種類のお金に変えることに同意し、それを「信用」と呼ぶようになった。
  • 信用に基づく経済活動により、私たちは将来のお金で現在を築くことができるようになった。
近代以前 ○将来が現在より良くなると信じられなかった。
○富の総量は限られている。ゼロサムゲーム。
○大金を稼ぐことが罪悪と見なされていたのもそのせい。
科学革命後 ○科学革命により「進歩」という考え方が登場。
○将来を信頼するようになった → 信用の登場 → 経済成長 → さらなる信用
○強欲は善。
○パイは拡大する。
史上最も重要な経済学の声明書
  • アダム・スミスの『国富論』。
  • 利己的な衝動が全体の豊かさの基本となる。
  • 強欲は善であり、個人がより裕福になることは他の全員のためになる。
  • 利己主義は利他主義である。
資本主義
  • 新しく登場した倫理観:利益は生産に再投資されるべき
  • 資本主義の信条における第一にして最も神聖な掟:生産利益は生産増加のために再投資されなくてはならない
  • ↑資本主義が資本主義と呼ばれる所以。「資本」はたんなる「富」ではなく、生産に投資されるお金や財や資源。
中世の貴族 ○派手な消費。
○利益を再投資しようと考える者はいない。
近代のエリート
(取締役会長、
株式売買人、
実業家)
○中世の貴族よりはるかに金持ちだが、浪費への関心は低い。

  • 資本主義は、しだいにたんなる経済学説をはるかに超える存在になっていった。
    どう振る舞うべきか、どう子供を教育するべきか、どう考えるべきか、を示す一連の教えまでもが資本主義に含まれる。
  • 資本主義は、近代科学の発展にも決定的な影響。科学研究に資金提供するかはそれが利益を生むかどうかで判断される。
  • 近代科学も、資本主義に影響。
    • 経済の飛躍的成長は、科学者のおかげ。紙幣を発行するのは政府・中央銀行だが、それに見合った価値を生み出すのは科学者。
    • 政府・中央銀行は何兆ものお金をなにもないところから生み出し、薄っぺらな信用を金融システムに注ぎ込みながら、バブルが弾ける前に、科学者や技術者が何とかとんでもなく大きな成果を生み出してのけることを願っている。
近代前の経済 現代の経済
コロンブス、投資家を探す
  • ヨーロッパでは、王国・将軍が商業的な考え方をし始めた結果、商人・銀行家がエリート支配層となった。
  • 資金調達は税金よりも信用を通じてなされるよういなった。
  • 近代前期においては、民間会社が兵士・将軍・大砲・艦船を雇い、帝国を樹立するのも普通↓
オランダ東インド会社
(オランダ)
○インド洋で活動。
○インドネシアを征服。200年近く支配。
オランダ西インド会社
(オランダ)
○大西洋で活動。
○ニューアムステルダム(入植地)を建設(のちのニューヨーク)。先住民とイギリス人から守るために防壁を築く(ウォール街)。
ミシシッピ会社
(フランス)
○取締役 の ジョン・ロー = フランス中央銀行の総裁 = 財務大臣
○株価の下落 → 中央銀行がミシシッピ会社の株を買い支え → 支えきれず破綻 → フランス王政は信用を失う → 資金調達困難に;増大する負債 → フランス革命
イギリス東インド会社
(イギリス)
○インドを約1世紀にわたってインドを支配。

キリスト教やナチズムなど一部の宗教 ●炎のような憎しみから大量虐殺
資本主義 ●強欲と合体した冷淡な無関心から厖大な数の人間を死に至らしめた
○サトウキビのプランテーション → 大西洋奴隷貿易
○大西洋奴隷貿易はアフリカ人に対する憎しみから始まったわけではない
○民間会社の軍事行動・他国の征服

経済のパイは拡大したが、分配はあまりに不公平ではないか?
農業革命と同じで詐欺なのか?
資本主義者にしか動かすことのできない世界を生み出した。
(はるかに劣る共産主義者が世界を動かすのを防いでいる)
パイがもう少し大きくなるまで、あともう少しの辛抱。
第17章 産業の推進力

