ホントは教えたくない資産運用のカラクリ 投資と税金篇 2016
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東洋経済新報社 (2015-10-30)
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- 投資税制
- 2016年税制改正への対応策
- 次の10年のヒット商品予測
投資税制
税金の取られ方
総合課税 | 大きな箱 |
・「全部合計して課税する。」 ・確定申告(翌年3月)。 ・累進課税。 |
||
分離課税 | 申告分離課税 | 中ぐらいの箱 |
・「一部だけ切り離して課税する。」 ・所得の多さにかかわらず定率。 |
・源泉徴収されたりされなかったり。 ・確定申告で同じ種類の所得を合算し、まとめて納税。 |
源泉分離課税 | 小さな箱 | ・源泉徴収されて完結。 (・確定申告で還付あり。) |
総合課税 | 給与所得など、 ほかの所得と合算して 税額を計算する。 |
||
---|---|---|---|
分離課税 | その商品のみで 税額を計算する。 |
申告分離課税 |
確定申告は必要。 株の売却益 (源泉徴収あり特定口座なら申告不要。) |
源泉分離課税 |
利益を受け取る時点で税金が差し引かれる (源泉徴収)。 確定申告は不要。 株の配当金 (確定申告すれば、 総合課税 or 申告分離課税 に変更できる。 新虎口分離課税なら、 株の売却損と通算できる。 ) |
所得の種類と課税方式
課税方式 | 所得の種類 | 説明 | |
---|---|---|---|
総合課税 | 給与所得 | ||
事業所得 | |||
不動産所得 | |||
一時所得 | |||
譲渡所得 | 一般の資産の譲渡による所得 | ||
雑所得 | どの所得にも属さない所得 | ||
総合課税 | 源泉分離 | 利子所得 | 預金・債券の利子 |
配当所得 | 株式・投信の分配金 | ||
申告分離 | 山林所得 | ||
退職所得 | |||
(譲渡所得のうち) 土地建物 |
|||
(譲渡所得のうち) 株式 |
株式, 投信, ETF, REIT | ||
先物取引に係る 雑所得 |
FX, CFD, 先物, オプション |
総合課税の構造
日本の税制は、3つの引き算と1つの掛け算で構成されている。
項目 | 説明 | サラリーマンなら | ||
---|---|---|---|---|
Step 1 | 収入 | 「売上げ」のこと | 給与収入 | |
- | 必要経費 | 収入を得るのに使った費用 | 給与所得控除額 | |
= | 所得金額 | 「儲け」のこと | 給与所得 | |
Step 2 | - | 所得控除 | 所得から引いてくれるオマケ | 基礎控除 |
= | 課税所得 | これが高いと、次の税率が高い | ||
Step 3 | × | 税率 | 累進税率 | |
- | 税額控除 | めったにないオマケ | 住宅ローン控除 | |
= | 税額 | 支払う税金の額 |
投資税制一覧
3つのグループ
税グループ | 商品 | インカムゲイン | キャピタルゲイン | 2014年改正 | 2016年改正 | |
---|---|---|---|---|---|---|
金利・配当 | 現地通貨差益 | 為替差益 | ||||
1. 金利 |
円預金 | 利子所得 | - | - | 同左 | 同左 【小さな箱】 |
外貨預金 | 利子所得 | - | 雑所得 | 同左 | 同左 【小さな箱】 |
|
公社債投信 円MMF 外貨MMF |
利子所得 |
売却は非課税 償還は利子所得として 源泉分離課税(約20%) |
同左 | 同左 |
譲渡所得等として 分離課税(約20%) 【中ぐらいの箱】 |
|
国内発行割引債 | - | 源泉課税 | - | 同左 | ||
国外発行割引債 ゼロクーポン類 |
- |
売却は譲渡所得 償還は雑所得 |
同左 | 同左 | ||
利付債 | 利子所得 |
売却は非課税 償還は雑所得 |
同左 | 同左 | ||
2. 株式 |
