2016年12月18日日曜日

『自由はどこまで可能か〜リバタリアニズム入門』

  • リバタリアニズムとそれ以外の立場との比較
  • リバタリアニズム内部の立場の分類
  • 自己所有権〜リバタリアニズムが認める権利
  • 権利の救済と裁判
  • 政府と社会と経済
  • 家族
  • 財政政策
リバタリアニズムとそれ以外の立場との比較

個人的自由 経済的自由
リベラリズム
(リベラル)
× ○個人的自由は尊重するが、経済活動への介入や規制や財の再分配を擁護する。
「福祉国家リベラル」と呼ぶと分かりやすい。
保守主義
(コンサバティブ)
×
権威主義
(オーソリテリアン)
人民主義
(ポピュリスト)
× ×
リバタリアニズム
(リバタリアン)
○諸個人の経済的自由も財産権も、精神的・政治的自由も、ともに最大限尊重する思想。
○精神的自由や政治的自由だけでなく、経済的自由も尊重する。
○各人は自分自身の所有者である。
○「古典的自由主義」「市場自由主義」。
リバタリアニズム内部の立場の分類
観点1.いかなる国家(政府)までを正当とみなすか
いかなる国家(政府)までを正当とみなすか
アナルコ・キャピタリズム(無政府資本主義)
市場アナーキズム
国家の廃止を主張。
最小国家論 国家の役割を国防・裁判・治安・その他の公共財の供給、あるいはその一部だけに限定しようとする。
古典的自由主義 ある程度の福祉・サービス活動も行なう小さな政府を唱える。
↑今日の政府よりもはるかに控えめ
観点2.諸個人の自由の尊重を正当化する根拠は何か
諸個人の自由の尊重を正当化する根拠は何か
自然権論 基本的な自由の権利、特に自己所有権に訴えかける。
米国はこの思想が強い。
帰結主義 自由を尊重する社会の方がその結果として人々が幸福になるとする。
契約論 理性的な人々だったらリバタリアンな社会の原理に合意するはずだとする。
代表的なリバタリアン思想家
Ⅰ.自然権論 Ⅱ.帰結主義 Ⅲ.契約論
①無政府資本主義 Ⅰ①.
自然権論的無政府資本主義者
マレー・ロスバード
Ⅱ①.
帰結主義的無政府資本主義者
デイヴィッド・フリードマン
Ⅲ①.
契約論的無政府資本主義者
ジャン・ナーヴソン
②最小国家論 Ⅰ②.
自然権論的最小国家論者
ノージック
Ⅱ②.
帰結主義的最小国家論者
ランディ・バーネット
Ⅲ②.
契約論的最小国家論者
③古典的自由主義 Ⅰ③.
自然権論的古典的自由主義者
ジョン・ロック
Ⅱ③.
帰結主義的古典的自由主義者
ミーゼス、ハイエク、アダム・スミス、ミルトン・フリードマン
Ⅲ③.
契約論的古典的自由主義者
ジェイムズ・ブキャナン、デイヴィッド・ゴティエ
経済学的リバタリアニズム