熱を運動に変換する / エネルギーの大洋 / ベルトコンベヤー上の命 / ショッピングの時代

  • エネルギー変換装置は人間と動物の身体だけだった。
    • 太陽エネルギー → 植物が捉える → 筋肉の力
  • 蒸気機関・・・熱を運動に返還
    • 織物生産に革命
    • 蒸気機関車
    • 人々は機械と機関を使えば1つの種類のエネルギーを別の種類のエネルギーに変換できるという発想に取り憑かれる。
  • 内燃機関
    • 輸送手段に大変革。
    • 石油を政治権力に変えた。
  • 電気
    • 2世紀前には、経済で何の役割も果たしておらず、不可解な科学実験や安っぽい魔法のトリックにしか使われていなかった。
  • 産業革命はエネルギー変換における革命。
  • 私たちは数十年ごとに新しいエネルギー源を発見するので、私たちが使えるエネルギーの総量は増える一方。
  • 産業革命は、第二次農業革命だった
    • 動物さえもが機械化された。
    • 家畜は痛みや苦しみを感じる生き物とみなされることがなくなり、機械として扱われる。
    • 大西洋奴隷貿易と同様、今日の畜産業の原動力は「無関心」。家畜が憎いわけではない。
    • 哺乳類・鳥類には、複雑な感覚構造と感情構造があることは立証されている。身体的苦痛だけでなく感情的苦痛も被りうる。
  • 農業の工業化がなければ、都市での産業革命はけっして起こらなかった。
ショッピングの時代
資本主義社会 …たえず生産

製品を買ってくれる人がいなければ、経済は破綻してしまう

新たな価値体系が登場

消費主義 …多くの製品やサービスの消費を
好ましいことと見なす


資本主義 利益を再投資せよ!

矛盾

消費主義 消費せよ!

↓折り合い
資本主義 裕福な人々は、利益を再投資せよ!
消費主義 裕福でない人々は、消費せよ!


  • 消費主義は、信奉者が求められていることを実際にやってる史上初の宗教
    キリスト教信者 キリストに倣えず
    仏教徒 ブッダに倣えず
    儒者 孔子に倣えず
    消費主義者 実際に消費している!
第18章 国家と市場経済がもたらした世界平和

近代の時間 / 家族とコミュニティの崩壊 / 想像上のコミュニティ / 変化し続ける近代社会 / 現代の平和 / 帝国の撤退 / 原子の平和

  • 生態系の大きな混乱(地球温暖化・海面上昇・汚染)は、ホモ・サピエンス自体の存続を脅かしかねない。
  • 自然破壊・・・破壊ではなく変更。自然はけっして破壊できない。
  • 自然の気まぐれに振り回されなくなる一方で、近代産業と政府の命令にはかつてないほど支配されるに至った。
  • 産業革命によって、時間表と製造ラインは、人間のほぼあらゆる活動のテンプレートになった。時間表がすべてを支配。
家族とコミュニティの崩壊
  • 人類に降りかかった最も重大な社会変革 = 家族と地域コミュニティの崩壊および、それに取って代わる国家と市場の台頭
    認知革命 部族・町・王国・帝国を生み出したが、人間社会の基本構成要素は家族やコミュニティであり続けた。
    農業革命
    産業革命 家族やコミュニティが崩壊し、その役割は国家と市場の手に移った。(わずか2世紀の間で)
  • 家族やコミュニティを打ち砕くための国家と市場による申し出: 「個人になるのだ」
  • 何百万年もの進化の過程で、人間はコミュニティの一員として生き、考えるよう設計されてきた。ところがわずか2世紀の間に、私たちは疎外された個人になった。
想像上のコミュニティ「国民」「消費者」
  • 家族や小ユニティの崩壊

    物質的必要性 ←国家と市場が応える
    感情的必要性 ←国家と市場は「想像上のコミュニティ」を育成し、応える
  • 想像上のコミュニティ:
    • 国民
    • 消費者
  • 国民も消費者も、集合的想像の中にしか存在しない。共同主観的現実。
  • 国民ははるか昔に存在していたが、その重要性は小さく、現代まで続いているものはない。現存する国民のほとんどは、産業革命後に誕生した。
  • 国民コミュニティはこの数十年で、消費者部族の前に、しだいに影を潜めつつある。
  • 親密な知り合いではないが、同じ消費習慣や関心を持ち、それゆえに同じ部族の一員だと感じて、自分たちをそのように定義する。
    • マドンナのファン
    • マンチェスター・ユナイテッドのファン
    • ベジタリアン
    • 環境保護論者
    ・・・消費するものによって定義される。
世界平和
  • 暴力の減少は主に、国家の台頭のおかげ。
  • 征服を目的とした軍事遠征は、もはや世界のどこにおいても起こりえない。
  • 真の平和とはたんに戦争のないことではなく、戦争勃発の見込みがないことを意味する。
  • 平和になった理由;4つの要因が正のフィードバックを形成
    • ①戦争の代償が劇的に大きくなった。
      • 核兵器による戦争は集団自殺に等しい。
    • ②戦争で得られる利益が減少した。
      • 富の源泉が、畑・家畜・奴隷・金 から 人的資源・技術的ノウハウ・銀行のような複合的な社会経済組織に移った。
    • ③平和からはこれまでにないほどの利益が挙がるようになった。
      • 現代の資本主義経済では、対外貿易や対外投資がきわめて重要。平和は特別な配当をもたらす。
    • ④グローバルな政治文化に構造的転換が起こった。
      • 現在は史上初めて、平和を愛するエリート層が世界を治める時代。
  • 私たちはグローバルな帝国の中にいる。この帝国もこれまでの帝国と同様、その領域内での平和を強化する。
第19章 文明は人間を幸福にしたのか