国内株式 外国株式 るいとう |
配当所得 |
譲渡所得等として 分離課税(約10%) |
軽減税率が20%に | ||
信用取引 | 同右 | |||||
株式投信 | 配当所得 | |||||
ETF | 配当所得 | |||||
REIT | 配当所得 | |||||
3. デリバティブ |
先物 | 雑所得等として 分離課税(約20%) |
同左 | 同左 【中ぐらいの箱】 |
||
オプション | ||||||
スワップ型商品 (FX, CFD) |
||||||
その他 | 金地金 純金積立て |
- | 譲渡所得として 累進課税 |
同左 | 同左 | 同左 |
※「損益通算」「損失繰越し」が可能
雑所得は最悪。
- 給与所得以外の所得との合計が20万円以下なら非課税だが…
- 雑所得で利益を得ると税率を上げてしまう。
- 損益通算も損失繰越しもできない。
- 外貨預金はNG
「源泉徴収」と「源泉分離課税」を混同しない。
利子所得 | 源泉徴収 |
●源泉分離課税。 ●徴収されたらそこで完結。 ●費用の差し引きなし。 ●損益通算なし。 ●損失繰越しなし。 |
配当所得 | 源泉徴収 |
●申告分離課税。 ●いったん源泉徴収されるが、あとの確定申告で「株式の譲渡所得という中ぐらいの箱」の中で処理。 ●費用の差し引きあり。 ●箱の中で損益通算あり。 ●損失繰越しあり。 |
給与所得 | 源泉徴収 |
●総合課税。 ●いったん源泉徴収されるが、あとの確定申告で「総合課税という大きな箱」の中で処理。 ●費用の差し引きあり。 ●箱の中で損益通算あり。 ●損失繰越しあり。 |
源泉分離課税は避ける。
- 「円預金」より「円預金に近いMMFや投信」
- 「米ドル預金」より「米ドルMMF」
2016年税制改正への対応策
債券
利付債
2016年改定前までは、
- インカムゲイン・・・源泉分離課税で完結
- 途中売却・・・非課税
債券取引の世界では、投資家の保有期間に応じてクーポンが支払われる。
新しい保有者が、それまでの保有者に、日々積みあがってきたクーポンを支払う。(経過利息)
クーポン10%の債券を11ヵ月持っていたAがBに売却。11ヵ月分の経過利息(10%*11/12=9.17%)をBに支払う。
12ヵ月目、Bのクーポン収入10%に20%の源泉税がかかってしまうため、クーポン収入は8.0%に。
Bは、Aに9.17%支払ったのに、収入は8.0%。
Aは9.17%を非課税でゲット。
割引債
2016年改定前までは、金利に相当する部分に、購入時に18%を源泉課税して終了。
国内で源泉徴収できない場合は、償還時に雑所得。途中売却なら譲渡所得。
預金とMMFとMRF
預金 | ●固定金利(銀行がリスクを吸収) | ●銀行のデットであるが、銀行の資産サイドにはデット以外も含まれる。 | |
---|---|---|---|
MMF |
●実績配当(リスクは投資家に) ●投資信託の一種 ●日本では、デットばかり組み入れた投信を「公社債投信」として、「株式投信」とは別扱い。債券扱い。 ●2016年改正までは、売却時、為替差益を含むキャピタルゲインが非課税だった。 |
●MMF会社のエクイティであるが、会社の資産サイドにはデットのみで構成されている。 ●デットはCPやTB(短期国債)など。 |
●短期の解約にペナルティを科すものもある。 ●利回りはMRFよりもよい。 |
MRF |
●期間が短くて安全なものが多く、手数料なしで毎日解約できる。 ●より銀行に近い。 |
投資税制は2段階で変わった
第1回・・・2014年改定
- 軽減税率が終了
- NISAの導入
- 債券を株式グループに組み入れ、損益通算と損失繰越を認める。
個人投資家の税務戦略10カ条
- 預金はなるべく減らす
- 1年以上使わないが絶対に損をしたくない資金は個人向け国債へ
- NISAには着実に値上がりが狙える銘柄を入れる
- 投資商品は同じ税グループに集める
- 非課税を狙った債券やMMFなどへの投資は2015年末までに整理し、債券は個別からETFに移行する
- 総合課税よりも分離課税を選択する
- 特定口座(源泉徴収口座)の申告不要制度を活用する