どれも市場経済を支持するが、その論拠はかなり異なる。

新古典派 ●ケインズ的発想(政府による市場介入を必要とする考え)に賛成。
●リバタリアンとは言えない。
●【静的な市場観】市場が長期的いは均衡して有効な資源配分を達成するという市場観。
シカゴ学派 ●ミルトン・フリードマン
●ケインズ的介入の有効性を否定。
オーストリア学派 ●【動的な市場観】常に変化する不確実性に満ちた世界。対処するには自由市場経済しかない。
自己所有権〜リバタリアニズムが認める権利
  • 狭義の自己所有権: 自分の人身への所有権
  • 広義の自己所有権: 自分の労働の産物とその対価としての財産の権利を含める
  • 各人は自分自身の人身と能力の道徳的に正当な所有者である。それゆえ、各人は他の人々を侵略しない限りで、その能力を自分の好きなように用いる自由がある。
  • 自己所有権という基本的な権利の中に無数の自由権が含まれている。信仰の自由、移住移転の自由、表現の自由、集会の自由、などは、自分の自身への支配権という基本的な自由の具体化したもの。
  • 他人の自身や自由を侵害する自由はそもそも自由とは呼ばれない。
  • 財産権も自由権の一種あるいは延長と見なす。
  • 他者に対して積極的な行動を要求する請求権は、自由権の中に含まれない。
  • プライバシーの概念が拡張されて、「自分に関する情報をコントロールする権利」として理解されると、それは自由権の領域を超えて、逆に他人の自由を制約することになる。
  • 名誉や信用は本人についての他の人々の評価である。人は他人が自分をどう評価するかまで支配する権利など与えられてはならない。
  • 誤った誹謗中傷に対しては損害賠償請求が認められるかもしれないが、「自分の知られたくない事実を公表されない権利」は認められない。
  • 著作権や特許権や商標などの無体財産権は、リバタリアンは認めにくい。無体の財は、創造者以外の人がそれを利用しても、創造者による利用の自由を妨げない。無体財には自然な排他性がない。
  • リバタリアンは、自由の領域を各人の身体を基礎として極めて物理的に把握している。
  • 自己奴隷化・臓器売買の自由: 奴隷契約は、現在の契約者とは別人になってしまった将来の当人の基本的な自由を侵害する。
  • 「各人は自己の身体への権利を持つ」という主張だけでなく、「価値を作り出したものはその財への権利を持つ」とリバタリアンは考える。
  • 資源の価値は労働が投入されてこそ現実化する。そして天然資源の所有権が語られるのは、資源に価値があればこそである。
権利の救済と裁判
  • 国家の基本的な任務は警察や裁判所によって国民の権利を守ることだとリバタリアンは考える。
  • 刑罰廃止論
    • 違法な行為への法的制裁を司法的な損害賠償だけに限定すべき。
    • 損害賠償を超えて国家が加害者に刑罰を加えるべきでない。
    • 賭博や売春や薬物犯罪などの「被害者なき犯罪」に対する処罰は不当。
  • 刑罰廃止論 → 「社会全体の受ける被害」「犯罪予防効果」が無視されている。
  • 加害者を刑務所に送ることによって、加害者が働いて損害賠償を支払う機会が失われる。刑罰精度は被害者の救済を助けるどころか、逆に妨げている。
政府と社会と経済
  • 「権力は腐敗する。絶対権力は絶対的に腐敗する。」
  • リバタリアニズムは、国家や政治の領域を狭く限定しようとするが、残りの民間の領域をただちに市場経済と同一視することはせず、第三の領域として、市場の外のボランタリーな人間関係も重視する。
  • 「市場 vs 非市場」ではなく、「民間 vs 政府」または「社会 vs 国家」
  • リバタリアンは、個人的自由に対する国家による介入を原則的に不正だと考えるが、人々の自発的活動から生ずる社会的圧力や経済的力関係は自由の帰結として容認する。
  • リバタリアンは、多様な共同体間での中立性を主張する(共同体を一本化したり、特定の共同体に特権を与えたりしない。)。共同体主義者はルーツ・歴史・伝統を尊重する傾向と反自由主義的な傾向を持っている。
  • ある社会のなかで貧富の差が拡大するとしても、貧しい人が一層貧しくなるのではなく、彼らが豊かになる程度が相対的に小さいだけであるならば、それは改善である。
  • 政治思想におけるリバタリアニズムの大きな特徴は、国家への人々の心情的・規範的同一化に徹底して反対するという個人主義的要素にある。
  • 国家の中立性
    • 特定の歴史観・ライフスタイル・婚姻制度(一夫一婦制)・相続制度・叙勲制度に反対。
  • 地方分権
    • 多様な自治体が生じ、多様な生活環境が撰べるようになることに賛成。
    • 公民的共和主義を実現しやすいとか、地方固有の文化・産業を守れるとか、きめ細かいなサービスが提供できるとか、そういう理由で地方分権をすするめることには反対。
    • 分権論者:国家の権力を自治体に分散させよ。
    • リバタリアン:公的権力を、個人や民間団体の自己決定のレベルに分散させよ。
  • 参政権とは、自分の住んでいる地域の政治に参加することであり、国籍によって区別せず、定住外国人にも参政権を認めるのが当然。
  • 国家の存在意義はプラグマティック(実利的)なものに限られ、国家的アイデンティティといったものが大切だからではない。
  • 外国からの入国や移民も受け入れるべき。外国人の「移動の自由」を制限するだけでなく、外国人と取引・交際しようとする自国民の経済的・社会的自由も制限する。
  • 理想とする国家は民族との結びつきを重視しないコスモポリタン(世界主義)なもの。
家族
  • 家族は極めて小さい単位の共同体。
  • リバタリアニズムは一般的に、共同体からメンバーが離れられるという条件の下で共同体内部の自治を認める。
  • 子供が完全な自己所有権を持つのは、彼が自然上その権利を持っていることを証明するとき = 彼が家を去る、あるいは逃げ出すとき
  • 婚姻制度は多様なライフスタイルを否定するもの。
  • 相続制度が廃止され、親への扶養義務が最小化された社会の親族関係は自発的な友人関係に近くなる。
財政政策
  • 貨幣はその土地を支配する国家しか作れないものだという、理由のない国家主義的迷信をリバタリアニズムは打破する。
  • 市場での競争からよい貨幣が生まれるのに期待する。
  • 税制は、軽くて単純明快で公平でなければならない。
  • 累進課税は、所得の多いものを搾取することになる。