幸福度を測る / 化学から見た幸福 / 人生の意義 / 汝自身を知れ

進歩主義的 私たちは当然、中世の祖先たちよりも幸せであり、また彼らも、石器時代の狩猟採集民よりも幸せに違いない。 新たな適性・行動様式・技能が生活を向上させるとはかぎらない。農業革命のように。
ロマン主義的 人間の能力と幸福度は反比例する。 近代医療は小児死亡率を33%から5%にした。
  • 富は幸福をもたらすが、一定の水準まで。
  • 病気は短期的には幸福度を下げるが、長期的な苦悩の種となるのは、それが悪化の一途をたどったり、継続的で心身ともに消耗させるような痛みを伴ったりする場合に限られる。
  • 家族やコミュニティは、富や健康よりも幸福感に大きな影響を及ぼす。結婚生活はとりわけ重要。
  • 幸福は、客観的な条件(富や健康)やコミュニティにさえも、それほど左右されない。客観的条件と主観的な期待との相関関係によって決まる。
化学から見た幸福
  • 幸福 = 体内に生じる快感
  • 幸福に対する生物学的アプローチを認めると、歴史にはさほど重要性がないことになる。セロトニンの濃度は変えられないから。
  • 幸せのカギが生化学システムの手中にあることがついに判明し、私たちは政治・社会改革・反乱・イデオロギーに無駄な時間を費やすのをやめ、人間の真の意味で幸せにできる唯一の方法、すなわち生化学的状態の操作に集中できるようになった。
人生の意義
  • 幸せは、ある人の人生全体が有意義で価値あるものと見なせるかどうかにかかっている。
    • 子育ては不快な仕事だが幸福の源泉
  • 有意義な人生は、困難の中にあってさえもきわめて満足しているのに対し、無意味な人生は、快適な環境に囲まれていても満足できない。
  • 中世の人々は悲惨な状況下にあったが、信仰を持たない現代人よりも大きな意義と価値を、自らの人生に見出していただろう。
  • 人々が自分の人生に認める意義は、いかなるものもたんなる妄想にすぎない。死後の世界・国民主義的意義・人間至上主義的意義・資本主義的意義も妄想。
  • 幸福は人生の意義についての個人的な妄想を、その時々の支配的な集団的妄想に一致させることなのかもしれない。
幸福=快感 どちらも主観的感情 現代の最も支配的な宗教「自由主義」は、主観的感情を神聖視する。
幸福=意義ある人生
幸福=感情の追求をやめること 苦しみの根源は、束の間の感情を果てしなく、空しく求め続けること。
自分の感情はすべて束の間のものであることを理解し、そうした感情を渇愛することをやめたときに初めて、苦しみから解放される。
今この瞬間を生きることができるようになる。
真の幸福とは内なる感情とも無関係である。外部の成果の追求のみならず、内なる感情の追求もやめること。
仏教の考え方。
第20章 超ホモ・サピエンスの時代へ

マウスとヒトの合成 / ネアンデルタール人の復活 / バイオニック生命体 / 別の生命/特異点 / フランケンシュタインの予言

  • 科学革命はただの歴史的革命ではなく、生物学的革命となりうる。
  • 生物学的革命・・・生命が、自然選択ではなく、知的設計に支配される新しい宇宙の時代
知的設計 〜 生命の法則を変える3つの方法
生物工学 ○生物の形態・能力・欲求・欲望の改変を目指す、生物学的レベルでの人間の意図的な介入。
○去勢、遺伝子工学
○脳の内部に小さな変化があっただけで認知革命が始まった。生物工学で小さな変化を加えることで、第二次認知革命を引き起こし、完全に新しい種類の意識を生み出し、ホモ・サピエンスをまったく違うものに変容されることになるかもしれない。
○ホモ・サピエンスという存在に幕を下ろす可能性は非常に高い。手を加えすぎて、ホモ・サピエンスでなくなる可能性。
サイボーグ工学 ○有機的な器官と非有機的な器官を組み合わせる。
○バイオニック。
○眼鏡、ペースメーカー、コンピュータ、携帯電話、昆虫サイボーグ、バイオニック補聴器、バイオニック・ハンド、脳とコンピュータの直接接続。
非有機的生命工学 完全に非有機的な存在を造り出す。
AI、コンピュータウイルス。
  • 歴史の次の段階:テクノロジーや組織の変化だけでなく、人間の意識とアイデンティティの根本的な変化も含まれる。

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第1章 人類が新たに取り組むべきこと
第1部 ホモ・サピエンスが世界を征服する
第2部 ホモ・サピエンスが世界に意味を与える
第3部 ホモ・サピエンスによる制御が不能になる