- 投資商品は上場されている株や先物を優先する(FXやCFDは補完的に使用)
- コストに注意を払う
- 自分ひとりの手に負えなくなったら法人化を考える
NISA
- 【リスク低】円建ての公社債投信・MMF
- 【リスク中】SP500に連動するETF
- 【リスク中+】新旧バフェット銘柄
- 長期使用や保存が難しく、強いブランド力を持ち、販売業者が扱わざるをえない製品を作る企業(飲料・食品・日用品)
- 他の企業が事業を続けていくために、持続的に使用せざるをえないコミュニケーション関連企業(メディア・通信)
- 企業や個人が日常的に使用せざるを得ないサービスを提供する企業(金融・エネルギー・鉄道・小売り)
- 宝石・装飾品・家具などの分野で、事実上地域独占力をもっている小売事業(家具・宝石)
債券ETF
- 非課税メリットがなくなったので債券は個別からETFにシフトする。
- 信用収縮局面でない限り、ハイイールド債ETFもよい。
申告不要制度の活用
- 普通の個人投資家は「特定口座+源泉徴収あり」にすべき。
- 損益通算や損失繰越の権利がなくなるわけではない。
- 複数の口座を使えば、損をした口座とそれを穴埋めする分の利益を出した口座だけを申告して損益通算と損失繰越を活用する。
【例】 売却益 4000万円 去年からの損失繰越1000万円 確定申告しないと税金は 4000万円×20% = 800万円 確定申告すれば税金は (4000万円-1000万円)×20% = 600万円 に抑えられる。 しかし、 3000万円が合計所得金額にプラスされ、 ・社会保険料が上がったり ・住宅ローン控除が受けられなくなったり する可能性がでてくる。 そこで、申告不要制度を使う。 口座aでの売却益 1000万円 口座bでの売却益 3000万円 去年からの損失繰越1000万円 口座aのみを確定申告すればよい。
不動産
投資用不動産 | マイホーム購入 | REIT | |
---|---|---|---|
投資対象 (資産サイド) |
ビル、マンション、駐車場、コインランドリー、など | 一戸建てあるいは一区分 | 商業用不動産、オフィスビル、タワーマンション、ショッピングモール、など |
資金調達方法 (負債サイド) |
銀行、ノンバンク、公的融資期間 | 同左 | 銀行、ノンバンク、債券発行 |
キャピタルゲイン課税方式 | 土地・建物の譲渡所得として申告分離課税 | 同左 | 譲渡所得として申告分離課税(株式グループ) |
キャピタルゲイン税率 | 譲渡所得に対し、5年超の長期保有は20%、それ以下の短期保有は40%。 | 同左。 ただし、譲渡所得3000万円までの特別控除あり。 |
上場株と同じ20%。 |
キャピタルゲイン損失の扱い | 他の土地・建物と損益通算が可能。給与所得など他の所得とは損益通算できない。 | 長期保有で住居用であるなど一定条件を満たすと、他の所得との通算と3年の損失繰越が可能。 | 株式グループのなかで損益通算・損失繰越が可能。 |
インカムゲイン課税方式 | 不動産所得として総合課税(給与所得などと通算可能) | 投信の分配金や株式の配当と同じ | |
減価償却 | 償却資産(建物・設備)を耐用年数に応じて毎年費用にできる。 | 通常の法人と同様に認められる。 | |
その他 | 借入金利に対して税額控除あり |
「減価償却」が不動産投資のキモ
- 金を払ってもいないのにあたかも毎年損をしているものとして税金をおまけしてもらえる。
- 賃貸収入から税金・管理費・借入金利を引いた額がプラスになるようにし、そこから減価償却を引くとマイナスになるように調整する。
- キャッシュフローをプラスに保ちながら課税所得を減らせる。
次の10年のヒット商品予測
- スイープ口座が爆発的に普及し預金が激減する
- アカウントアグリゲーションの覇権争いが起きる
- ミラートレードが投資業界を脅かす
- 貨幣がほとんど電子化され、税務申告がほぼ消滅する
ホントは教えたくない資産運用のカラクリ 投資と税金篇 2016
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